12:ヒロイン登場遅くね?って話なんだけど
タイトルを少しだけ変更させて頂きました。
不審に思われた読者の方々、申し訳ありません。
なにかご指摘や感想がありましたら是非お願い致します!
サイド:ハク
さて、おれは今、盗賊団に囲まれているなうである。
……え?入り方がおかしいだろって?
じゃあ、こうなった経緯を話そう。
きっと納得してくれるはずだ。
まずおれは、
ガウァースに馬車を止めてもらうよう頼んでから、
女性の悲鳴が聞こえた方へと向かった。
ついたのは森の中でも結構開けた場所で、盗
賊団に1人の女の子が囲まれていた。
これはちょっとヤバイんじゃないか、と思い、
女の子を助けるために考えていた
そのとき、
隠れていた樹の幹に躓いて、
挙げ句「うお!」なんて言っちゃったせいでモロにバレた。
そして今に至るわけだ。
……うん。ごめん。ホントごめん。
頭を抱えて誰かに謝罪しているおれに、
1人の盗賊が歩み寄ってきて言う。
「おいテメエ、お前なぁんでここにいやがった?あれかぁ?この嬢ちゃんの連れか?あぁ?」
……だれか教えてほしい。
これがヤクザじゃないなら、何がヤクザなんだろう。
あれか、どっかの厳つい闇商人のオヤジか。
まあとりあえず、おれは一応盗賊に言う。
「あー、連れじゃあないが止めろ、こんな事したらえーと、あれだ、あれになるぞ、なっちゃうぞー」
我ながら渾身の説得である。
……いやだって女の子襲ってる奴らの説得って改心する言葉無くね?
まあ案の定、盗賊は小馬鹿にしたように言った。
「あぁ?こいつバカなんじゃねえの?おい、もうこんな奴殺しちまっていいだろ?そっちの嬢ちゃんとヨロシクヤりてえしよお」
ケケケ、と盗賊の下品な笑いにつられたように、あちこちから笑いが漏れる。
……いや、うん。わかってるよ。コイツらがマトモなこと言う奴らじゃないってのは。
それでもやっぱり、殺すとか言われた挙げ句に目の前でヨロシクヤっちゃう発言されていい気がするわけ無いわけで。
「おい、お前らマジで止めろ。さっさと消えろ、その子離して」
まあぶっちゃけ、今すぐ叩きのめしたいんだけどね?
最後のチャンスっていうかおれも
こいつがナイフしまったり、
女の子に肩まわしてるその手をさっさと退けてくれたらおれもなんもしないワケd
「ハア?おま、今から殺される奴がナニほざいちゃってんn
──瞬間、盗賊が宙に舞いましたぁ☆
あーもーダメ、限界。
テッテー的に叩きのめしちゃうよー?
「な、おい、アボンがやられてんぞ!」
そんなことを叫ぶ盗賊の1人の声と、アボンとかいうDQNが顔面着地する鈍い音はほぼ同時。
次の瞬間には、おれはイマジンを終えてブースト魔法をかけ終わっていた。
全力のブースト魔法。連中にはおれが消えたように見えただろう。
まずは前方にいる盗賊。
まだ満足に構えていないそいつに、容赦なく掌底をおみまいする。
もちろん、手加減しないと肉料理が嫌になる光景を見てしまうので、しっかり手加減する。
認識さえ出来ずに意識を手放した盗賊1の真横を駆け抜け、
さらに跳ぶ。
到着したのは女の子の捕まっている樹の場所。
おれは掌底を肩をまわしてる盗賊2の腕にくらわせる。
神経をとんでもない勢いで圧迫されたそいつは一瞬で意識を失う。
そして今度は出来るだけ優しく、かつ迅速に女の子を抱えて後ろに跳ぶ。
元の場所に戻り、女の子をおろす。
「……え?あ……ええ…?」
困惑する女の子を視界の隅に、おれは盗賊団に向き直る。
「んな、お、おい!レウもやられたぞ!アギーもだ!」
「あ、あの女、いつの間にあのガキの所にいるんだ!?て、テメエ、どんな手品使いやがった!」
おれが出現したことと仲間が倒れ、女の子がこちらの手元にいる事実に騒然とする盗賊団。
その数はいつの間にか10から7に減っている。
おれは盗賊団にもう一度言う。
「お前ら、最後の忠告だ。消えろ、そいつら抱えて即刻」
ここで「ち、畜生!覚えてやがれ!」的な事いって消えたら、
おれもなんもせずに逃がすつもりだ。
まあぶっちゃけ、
こんな言い方で消える連中じゃないんだろうけどね。
まあ予想通りというか、盗賊団はこんな言葉では諦めなかった。
各々が剣や杖や斧などを抜く。
「調子のんじゃねえぞクソガキが!
