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エピローグ 二

 橋本大統領と地球日本政府は懸案事項を協議。地球日本政府がタトゥの自治権を認める方向で話し合いが進んでいる。




 相沢凛とシチューは西九条通兼と共に、ヒノヤマ神社の飛行船で、各地を回る事になった。ヒノヤマ神社の巫女、鹿園寺茉莉子や神社の楽部の面々も一緒である。茉莉子や楽部とシチューのコラボがネットで評判になり、各地の神社から奉納舞の依頼が相次いでいた。凛はハカタに戻った後もシチューと共に西九条通兼の好意によりダザイフテンマン宮に下宿する運びとなった。


「儂としては、シチュー君がいてくれたらいいが、ま、飛行船を操縦出来る巫女見習いがいたら便利じゃからの」


「ええ! あたし、巫女にも占い師にもならないわ。あたしはプロの機械人形使いになるんですからね!」


「なんじゃと! シチュー君を機会人形にする気か?! シチュー君は芸術家じゃぞ!」


「違う、違う! ちゃんとそれ用の機械人形を買うわよ」


「それを聞いて安心したわい」


 ヒノヤマ神社の飛行船、ハクツル号の操縦席から宮司を呼ぶ声がする。宮司が足早に操縦席に向う。


 相沢凛は刈谷仁に言った。


「橋本大統領との面会はうまくいった?」


「ああ、近々記事が出るんだ。……凛、必ずハカタに行く。だから、待っててくれ」


「もちろんよ! あの保護司を一緒にやっつけようね。あ、お金は? ボディガードやったお金!」


「振り込んだよ。口座を確認して」


 凛は新しく買った通信端末で口座の取引明細を見た。振込金額は二十五万クレジット。


「何、これ、二十五万クレジットしか入ってないじゃない」


「君にまとめて五百万クレジット渡したら、すぐに使ってしまうだろう。君が工高卒業するまでの分割払い!」


「えー! この、嘘つき!」


 凛が刈谷に両手を振り上げた。刈谷の胸を叩く。仁は凛の両手をつかんだ。


「だからぁ、君が工高卒業するまで別れたくないんだって」


「え?」


 凛がきょとんした顔で仁を見上げる。


「ああ、もう、これだから未成年とは付き合いたくないんだ。にぶいなあ」


 仁は凛を抱きよせた。


「えーっと」


「刈谷様、いけません」


 シチューが仁から凛を引き離した。仁と凛の間に割って入る。


「お嬢様は未成年でいらっしゃいます。たとえ、刈谷様であってもお付き合いは私が許しません」


「シチュー! あんたね!」


 刈谷が吹き出した。


「シチュー、君は最高のロボットだよ。凛、例の保護司、僕の方で調査するから、君は手を出すなよ。シチュー、凛を頼んだよ」


「もちろんでございます。刈谷様が、ハカタにいらっしゃるのを楽しみに待っておりますとも。さ、お嬢様、出発の時間でございますよ」


 シチューに促され、飛行船ハクツル号に乗り込む凛。飛行船は軽やかに登って行く。

 銀色のロボットカー・メリーナに寄り掛かり、飛行船を見送る仁。

 凛は窓から叫んだ。大きく手を振る。


「仁、ハカタに来てね。きっとよ。待ってるから!」


 刈谷仁は飛行船に向って手を降り返した。遠く行ってしまう飛行船に向って小声でつぶやく。


「凛、好きだよ……」


「本人に直接言わないと、伝わりませんよ。それとも自信がないんですか? 元がロボットだっていいじゃないですか、あなたはもう人間なんですから」


 ロボットカー・メリーナが言う。


「ああ、わかってる。だけど、照れくさいじゃないか、本物の恋なんてさ。愛の告白は彼女が大人になってからするさ」


「今のあなたの姿をドクターカリヤが見たらなんていうでしょうね。女ったらしにする為にあなたに人間の体を作ってあげたんじゃないでしょうに」


「ドクターカリヤか、懐かしいね。彼は事故で息子を亡くしてね。息子の遺伝子を使って体を作っくれたんだ。惑星タトゥの開発が終わって、廃棄処分されそうだった僕の記憶を息子の脳に移してくれた。しかし、人間になってもロボット三原則に支配されるとは思わなかったよ。おかげでお人好しな性格になってしまった。誤算だったな」


「性格は記憶によって作られますからね」


「そうだね。……ドクターには感謝してるさ。体だけじゃなく、お金も残してくれた。彼が死んで、僕は彼の遺産を相続した。遺伝子的に彼の息子だったからね」


 刈谷仁はロボットカー・メリーナに乗り込んだ。助手席にはノートブック型ロボット・デン助がいる。


「おい、このメール、どうするよ? タツタ神社の巫女、沢田百合子だろ。アキバミコシスターズの女の子達、それから、後、数人から来てるぜ。凛ちゃんが好きなら、お断りのメール出しとこうか?」


「冗談、全部返事するさ。凛が卒業するまで、一年以上あるんだぜ。人間の男になって何が一番良かったかって、ふわっふわの女の子といちゃいちゃ出来る事さ」


「ま、いいけどね。凛ちゃんにはバレないようにした方がいいぜ」


「くっくくく、ご忠告ありがとう」


「俺にはわからないね。病気になったり、死んでしまう人の体になりたいなんてさ」


「病気になったり死にそうになったら、また、ロボットの体にもどるさ」


「ええ! 節操なさすぎ!」


「さてと、仕事だ。メリーナ、編集長と約束がある。ナニワ日報にやってくれ」


「アイアイサー」


 恒星エルダの光を受け、銀色の車体がひと際輝く。ロボットカー・メリーナは滑るように走り出した。





                  完

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