2:お礼が美味しすぎる件
サイド:ハク
おれ終了のお知らせ発言のあと、
おれはま10分くらいかけて
ルキナさんを宥めていた。
……いや、大変だったよ。
おれ終了言った瞬間涙がブワァって。
おれの発言が原因だけど。
で、必死の努力で今は少し落ち着いてきた。
「ぐずっ……ごめんなさいぃ……」
「……いや、まぁ、いいって。気にしないよ」
まだ罪の意識が消えず、謝罪しているルキナさんに言葉を返す。
実際、まぁ死んでしまったのは中々残念だが、かといって未練と言うか、特に思い残すことはない。
気になる漫画も先が読めないなら自分で結末を想像するなりして諦められるし、
両親もきっと人助けをして散ったおれのことを、「最期まで息子らしい」と誇ってくれるだろう。
親不孝にはなっちゃったけど。
「…ほ、ほんとですか…?」
まだ念をおすルキナさんに頷く。
ようやっと安心した表情を見せるルキナさん。
かわいいなこの子。
萌えってこーゆーのだろうか。
違うか。
「まあ、おれは未練なんてないから、すっぱり死ねる……ああいやもう死んでるから成仏?……ん?」
そこでおれは1つ大きな違和感に気がついた。
───なんで彼女は、死んでるおれと話せるのか?
考えてみればそーだ、おれはいわゆるところの幽体離脱なうなワケで、おれと話すことは大抵の人間は不可能である。
おれの体はこんなだしいや真下は見ないが意地でも見ないが。
……もしかして。
彼女も死んでしまったのではないか?
苦労したあげくに女の子を泣かせたにも関わらず救われないとかいうトンデモ嫌な予感を抱きつつ、おれは恐る恐る質問してみた。
「あの…ルキナさん?」
「あ…はい、何ですか?」
小首を傾げる彼女。
「あの…さ。なんで君は、おれと話せるの?」
すると彼女は、
ああ、という感じで、おれに答えてくれた。
「それはええと、わたしが神だからです…けど…」
………なぬ?
「神?」
「はい」
「神様?」
「はいぃ」
………うん。
あー。
電波さん?
俺が助けたこの子はとっても電波さんだった?
おれがわりと真剣に「この子じつは頭をどうにかこうにか大変な角度で強打してしまったんだろーか」と彼女を見ていると、彼女はもじもじして可愛らしくこう言った。
「…あの…たぶん、信じてくださるのは非常に難しいでしょうから、証拠を……」
言うや否や、まばゆい光がおれの視界を覆った。
そして。
「出産を司る神、ルキナです」
……目の前にちょっとイメチェンした金髪青目のルキナさんが。
………え。
「…ガチで?」
「はいぃ」
「あの…じゃあ降りてきた、って降臨的な意味で?」
「降臨、ていうか、散歩しようと思って降りてきただけですよぅ…?」
マジらしいです。
大事だから二回言います。
マジらしいです。
「それで、そのぉ……」
唖然としてるおれに、ルキナさ…ルキナ様が言う。
「あのぉ……お礼、と言うか、お詫び、と言うか…」
「え?」
ちょっとハッとして間抜けな相づちをうつおれ。
いやだって、神様救った感じだろこれ?
そう考えるとなんだか非常にお手軽に英雄みたいな功績をつくった気分を味わっちゃったわけで。
そんなスーパーコンピューターを目の前にした明治からのタイムトラベラーのような表情のおれに、ルキナ様が言った。
「こんなことで、あなたの人生を終わらせてしまった私の業は、償えるものではありませんが……せめて。せめて生まれなおして差し上げようかと思うので……」
……生まれ変わる?
ボーッとしていたおれは、その言葉で我に返る。
「そんなことできるんですか?」
「一応、出産を司る神、ですからぁ」
ほんわかと笑う女神様。
へえ、ルキナって出産を司る神なんだ……まぁ、それはともかく。
生まれ変わる、というのは素晴らしい。
死んだことに不満はないとはいえ、できるならもう少し生きていたいとも思ったりする。
というわけで是非ともお願いしたい。
うーん、どんな世界がいいか。
できることなら生まれ変わる世界も決められないだろうか。
ダメもとで聞いてみる。
おれが生まれ変わるとしたら。
「あの…RPGみたいな世界ってありますか?」
これだ。
これぞロマンでしょう。
どや顔で尋ねてみる。
しかし。
「あーるぴいじい?」
再び小首を傾げる女神様。
かわE。
じゃなくて、そうだ、RPGじゃ分からんか。
まぁたしかに。神様にRPGとかいっても、はい?ってなるわなそりゃ。
えーと、
「こう、剣と魔法の世界、と言うか…」
と、おれがモゴモゴと説明すると、
「ああ、ちょうどそういった世界を勧めようかと思っていたところです!」
それを聞いてにっこり微笑む女神様。
美しE。
じゃなくて。
「ほんとですか!じゃあそういう世界でお願いしまっす!」
「はい、わかりました」
っしゃおらきたこれ!いざ行かん冒険と魔法のファンタジックワールド!!
微笑む女神の御前でガッツポーズをとるおれ。
考えてみれば自由に振る舞いすぎて不敬罪とかでどうにかなっちゃいそうだが、そこらへん死んじゃったナチュラルハイでスルーしてるすごいメンタル状態ですはい。
「では。今この場で転生を……あ、その前に、最後にこの世界を見て回らなくてよろしいんですか?」
と、ルキナ様が訊いてくる。
ああ、そっか。
まぁ人それぞれいろいろあるもんだろうしな。
かくいうおれも十数年生きてたんだし。
でも
「いえ、いいです。もともとここではおれ、トラブルに巻き込まれたことしかないし、見て回って変に未練が出来てしまうかもしれませんし」
「……そうですか?なら今すぐ転生させてしまいますが…よろしいですか?」
「はい、お願いします」
頷く女神様。
さて、これから異世界に転生だ。
と、ほどなくしてルキナ様がなんだかよくわからない言葉で色々発光やらし始める。
へえ……魔法の世界ってこんな感じのを使ったりするんだろうか。
おれはその間今までのことに思いを馳せていた。
家族。
友人。
愛犬。
恋人…はいないけど。
親友。
近所の人達。
トラブル。
トラブル。
トラブル。
……うん。
さっさと転生しよう。
その瞬間、おれは未練をすっぱり消して、この世界から、消えた。
よーーーーやく、異世界にいざ、です!いや、一話が短いんですけどね?
多分、このあとから異世界についての説明会ですが、基本はまあ、知ってるアニメやら何やらを寄せ集めたような感じなので、パパっといきたいと思います。
ああ、バトルパートやりたい(ワガママ)