たまたま奇襲が成功しただけのくせによぉ!」
リーダーっぽい盗賊の叫びを皮切りに、5人の盗賊が一斉に殺到してきた。
おれはそれを見て思わず溜め息をつくと、剣に手をかけて、抜き放った。
出来れば最初はモンスター相手に使いたかったな、とか思いつつ、盗賊に言う。
「そっか。ならおれもお前らを叩きのめす」
「なめんなぁ!」
おれの言葉に吠えた盗賊団は、おれの首ひとつめがけて攻撃を開始した。
まずは槍の盗賊が突進してくる。
喉を狙った愚直なほどまっすぐな一撃は、予想するまでもなく屈んでやり過ごす。
と、間髪いれずに次がきた。
両側からの剣の一閃が2つ。
腹と喉を裂くためのそれぞれの一閃に、おれは呟く。
「風魔法、迫る脅威を退けよ」
イマジンと共に放った魔力は、2つの剣に殺到する。
ウィンドマジックはイマジンの通りに剣に絡み付き、2つの剣を跳ね上げた。
ただ跳ね上げた剣でも、振るった盗賊の2人の位置が至近距離な状態では、剣が重なり、致命的な隙となる。
そこまでを横目で確認して、おれは反撃を始めた。
剣を重ねた盗賊の内、1人の腕を掴む。
盗賊の驚愕が見えたのは一瞬。
次には、肘を顎に当てて吹き飛ばす。
当然、その影響は重ねた剣からもう1人に伝播する。
大きくよろけた盗賊の足に蹴撃をおみまいすると、ついにバランスを崩し、倒れる。
倒れた盗賊が体勢を立て直す前に、
おれは間髪いれずに槍を突進させたままの盗賊の槍を掴む。
そして槍ごと盗賊を引き寄せつつ、その槍先を倒れた盗賊の足へと流した。
槍が肉を裂き、足へと到達すると同時に、おれは右手の剣を始めて振るった。
斬線をはしらせた先は、盗賊の肩口。
槍が倒れた盗賊の足を貫通するのと、槍の盗賊の肩口から鮮血が舞うのは、ほぼ同時だった。
絶叫もなく、人の盗賊が崩れ落ちた。
顔にかかった鮮血を鬱陶しく思いつつ、剣の切れ味に驚きながら、おれはその盗賊たちの間を駆け抜ける。
目指すのは残った4人の盗賊だ。
「く、クソガキがぁ!」
リーダー盗賊が喚くと、2人の盗賊が襲いかかってきた。
斧を持つ盗賊が跳躍した。
上空からの質量攻撃を仕掛けてバランスを崩すつもりなのだろう。
そして崩した後に剣で一気にけりをつけるのか。
まあ、そんなことはさせないけど。
おれは強化魔法を発動する。
魔力をふんだんに使ったそれを足へ集中させると、おれは跳躍した。
斧盗賊がいる真上をめざして。
「んなぁあっ!?」
間抜けな驚愕の声が聞こえた頃には、おれは斧盗賊の真上に到達していた。
剣を振るう。
斬線は真っ直ぐ、斧盗賊の腕にはしらせた。
あっけない感触で、盗賊の腕が、離れた。
「あ゛っ……があ゛っ……」
そんな声を漏らして、斧盗賊が意識を手放す。
おれはその手を掴んだ。
もちろん、助けるためではない。
掴んだ手を振りかぶる。
そして狙いを定めると……
「ぅうおおりゃあ!」
こちらへ向かっていたもう1人の盗賊へ向けて、ぶん投げた。
「え」
盗賊の呆然とした声が聞こえた時には、斧盗賊が顔面にぶち当たった盗賊の姿が写った。
……ちょっと攻撃させる暇なくやっちゃったのは申し訳ないかな、なんて思いつつ、おれは重なった2人の上に着地した。
着地すると同時に、盗賊の1人に向く。
剣を持ったその盗賊は、躊躇するように顔をひきつらせてから、特攻だと言わんばかりに突っ込んでくる。
おれは剣を掲げて、魔力とイマジンを剣に送る。
「雷魔法、わが剣に雷の祝福を」
魔法を発動させる。
同時に剣に雷が収縮される。
そしてその剣を上段に構えて、特攻盗賊に振りおろした。
斬線の形のままにとんだ雷の一撃は、
狙い通り盗賊の体にぶち当たり、感電させて意識を刈り取った。
これで残るは、リーダー盗賊1人。
しかし多分、彼にはもう戦意なんて無いだろう。
目の前には、顔半分を真っ赤に濡らしたおれと、倒れて瀕死の盗賊団があるんだから。
だから、彼がこうとしか呟けなかったのは仕方がないと思う。
「ば……ぁ、化け、もの……っ!」
次の瞬間には、リーダー盗賊に剣をぶち当てて、昏倒させていた。
「……懺悔は一生かけてやるんだな」
おれが剣を納めて吐き捨てたと同時に、
「おいおい、なんだこりゃあ……派手にやったなハクよ……」
様子を見に来たのだろう、ガウァースの声が聞こえた。
目を向けると、呆然とした女の子とガガウァースの手前の地面に転がる、10人の盗賊の姿が写った。
……やり過ぎた、とか今更ながら思った。
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「んで、お前さんは女の子を助けた挙げ句に盗賊団一個蹴散らしたワケか」
ガウァースが嘆息混じりに呟き、盗賊団をまとめてガッチガチに縄を閉めて固めた塊を馬車に放り込む。
……どんな筋力してんだこのおっさん、とか思いつつ、おれは苦笑を浮かべて返した。
「だって、あのまま逃げてたら、ガウァースの方まで追っかけて来ただろうし。適切な判断だろ?」
……まあぶっちゃけ自分でも適切な判断なんて到底思えないけどな?
