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某大学からの電話

作者: 敷知遠江守

 携帯電話が爆発的に普及した頃、携帯電話と共にPHSというものが流行していました。

仲間内でも携帯電話派か、PHS派かに別れていました。

当時の印象では、若干携帯電話派が多いという印象だったでしょうか。


 私はアステルという会社のPHSを契約いたしました。

 理由は至極単純で、当時私が住んでいた地域は、まだ携帯電話の電波が入りにくいという状況だったんです。その代わりPHSならという事でして。確か携帯電話よりもPHSの方が代金も安かったような気がします。


 ただこのPHS、信じられないくらい通信が繋がらない。

 今となってはPHSと言われても、昔そんなものがあった、もしくは何それ?という人が多いと思います。電話したい時に電話ができなかったわけですから、それでお金をとっていたわけですから、その末路もやむを得ないというものでしょう。


 結局は私もあまりにも繋がらないという理由でPHSを止めて携帯電話に移行しました。

 それでも私は使い続けた方だと思うんです。その頃ではもう周囲ではPHSを使っていたのは私だけだったのですから。


 当時、PHSにしても携帯電話にしても大半はスティックタイプ。私が携帯電話に変えたのは二つ折りタイプに魅かれたからでした。

 今でも覚えています。NEC製で当時としては珍しく着メロというものが入っていました。その頃はまだほとんどの電話がピロピロ音だけだったんですよ。しかも画期的だったのは自分で着メロが作成できたんです。


 NTTという会社に当時どうにも良いイメージがありませんで、IDOやDDI、ツーカーなど、いくつかあった携帯会社から東京デジタルホンという会社と契約する事になりました。


 確か契約したのは池袋の大型家電量販店の窓口だったと記憶しています。


 まあ、この携帯電話というやつも、当時は電話したい時に電波が入らないという代物でしで。

 どんな田舎に住んでるんだとよくからかわれたものです。


 当時から携帯電話のメモリに電話番号を登録して、そこから電話をかけるというのが普通でした。電話帳が持ちこせず、そのせいで気付いたら連絡先がわからず疎遠になったという人が続出したわけですけど。


 登録してあるところからかかってきた電話は相手が誰というが表示されるわけですが、電話番号を覚えていないところからだと、とりあえず出てみるしかないわけです。

 携帯電話を契約して確か一週間後くらいの出来事だったと思います。その電話がかかってきたのは。


「Tさんの電話でよろしかったでしょうか? 私、N大学V部OB会で○○という者ですが、OB会の会費の支払いをお願いいたします」


 その時はただ単に間違え電話だと思ったんですよね。N大なんて、これまでの人生で(えん)(ゆかり)も無かったわけですから。違います、人違いですと言って、さっさと電話を切ったんです。当時は電話番号を自分の手で入力しているわけですから、かけ間違いというのは良くある事でした。


 ところがこの電話、そこから月一回から二回という頻度でかかってくるようになったんです。

 しかも、その都度、払えという金額がどんどん上がっていく。

 挙句の果てには、うちの大学に法学部がある事を忘れてるんじゃないだろうなやら、裁判沙汰になる前に払った方が身のためなどと脅しをかけられた事も。

 でもこの辺りまでは、まだ電話番号間違ってますよで済ませられたんです。


 当時SNS等が無く、N大は普通の大学だと思っていましたから、大学が悪意のある電話をかけてくるなんて思ってもみなかったんですよ。

 A部の不祥事に端を発して、大麻の蔓延、理事長の汚職と色々と明るみになって、今ならN大と聞いたら警戒するとは思うんですけどね。


 二年ほどして、携帯電話を機種変更する事になりました。

その頃には、東京デジタルホンという会社は無くなり、Jフォンという会社名になっていました。


 その電話にも、しつこくN大学から電話がかかってきたんです。

 今回の機種には着信拒否の機能が付いてまして、さっさと着信拒否にしてしまおうと思っていたのです。前の電話は着メロ無しという設定しかできませんでしたから。


 それからしばらくは電話はかかってこなかったのですが、その二年後くらいに、また電話がかかってきたんです。タイミングとしては機種変更をして着信拒否の設定が消えた時です。

