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三、米沢広司 二

 アキバ神社社務所の前には掲示板が設置されている。

 米沢広司は掲示板を見て拳を固めた。ぎりぎりと掲示板を睨みつける。


「あの占い師!」


 米沢広司は掲示板に張り出された写真を見て怒り狂っていた。そこには、アキバミコシスターズとロボット、観光客が映っていたが、その中にあの占い師がいたのだ。

 米沢は頭に血が登った。どうしても、こいつらを痛めつけなければ気がおさまらない。

 そこに神主が社務所から出て来た。


「すいません、こちらに写っているこの女の子。もしかたら、ハカタの占い師さんじゃありませんか? 名前を思い出せないんですが、このロボットと何か関係があるんで?」


「さあ、占い師かどうかわかりませんが、このロボット、シチュー君の持ち主ですよ。名前は確か相沢凛さんと言っていましたね」


「そうそう、相沢さんですよ。へえ、このロボット、シチュー君っていうんですか? 今日はもうやらないんですか? 見たいんですが」


「残念ですが、彼らはもう、出発したんですよ」


「へえ、どちらに?」


「ヒノヤマ神社です。明日、そこでシチュー君がロボット舞を舞うんですよ」


「ヒノヤマ神社というのはどちらにあるんですか?」


「ああ、ナニワです。昔はイデ島にあったんですが、火山の噴火で埋まってしまいましてね、ナニワに移転したんですよ」


「ナニワですか。だったら、列車ですね」


「いえいえ、シチュー君をつれてきたのは、ダザイフテンマン宮の宮司さんでしてね。飛行船を持ってるんですよ。ああ、いま、ちょうど飛んで行く所です。ほら、あそこ!」


 米沢が振り返ると、巨大な飛行船が飛び立った所だった。あかあかしい朱色に塗られた飛行船がどんどん高度を上げて行く。巨大な船は見る間に小さくなった。

 米沢の顔が一瞬、恐ろしい顔になった。


「くそぉ、おい、あんた。飛行船は他にないのか?」


 神主はぽかんとした。


「ああ、ロボット舞を見たいのですか?」


 米沢はぐっと怒りを抑えた声でいった。


「ああ、そうだ……」


「だったら、今夜の寝台列車でナニワに向えば、明日の三時の舞に間に合いますよ」


「そ、そうか……」


「ぜひ、見に行って下さい。素晴らしかったですよ!」


 米沢の抑えた怒りにまったく気が付かない脳天気な神主に見送られて米沢はアキバ神社を後にした。

 歩きながら、米沢はゼブラに連絡した。


「おい、あの占い師、相沢凛という名だったぜ。ロボット舞のシチューの持ち主なんだ。ダザイフテンマン宮の飛行船でやってきていた。俺が奈津子を見つけた時、舞台の近くにいたんだ、きっと。俺を後ろから殴ったのはあの女だぜ、きっと」


「相沢凛? 相沢凛……、どこかで聞いた名前ですね。工高生って言ってましたよね。ちょっと待って下さいよ」


 米沢の耳に、ゼブラが何かやっている気配が伝わってくる。


「おい、ゼブラ、何やってるんだ?」


「今、ハカタの工高生名簿にアクセスしてるんです。……わかりました。何、これは!」


「どうした!」


 ゼブラは冷静沈着な男である。常に表情を崩さず、平然と恐ろしい事をやってのける。米沢のような体育会系の男がゼブラのようなインテリ系に素直に従っているのは、ゼブラが真実恐ろしい男だと知っているからだった。その冷静な男が驚きの声をあげている。


「おい、ゼブラ! どうした?」


「相沢凛は、あの相沢主任の娘でした」


「なんだって! 本当か?」


「まずい、まずいですよ……。バレないと思いますが……。彼らは田沼奈津子と接触しているんですよね。しかし、あなたに、相沢主任の事故については聞かなかった。……まず、彼らが何をどこまで知っているのか探った方がいいですね」


「おーし、ゼブラ、任せてくれ。あの占い師を追いかけたかったんだ。ギタギタにして、何を知ってるか吐かせてやるぜ」


「ではクリスタルは書留速達で私宛に送って下さい」


 米沢広司は通信を切った。気分は高揚していた。ゼブラのお墨付きで占い師をギタギタに出来る。米沢の頭には占い師をなぐりたいという衝動しかなかった。後は何も見えなかった。

 米沢は郵便局に行き、書留速達でクリスタルピースを佐原ダイヤのゼブラ宛に送った。

 そして、駅に行くとナニワ行きの寝台特急の切符を買おうとした。が、満席で手に入らなかった。

 米沢は、レンタカーを借りようとしたが、こちらも一台もなかった。切れた米沢は中古車のディーラーに行くと、ロボットカーを買った。米沢の年収に匹敵する額だったが、米沢は構わなかった。一刻も早く相沢凛を叩きのめしたい。どす黒い欲望だけが米沢を突き動かしていた。

 米沢は高速道路をナニワに向けて突っ走った。


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