「……まあいいが。そんで、お嬢ちゃんはケガぁねぇのか?ポーションならやるぜ?」
おれの無理な言い分は幸いにもガウァースは突っ込まず、おれの横で宥めてた女の子に目を向ける。
女の子はビクッと肩を震わせると、
こちらを見た。
やっぱり盗賊団のグロ注意な光景がヤバかったんだろう。
ショックが抜けきってない様子だった。
「ぇ……あ、ありがとうございます。大丈夫です……」
か細い声でなんとか返した、って感じの女の子。
かわゆい。けどやっぱ戸惑ってるなあ。
とりあえず、事情を聞いてみるべきか。あと名前も。
ということで、ちょうど安否確認が済んだ所で、おれは女の子に質問した。
「ケガがないんなら良かった。
で、なんであんな事になってたか、教えて貰っていいかな?」
女の子に向き直ってきくおれに、女の子はまたビクッと肩を震わせる。
……おれ怖がられてんじゃねえかな。てゆーか怖がられてんよな。
ちょっと落ち込むおれの心情はさておき、女の子は話を始めた。
「わたし、デウィーネの入学式に間に合わせるために、旅してたんですけど……途中休憩してたら、いきなり囲まれて……普段なら魔法でなんとでもできたんですけど、使う暇も無くて、その……」
女の子の言い分に、おれはただ頷いた。
おれみたいにアホな魔力を持ってるわけもない上に、ヤクザと全面戦争して胆力付いたわけでもない女の子が、いきなり囲まれたらそりゃそうなるよね。
にしてもデウィーネに向かう途中だったとはとんだ偶然だ。
そこでおれは考える。
出来ればこんなこと起きる様なところに女の子を置いて行きたくない……いや、おれの精神的に。
出来れば旅の仲間も増やしたいし、なによりこのペースだと女の子が入学式に間に合うか怪しい。
心配だ。
非常に心配だ。
この女の子、スゲエかわゆいし、またこんなことが起きる可能性は充分にある。
そこまで考えて、おれは当たって砕ける覚悟で
女の子を連れていくことを提案することにした。
「あのさガウァ「言い出すと思った。お前さんはトラブル体質な上にお人好しっぽいからなあ。こんなお嬢ちゃんならなおのことだ。好きにしろ」……」
……おれの台詞がガウァースの台詞に埋まった。
おれは驚いてガウァースを見る。
「……いいのか?」
「…お前さんは、おれが襲われたお嬢ちゃんを置いてく男に見えたのか?」
おれの質問に、ガウァースが呆れたような顔で見返してきた。
……まあ、そりゃ非情な奴だとは思ってないけどさ。
ともかく。
「……ってワケなんだけど、どうかな?おれらもデウィーネの学園に入学したいんで、デウィーネに向かう途中なんだけど……良かったらおれらの馬車で一緒に行かない?危ないし、おれ個人としては同年代の友達と一緒に行きたいんだけど」
おれは女の子に聞いてみる。
やっぱ最終的にはこの子が決めることだし。
女の子はとても驚いたように目を見開く。
なんかウサギっぽくてかわいい。
「ぁ、えっ……でも、やっぱりお邪魔だと思いますし」
あわあわ、って感じで両手を小さく振って言ってくる。
でも、こういう遠慮は良くないな。
「いんや、お邪魔じゃないよ?
おれも友達とか欲しいし、なにより未来で同じ学舎の仲間になるんだから、むしろ歓迎だって」
おれが遠慮は要らない、と言外に伝えると、女の子は不安そうに、上目遣いにこちらを見て聞いてきた。
「ほ、ほんとですかぁ……?」
……あれ?この破壊力なんかデジャビュ?
まあ、かわいらしく聞いてきた女の子に頷くと、今度はパァっと笑顔になる女の子。
そして、ペコリと頭を下げた。
「ありがとうございます!わたし、ルリーアって言います!ルリーア・ハイデンベルです。これからよろしくお願いします!」
そんな風に元気に言う彼女の笑顔がすごく眩しくて。
おれは照れてしまい、曖昧に手を振ってからニヤニヤするガウァースに出発を促すことしか出来なかった。
ヒロイン登場でございます。
遅いと感じていた方、お待たせ致しました。
ヒロインのキャラがあまり決まっていませんが、頑張って華のあるヒロインらしいキャラにしていきたです!
感想など待ってます!