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八、米沢広司、再び 一

 一方、高速道路をナニワに向って突っ走っていた米沢広司は、途中休憩したサービスエリアで尻軽な女を拾いバックシートで楽しんだ。女と一緒に寝てしまった米沢だったが目覚めるとナニワについていた。

 尻軽女と別れ、安っぽいホテルに宿を取った米沢は、「めちゃめちゃにしてやる」とつぶやきながらシャワーをあびた。すっきりした気分になった米沢は、ホテルを出てメンズショップに行き、迷彩柄のカーゴパンツ、濃い茶のタンクトップ、ワークブーツ、サングラスを買い着替えた。鏡に映った自分自身に向ってもう一度「ギタギタにしてやる」とつぶやく。

 米沢はメンズショップの駐車場に停めたロボットカーの中からハカタのゼブラに連絡をいれた。


「ゼブラ、ナニワで銃が手に入る所を知らないか?」


「ちょっと待って下さい」


 ゼブラはある住所を米沢に教えた。


「銃を手に入れても連中を襲うのは待って下さい。彼らに言う事を聞かせるいい方法が見つかりましたから」


「いい方法ってなんだ?」


 ゼブラが簡単に説明した。


「そいつはいい。くく、あいつらがほえ面かくのが見えるようだぜ」


「それと、彼らはヒノヤマ神社の宿舎に泊まっています。場所は、こちらです」


 ゼブラは米沢に神社の見取り図を示した。


「ここか……、準備が出来たら連絡してくれ」


 米沢はロボットカーにゼブラに教えられた住所に行くよう命令した。ナニワの歓楽街、入り組んだバザールの奥にその店はあった。


「ゼブラの紹介できたんだが」と米沢がいうと、店主は何も言わずに一丁の光線銃を差し出した。


「変わった形だな」


「ああ、それは復刻版でね、大昔の銃、ワルサーP38っていう銃と同じ形をしているんだ。弾はエネルギー弾だ。殺傷力の強いタイプだ。ゼブラから未開地に行くって聞いたが、他にもいろいろ揃うぜ」


「そうだな……、こいつの試し撃ちがしたいんだが」


「奥にはいりな」


 米沢は店の奥から裏庭に抜けた。裏庭に射撃の的が並んでいる。

 米沢は何発か撃ってみた。バランスのいい使いやすい銃だった。


「補充用の弾と狩猟用のナイフを一本くれ」


 米沢は店を出てロボットカーに戻った。店主から渡された紙袋からナイフを取り出しブーツに仕込む。


「へへ、ギタギタにしてやるぜ」


 米沢はロボットカーをヒノヤマ神社に向け走らせた。途中、食堂に入り腹ごしらえをする。ヒノヤマ神社の駐車場に車を停め待った。


「準備が出来ました、いつでもいいですよ」


 ゼブラからの連絡が入った。時刻は三時過ぎ。米沢は行動を開始した。

 米沢がヒノヤマ神社の境内に入ると、どこからか雅な音曲が聞こえてきた。舞殿で舞が奉納されている。舞殿の周りには人々が集まっていた。遠くに触手を持ったロボットが日の丸の舞扇を器用に操っているのが見える。

 米沢は周りの人間に見つからないよう社務所の裏手に回った。神主の住まいらしい所を通り抜ける。二階建ての家屋があった。開いた窓から、声が聞こえる。テレビが付けっぱなしになっているようだ。米沢は壁に身を寄せて中の様子を伺った。誰もいないのを確認すると、中にあがりこんだ。一つ一つ部屋を見て回る。

 米沢が部屋を見て回っている間も、3Dテレビからニュースが流れていた。


「宇宙自衛隊の総大将、三本木大将と、橋本大統領の会談の日程が決まりました。会談は大統領のイデ島別荘にて、明日十三時から行われる予定です。イデ島西側大統領別荘付近は立ち入り禁止となっています」


 米沢は一階を見て回ると、二階への階段を登った。

 ニュースは流れ続けている。


「今回の会談、モニター会談ではなく直接会っての会談を望んだのは橋本大統領です。日本古来の言い回し、腹を割って話そうというのが、大統領の考えです。また、イデ島への出入りは制限されます。島への上陸は会談が終わるまで出来ません。イデ島住民は、速やかに本土へ渡るよう要請されました。尚、イデ病院に入院している重病患者と医療関係者は島内に残る事を許可されています。しかし、病院の敷地外には出られません」


 米沢は順番に二階を見てまわった。人の気配はない。米沢が一階に戻ると、テレビの番組は天気予報に変わっていた。すらりとした美人キャスターが火州南の海で台風十一号が発生したと告げている。

 米沢は居間のソファーにドカッと座り刈谷達が帰って来るのを待った。


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