 ちなみにこの時、Jフォンという会社は無くなっており、ヴォーダフォンという会社になっていました。

 着信拒否をしてから四年以上が経過しているわけですから、さすがにもう諦めただろうと思っていたんですよね。


 やばい、またN大だ。

 もう最初の電話がかかって来てから、何年も経っているんですよ。いくらなんでもしつこすぎる。

 私は頭にきてしまって、いい加減にしろって怒鳴ったんですよ。

 ところが、こっちは住所だってわかっているんだから、そっちに取り立てに行っても良いんだぞと言って来たんです。

 私は言ってやりました。私はTさんとやらでは無いから、そうすれば良いじゃないですかって。


「住所は○○区○○云々、これですよね? 本当に行きますからね!」


 驚きました。その住所、私のその時住んでいた住所だったんです。

 しかも、東京デジタルホンを契約した時に住んでいた住所ではなく、引っ越した先の住所です。


 誰かに情報を漏らされている。しかもN大は五十万以上の金を今すぐ払えと言っている。

 それまでは、所詮は間違え電話だろうと思っていたのですが、急に犯罪臭が強くなり、怖くなってしまいました。

 そこからもその電話は定期的にかかってきました。当時私が住んでいた部屋のチャイムは、誰が来たかわからない旧式のものでした。

 その電話以降、会社から帰ると郵便受けが荒らされている事が多々ありました。さらにはドアに靴跡が付いている事が度々ありました。ベランダに石が投げられている事も。


 結局、その部屋は隣人の出火によって追い出される事になるわけですけど、それと同時に携帯電話も機種変更をしました。

 その頃にはヴォーダフォンという会社は無くなっており、ソフトバンクになっておりました。


 引っ越しもした。あれから着信拒否をして二年以上が経っている。さすがにもう諦めただろう。そう高を括っていました。

 でも甘かった……

 案の定、その電話にもN大から電話が。

 私は名乗りもせず、N大と言われただけで、プチッと通話を切りました。


 ところがその行動が、さらに驚く事態を引き起こす事に。

 なんと、私の電話に『Tさん』本人から電話がかかってきたんです!

 電話番号は非通知となっていました。


「お前か、俺の電話番号勝手に使ってる○○って奴は! 何年も人の電話勝手に使いやがって、警察に訴えたからな! ふざけやがって!」


 『Tさん』は、私が犯罪行為をして相乗り?をして通話料金をなすりつけていると言って来たのです。

 いやいやいや。こっちにはちゃんと契約書だってあるし、月の明細だって届いている。

 たまに「なんだこれ?」と思う高額な請求もあるけど、黙って払っている。


「わかりました。そこまで言うのなら、ソフトバンクの方に問い合わせてみますよ。電話番号を言って、あなたと私、どちらの契約になっているか問い合わせてみますから、下の名前と漢字を教えていただけませんか?」


 すると『Tさん』はプツッと電話を切ってしまいました。


 翌日ソフトバンクに問い合わせてみました。

 最初は顧客情報については答えられないと突っぱねられたのですが、事情を説明すると、「あなたの名前を住所を言ってください」と言われました。言われるままに答えると、その契約情報で間違いございませんと言われたんです。

 でも、実際にそういう電話がかかって来たんだという話をしたのですが、そんなはずは無いの一点張りで。


 それまでは、携帯会社を変更すると電話番号が変更になってしまうという事で、なかなか会社の変更がかけ辛かったのですが、その後電話番号が持ち越せるようになり、ソフトバンクからauに変更したら、このN大からの電話は一切かかって来なくなりました。



 未だに、なぜこんな事になったのかは全くわからないのです。

 なんでN大が私の電話番号と引っ越し先の住所をきっちり把握していたのかもわからない。

 当時私に電話をしてきた人で『Tさん』にかかったと言って来た人は誰もいません。じゃあその『Tさん』はどうやって私の電話を知ったのか。

 私が留守の間に郵便受けを荒らしたり、ドアを蹴ったり、窓に石を投げたのは、いったい誰だったのか。

 そもそも電話相手は本当にN大だったのか。


 色々と可能性はあるとは思いますが、残念ながら謎は謎のままなのです。

 なんとも気持ちの悪い話ですよね。

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