19:え、こいつ男?女?ってやつは一人はいる
いるかはわかりませんが、おれとらを読んでくださっている読者の皆様にお知らせがございます。
家庭の事情により、執筆が大幅に遅筆になってしまうかもしれません。
……流石に要領が悪いじむなだけあって、介護をしながら3日に1度投稿はできませんした。
読んでくださっている読者の皆様、心からお詫び申し上げます。
本当にごめんなさい!
しかし、最低7日に1度投稿はしたいと思いますので、よろしくお願い致します!
それでは、どうぞ
サイド:ハク
「まさか、あのタカビー、ほんとにお嬢様だったとわ……」
さて、おれは今、男子寮の廊下を歩いている。
……あのセルティニア、って女の子が大貴族さんだと発覚した直後、
おれはルリーアと一緒に全力の強化魔法でここまで逃げてきた。
……逃げる時に学園長が高笑いしてた気がする。
がっでむ。
てゆーか、もっとまともな使い方したい、強化魔法。
きっと何にも言わせる暇もなく逃げてきたから、次にあった時に(つまり授業が始まる明後日)にはなんか言われるんだろうなぁ。
……おれ、逃げようかな。遠くに。
そのあと寮の前でルリーアと別れて、今現在おれは自分の部屋を探している、というわけである。
もちろん、探し物が苦手ちゃんなおれがここまで無事に探せるはずもなく、
突然開いたドアに頭ぶつけたり、
間違えてほかの部屋開けてバッチリ気まずい思いをしたり、
まあ色々とあった。
……本当に悩ましい。これも体質なんじゃ無いだろうな?
……まさかな?
とまあ、若干怖い事を考えつつ進んでいたおれは、ふとドアを見て立ち止まった。
そこには、
"ハークレイ・ウィンス、ニーア・ヘイム"
というドアプレートがかけられた扉があった。
「お、ようやく見つけたな」
ここにくるまでの苦労をため息としてからだの外に追い出し、胸をなでおろす。
この学園の寮の部屋割りは、入学式の後に大講堂の受付で組と名前を言って、それを見ながら専門の事務員さんが決めるらしい。
……考えてみたら、すさまじいスピードで部屋割りが決まるんだな。
まあそれも魔法なんだろうから、便利なものである。
いやー、なんやかんやで見つかって良かったなあ。
下手したら今日はロビーで寝るのかと思ったぜ。
割りとマジで。
そして、おれはドアプレートの名前を確認して、おれと、もう1人の部屋であることを再確認する。
「にしても……」
ドアプレートを見ながら、おれはもう1人の名前を見る。
ニーア・ヘイム。
この名前の奴が、おれと1年この部屋で過ごすワケである。
そうなるとやっぱり、いい関係を築きたいワケで。
「やっぱ、緊張するなあ……」
そういう事を考えると、どうしても弱腰になってしまうHETARE一名なのである。
やっぱここは明るくいくべきか……?
いやまてまて、下手に明るいと引かれるし、自然体がいいだろう。
自然体で、かつさりげなく明るめに、だな。
「……よし」
ここまで考えて、おれはなんか妙な気合いと共に、ドアノブに手をかける。
前世以来、男の同級生ってのははじめてである。
ちょっとワクワクするし、同時に怖くもある。
そして、何回か深呼吸して気持ち軽めにドアを開いた。
その先には──
「……」
「………………え」
──着替え中の猫耳女の子が、いた。
「「…………」」
暫し、無言。
おれはおれでどういう事になって
男子寮のおれとニーアって奴の部屋に美少女がいるのか、
必死に固まったまま脳ミソを高速回転させ、
女の子は女の子で、猫っぽい目をクアっと見開いてこっちを見たまま、ついでにシャツをもった手を降ろそうともせずに、硬直していた。
……因みに、女の子が脱ぎかけているシャツは際どい位置で残念なサイズのピンポイントな所はまだ隠しており、直視しても問題ないのか問題なのか非常に迷う位置にあったりする。
……いやこの場合はダメだろ普通にどう考えても。
とりあえず、おれのすべき事は案外すぐにわかったので、全力をもって遂行しようと思う。
「ぬおああぁあ悪いっ!なんでこの部屋にいるのとか色々訊きたいことはあるけど今は訊かないからすぐに服を着てくれ見ないから!」
手を顔の前で全力で突きだし、女の子の首から下が見えないようにして、それはもう全力で叫ぶ。
対する女の子は。
「……ぅ」
「う?」
「ぅわぁぁああぁああぁあああああ!!」
絶叫しました。
……自慢じゃないが、おれはこの15年間、父さんの元で色んな特訓をしてきた。
馬術やら剣術、拳法だけでなく、
社交ダンスじみたものまで教わって、ある程度の順応性と対処法は心得ている。
おまけにこの体質である。大抵の事には動じない。
だけど、父さん、母さん、色んな特訓をさせてくれたけど、
体質にもかなり鍛えられたけど、
流石にこれはちょっと。
……訂正、かなり。
「い、いや、ほホラ、落ち着いて話をしようぜっ?いやちょ、止めろ!ものを投げんな……え、アッ───!?」
ぱにっくです。
「お前っ、何者だ!」
女の子は男っぽい言葉遣いで、女の子の特権である"近くのモノを投げる"という暴挙に出た。
あの猫耳を見るにきっとビースタクトだろう。
なぜ魔法学園に魔力が劣るビースタクトがいるのかは後にして、
その分身体能力面で優れたビースタクトの本気の投擲である。
当たったら痛いとか痛くないとかじゃなく、普通に怪我する。
おれは本日2度目となる強化魔法をかけつつ、
慌てて避けて受け止めてと動く。
その間、ボコボコになってきている壁を見て顔を青ざめさせながら、
