45:昔の相棒は相棒の事を死ぬほど知っている。
サイド:ハク
フォムと呼ばれた彼、インフォムさんは山賊の運搬のために関係者であるおれ達の馬車に乗ることになった。
「あっはっは!そんなに襲われたのか!そいつは災難だったなぁ!あっはっはっは!」
これまでの経緯を聞くと、豪快に笑い声をあげる。
「いんや、俺ぁ楽しかったぜ?へばってんのはガキンチョだけだ、ククク」
そんなインフォムさんに笑って返すガウァースに、
おれはうんざりしながら言い返した。
「刺激マニアのあんたが異常なんだよ」
「あははは、そりゃそーだ、坊やが正しい!」
インフォムさんが肩を叩いて同意してくれた。
さっきの刺激的な登場の割に、話してみるとインフォムさんはとても一般人だった。
うん、今までの大人と違って親近感が半端じゃない。
いや、むしろこういうのが大人だよ、こういうのが。
今まで会ってきた武器商人とか刺激マニアとか学園長とかは大人じゃないんだ。
そういうのはあれだ、大人に似た種類の何かだ。
キュウリとキウイくらいの、文字は似てるけど中身が死ぬほど違う何かだ。
と、ルリーアが口を開いた。
「インフォムさんは、ガウァースとは古いお知り合いさんなんですか?」
そういえばと、おれはインフォムさんを見る。
インフォムさんはルリーアのことばにハッとしたようにこちらを見た。
「ああ、そうそう!そういえば自己紹介もしてなかったかな、ごめんごめん!」
両手を合わせて笑いながらおれ達に言うと、咳払いをひとつして、こちらに改めて向き直った。
「おれはインフォム。インフォム・ロウ。ガウァースとは長い付き合いでね。こいつが旅を始めるまではジパンギルで相棒やってたんだ!」
「へぇ、相棒ねぇ」
学園長が感心したような声を上げる。
おれは気になってインフォムさんに質問した。
「相棒ってことは、なんかギルドとかで組んだりしてたんですか?」
「あーうん、そうなんだけどな、」
と、インフォムさんは俺の質問に頷きつつ続けようとすると、
横から声が入ってきた。
「肩の交差する刃の刺繍……」
声のする方を見ると、ニーアが思い出したように言った。
「……ギルズレイド傭兵団?」
「お、よく知ってるな」
「え、貴方が……!?」
嬉しそうに言うインフォムさんに、ルリーアさえ驚きの声を上げる。
「え、何だ、その傭兵団」
おれは初めて聞くその名前に首を傾げてニーアの方を見る。
ニーアはちらりとインフォムさんの方を見て、
俺に説明してくれた。
「ギルズレイド傭兵団。ジパンギルにあるギルド本部に所属しているギルドの傭兵団だ。ジパンギルなら知らない者はいないな。ジパンギル地方以外での活動はしないから、シーウォールやデウィーネなんかでは聞いても噂程度だろうが」
「最初はギルドのパーティーだったんだけど、その功績の優秀さから本部の依頼をこなす傭兵団になったんだって!すごいよね」
ルリーアが加えて説明してくれる。
へぇ、とおれは声を漏らして感心する。
優秀すぎてギルドが手を出すほどか。
「うれしいなぁ。こんなお嬢さん達にまで知ってもらえるとは」
インフォムさんがニコニコとして言う。
そこでおれはハッとしてインフォムさんを見る。
「え、じゃあまさかガウァースとの相棒って……」
その言葉に、ルリーアもニーアも目を見開いてババッとガウァースを見る。当の本人は。
「おお?元傭兵団切り込み隊長って言ってなかったっけか?」
にやにやしてやがりました。
「「ええええ!?」」
ルリーアとニーアが驚愕する。
「だ、だって、ギルズレイド傭兵団ってたしかAランク冒険者でもそうそう入れないような実力者ぞろいじゃ……」
「強い強いとは思っていたが、まさか本当に……しかも"あの"切り込み隊長だなんて、冒険者憧れの存在じゃないか……」
ギルズレイド傭兵団を知っているジパンギル民のルリーア達はその凄さがとてもよくわかっているようで、ずーっと驚いたままのテンションだ。
「"あの"切り込み隊長?」
ニーアの言葉が気になり、おれはおうむ返しに聞き返す。
そんなおれに、インフォムさんが説明してくれた。
