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三、米沢広司 一

 その夜、田沼奈津子は予定通り寝台列車でナニワに向った。


 翌朝、目を覚ました米沢広司は、見た事のない天井に驚いて起き上がった。深酔いしたように頭がクラクラする。あたりを見回すと、ホテルの一室のようだった。

 カサッ

 手元に何かある。封筒だ。


「なんだこれは?」


 裏を見ると、奈津子とある。米沢は急いで封を切った。便せんを取り出す。




 ヒロシ、ごめんね。

  私、どうしたってあんたと付き合えない。

  あんたの上司に相談したら、直接あんたに注意してくれるって。

  もし、あんたが私に会いに来たら、会社を首にしてくれるって言ってくれたの。

  常務はちゃんと書類にしてくれたのよ。

  あんたのモビにも届いている筈。

  会社を首になりたくなかったら、もう、二度と私に会いに来ないでね。

  それと、常務からお守りを返してくれって言われたから、

  あんたの上着のポケットにいれておいたわ。

  あんたが目を覚ます頃には、私、ナニワについてると思うの。

  今いるホテルは私のおごり。

  ゆっくりしていってね。

  じゃあね。グッバーーイ! 

               奈津子




「くそーーーー! 奈津子の奴!」


 米沢は、上着のポケットに手をあてた。何か、固い物が入っている。取り出してみると、例のクリスタルピースだった。台座を見る。ロゴがない。奈津子の言った通りのようだ。

 米沢は通信端末モビを見た。モビの時計は朝の九時を示している。モビには、佐原常務から書類が届いていた。中を改める。奈津子の手紙の通り、奈津子に会ったら首にするという内容だった。

 米沢はすぐに佐原に連絡を入れた。

 佐原の不機嫌な顔が通信端末モビに3D画像として映し出される。


「米沢です。昨日は申し訳ありませんでした。しかし、この通りクリスタルピースは取り返しましたんで。これから、ハカタに戻ります」


「ああ、そうしてくれ。とにかく、クリスタルが手元にないと落ち着かん」


 佐原は米沢の話の内容から、米沢を尋問した相手がフリーライターの刈谷仁だと突き止めた。佐原は、自身の行いから記者が自分の周りをうろちょろするのは馴れていたし、どこをつつかれても、何も出る筈がないと思っていた。だが、それでも用心の為、刈谷仁の調査を腹心の部下、ゼブラこと菅原直樹に命じていた。

 米沢は佐原に言われ、列車を乗り継いでハカタに戻る事になった。地球日本の宇宙自衛隊が惑星タトゥの月、衛星ナトに布陣した為、高高度を飛ぶ航空機は全面運行中止になっていた。

 米沢は、列車を待つ間、昨日、自分を閉じ込め尋問した刈谷に、復讐心をつのらせていた。米沢は何故、刈谷がタイミングよく奈津子をいたぶっている最中に現れたのか不思議に思った。さらに、何故、刈谷が占い師の家の放火を聞いてきたのか。訳がわからなかった。

 訳が分からない時は頭のいい奴に聞くのが一番と米沢は、佐原常務の腹心の部下、ゼブラこと菅原直樹に連絡をいれた。


「おい、ゼブラ、今、暇か?」


「暇じゃないですが、何かあったんですか? カガミハラからこっちに戻るんでしょ」


「ああ、そうなんだが、ちょっと気になってよ」


「なんです?」


 米沢は、客船がカガミハラに停泊しているときいて、会社の貨物船から降りて奈津子を探しにいった経緯をゼブラに話した。


「どうして、あいつ、刈谷って男はタイミングよく俺が奈津子をいたぶっている時に現れたんだ?」


「奈津子さんと一緒に客船に乗っていたんじゃないですか?」


「いや、それはない。奈津子は刈谷の事をまったく覚えていなかった」


「じゃあ、ただの偶然じゃないですか?」


「偶然? 偶然か?」


「奈津子さんとはアキバ神社の境内であったんですよね」


「ああ」


「ちょっと待って下さいよ。アキバ神社の三時の催し物と……」


 ゼブラはネットに検索をかけ、アキバ神社の出し物の情報を集めた。


「昨日はロボット舞があったそうですね。見ましたか?」


「ロボット舞? いや、俺は奈津子しか見てなかったんだ」


「……、刈谷はあなたに占い師の家を放火したかときいたんですよね」


「ああ、そうだ」


「その占い師の特徴を言って下さい」


「えーっと、そいつは若い女で、工高生じゃないかと思う。黒い髪をツインテールにして、アラビアンナイト風の衣装を着て、いかにも占い師っていう格好をしていた。それで、そいつ、筒型のロボットを連れていて、俺達が痛めつけようとしたら、ロボットを機械人形(パペッティア)に変えやがったんだ。機械人形(パペッティア)使いだったんだよ」


「え! その占い師は機械人形(パペッティア)使いだったんですか?」


「ああ、そうだ」


 ゼブラはしばらく考えていたが、おもむろに言った。


「ロボットで繋がるんじゃないかと思うんですよ。ロボット舞と占い師の機械人形……。ロボットの持ち主が誰かきいてきて貰えませんか? ロボットの名前は『シチュー』だそうです。ネットで検索しても個人情報なので出てこないんですよね」


「つまり、何か? あの占い師もここにいるってのか?」


「……、推測ですよ。それをあなたに確かめてほしいんです」


 こうして、米沢広司はもう一度、アキバ神社に向った。


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