本日2度目となる全力を出して説得と説明をする事も忘れない。
しかし、端から見たら、とんでもなくカッコ悪いとか気にしていられない。
がっでむ。
「いや、ここの部屋に住むことになったハークレ……てゆーかお前、質問に答える時ぐらいもの投げんな!」
カッコ悪い体制のまま、具体的には一瞬前に飛んできた手鏡を持ちながら叫ぶ。
……と、女の子が、次のモノを持ったまま、止まった。
……頼むから花瓶を振りかぶったまま止まらないでほしい。
怖いので。
「……ハークレイ?ということは君は……僕の、ルームメイト、なのか?」
やっとこさ口を開いた女の子の言葉に、これまた情けなくブンブンと首肯する。
「そう!おれ、ハークレイ!あなたのルームメi…………え?」
花瓶を警戒、っていうかいつ飛んでくるかビクビクしながら、おれはルームメイト、という単語に目を丸くして女の子を見る。
おれが叫んだのを聞いて、女の子はゆっくりと腕をおろした。
とりあえず命の危機が去ったことに安堵する。
のもつかの間。
「すまなかった!」
「ぅぇえ?」
いきなり頭を下げられて、思わず変な声をあげてしまった。
……一瞬攻撃かと思ってちょっと涙目になったのは、内緒である。
───────────────────
「……あー、えーっと、とりあえず説明頼むわ。できれば最初から」
おれは今、テーンと床に座っている女の子……ニーアに説明を求めた。
頭を下げたあとも大変だった。
おれはおれで脳内処理が追い付かずにルームメイトが女の子、という不測の事態に目を回し、
ニーアもニーアで頭を上げたらおれが目を回していて更に深々頭を下げる、というなんともカオスな感じになったりした。
……とにかく、大変だった。
ニーアは最初こそ謝罪の言葉しか言わなかったが、おれの言葉に小さく
頷くと、ポツポツと説明を始めた。
「……僕はビースタクトであることは君もわかったと思う」
「あー、うん」
ニーアの言葉に頷く。
猫耳なんてこの世界ではビースタクトしかいない。
ニーアがビースタクトなのは間違いないだろう。
しかし、さっきも思ったけど、なんでビースタクトがこの学園にいるんだろうか。
この学園とビースタクトの相性は最悪のはず。
おれが返事をしつつ考えているのがわかったのか、 ニーアはまた小さく頷くと、それを説明してくれた。
「……きっと君は、どうしてビースタクトなんかがこの魔法学園にいるのか考えてるんだろう?」
「……あー……まあ、そうだな。何でなんだ?
あ、あとハクって呼んでくれ。あだ名なんだ」
「分かった。それで、説明なんだが……僕は、生まれつき魔力が多いんだ。それも、ヒューマの平均よりも」
「……そんなことあるのか?」
ニーアの説明に驚く。
ヒューマの平均、ということは、中級の魔法を行使できる魔力量よりも上、ということだ。
ニーアは微妙な顔をして頷いた。
「……いや、それが無いんだ。
だからこそ、僕はここに来たんだ」
「だから、ってなんだ?」
「……魔力量が多いビースタクトの調査、というか……
まあ、いわばビースタクトが魔力以外の魔法に対する適正はあるのか、ということを検証するために、
学園長がジパンギルから直々に依頼されたらしい」
「適正?
……って、ああ、魔法の行使ができるか、とかか」
「そういう事だ」
納得して頷く。
ビースタクトはニーアのような例がなかったため、中級の魔法以上の資料がないということだろう。
それでニーアがジパンギルから直々にこの魔法学園に来た、と。
まあここ以外に魔法の検証に適したところも無いだろうな。
ニーアは国のために遠路はるばる来たわけか。
……すごいやつとルームメイトになっちゃったな、おれ。
……あれ、いやおい、ちょい待った。
おれはあることに気づいて、ニーアに質問してみることに。
「……なあ、ニーア」
「ん、なんだ?」
「それと、女なのに男としておれのルームメイトになったのと、どこに接点があるんだ?」
「……!」
……おれの質問に、ニーアはクアっと目を見開いた。
そのあと、ものすごーく気まずい表情をして、目をウロウロとさせる。
……なんか聞いちゃいけないのか?
おれはニーアを見ながら、聞かない方がいいかと頭を悩ませる。
……と、ニーアが重々しく口を開いた。
「……それは、きっと僕のせいだ」
「……え?」
思わず聞き返す。
ニーアのせいって、なにがあったんだろうか。
ニーアはまた目をウロウロとさせると、今度は更に重々しく、口を開く。
そして、言った。
「……その、一人称が"僕"のせいで、学園長が勘違いしてしまったんだ」
ずるっこけた。
「は、ハク?大丈夫か?」
「……結局、学園長かよ」
ニーアが心配してくれたのにも反応せずに、おれは絶望を床に吐露する。
学園長が絡んでいるのであれば、部屋を変えてもらうのは絶望的だ。
あの学園長はきっと面白そうに傍観するだけだろう。
短い間しか学園長を見ていないおれだが、それだけはハッキリ分かった。
本日数度目のがっでむである。
ニーアに目を向けつつ、おれは絶望をもう1度吐露した。
「……おれ、この学園でさえ平穏はないのか?」
「……その、すまない。
頑張れ」
ニーアとの会話が、部屋にむなしく、それはもうむなしくこだました。
というわけで今回のキャラは僕っ子です!
しかもルームメイトです!
登場が着替えシーンからです!
全くもって今回は2人だけしかかけませんでした、ごめんなさい!
次回は登場人物も多く、更に遅い分長めに頑張ります!
指摘や感想、なんでもいいのでよろしくお願いします!