「あー、うちの傭兵団では切り込み隊長ってのはいわゆる名誉職みたいなもんでな。まぁ、一般の人にはそういうの関係なく傭兵団全体で考えられてるけど、ジパンギルの冒険者とかのギルド関係者の間じゃ結構有名なんだ。こいつなんかは当時"大斧のガウァース"とかって呼ばれててさ、まだ君らがギルドに入れる年齢になるちょっと前だったかな、すごかったんだぜ」
あ、なんか一年半前くらいに聞いたことある気がする。
初めて馬車に乗った時だったか。
その時のことを思い出しながら、おれはへぇ、と先ほどよりも感嘆を込めた声を漏らす。
インフォムさんはそんなおれを見て眉をひそめ、ガウァースを横目で見やる。
「なんだ、ほんとに言ってなかったのか?知った上でのお弟子さんかと思ってたんだけど。相変わらず性格わっるいなー」
「ああ、いつもそんな感じですよ」
自分のことをろくに話していないことに呆れたのか、
ガウァースに溜息をつくインフォムさんに、おれは冷えっ冷えの声で返す。
それを見たインフォムさんは、おれの方を見る。
そして、
「……ああ、無茶ぶりとかされてんだ」
何かを察したように声のトーンを落とした。
「……ははは、もしかしてお揃いですか」
乾いた笑いを返す。
それ以外に何もしようと思わなかった。
インフォムさんは、黙って、肩を優しく叩いてくれた。
黙って叩かれながら、おれ達は静かにわかりあった。
言葉は不要であった。
「ククク、仲いいなお前ら」
「「おかげさまで」」
とっても良き理解者になれそうです。
――と。
2人仲良く凄みを持った笑みでガウァースを見ていると、
前方からなにかが聞こえた気がした。
そちらを見やると、前方には大きな赤塗りの門があった。
それが村の入口だと時間を置かずに気付くが、もちろん声を上げたのはオンじゃない。
そこには、数人、人がいた。
「ほーら、アレ絶対そうだって!おーい!」
1人、はねながら大きく手を振っている。
声から聞くと女性のようだ。
その横にいる幾人かの人影も、聞こえるほどの声ではないが手を振っているのが見えた。
「ん?おお、あいつらわざわざ村の前で待っててくれたのか」
その人影を見たインフォムさんが笑ったのを、おれは見た。
どうやら知り合いらしい。
はねている手に大きく手を振り返した。
すると、人影の集団がぴたりと動きを止めた。
そしてにわかに騒がしい雰囲気となる。
「あれ?あの馬車、どこかで見たことあるぞ?」
「……おい、あの御者台の人って……」
そんな様子にかまうことなく馬車はそのまま人影に近づいていき、目の前で停車した。
おれ達は御者台の方へと移動する。
馬車の目の前に立っているにいた人たちは、みんなインフォムさんと似たような服を着ていた。
この人たちがきっと、その傭兵団の人なのだろう。
「よ、ただいま」
インフォムさんが先に降りる。
ただその時には、傭兵団員の人たちはそんなインフォムさんの声にも反応しなかったが。
視線は、もろがっつり馬車に突き刺さっている。
妙な視線を感じながら、おれ達も続いて降りて行き、最後にガウァースが降りる。
そのガウァースに、先ほど声を上げていた女性が声をかけた。
「た、隊長?」
「おう、久しぶりだな」
震えるような、信じられないような声だというのに、
旅行から帰ったような気楽な声をかえすガウァース。
そんな声を返したガウァースに、若干の静寂が訪れる。
……そして、
「……た、た、たいちょうだあああああああああああ!!」
唐突に女性が飛びかかった。
絶叫とともに飛んだその姿は、さすがジパンギルの精鋭傭兵団というべきか、異常に無駄に洗練されていて、思わず一瞬内心で無駄に拍手を送りたくなったりもした。
が、それだけではとどまらない。
他の団員の人達も全員、飛びかかった。
「「うおおおおおおおおおお隊長おおおおおおおおお!!!」」
わっしゃぐっしゃあああ、という擬音があたりにぶちまけられた。
おれたちはひたすら唐突すぎる展開についていけず、全員顔を見合わせて状況を理解しようとする。
「くくく、元気いいなぁ、お前ら。よし、馬鹿どもは風邪ひいてないと」
そのなかで、ガウァースだけが状況を受け入れて笑っていた。
お久しぶりです。
投稿がガチで月刊ペース。
阿寒。違う、アカン。
さすがに投稿ペース頑張ってあげようと思いますので、
期待せず気長に待って頂ければ幸いでございます。




