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第二話 終わらない物語への招待状

              第二話 終わらない物語への招待状




件名:『クロ様へ 終わらないゲームをあなたへ』


>>クロ様へ


この度弊社で開発中の新作ゲーム、『ETERNAL STORY ONLINE』に登場する魔王AIが未完であり、措置としてクロ様に代役をお願いしたくご連絡させていただきました。以降社長による伝言を預かっておりますので、そのままお伝えします。


こんなワクワクすることないよね!少しでも気になったら明日、直接会いに来て!君なら最強の魔王になれる!!


以上です。このメールの内容は極秘であり決して口外なさらぬようお願い致します。



株式会社NEXUS<<


俺はこのメールを読んで久しぶりにワクワクした。失いかけていた、昂ぶりが蘇る。

最近はあまり触っていないが、VRMMORPGは幼い頃、俺が初めて触ったVRゲームであった。


右も左もわからない中、世界の全てが輝いて見えたあの頃の感動。また味わえるのかもと思ったのかもしれない。


そしてなにより、世界中の全員が俺を倒そうと迫ってくるんだ。どう考えたって最高のゲームじゃないか。

俺が世界最強の魔王になるんだ。

戦闘、戦略、内政。今まで得た全てを使って全てを活かし全ての頂点に立つ。



「俺が求めていた最高のゲームだ・・・。」



一度直接会いたいと連絡したが俺の心は既に決まっていた。


直接会う旨を伝えると、早急に自宅まで迎えを寄越すそうだ。

一応最低限身だしなみを整えて、窓の外を見ると・・・。


早すぎるだろ・・・。まだ連絡して10分くらいだぞ。

なんだあのでかくて高そうな車。

しかもめちゃくちゃいかつそうなボディーガードが数人車の前で整列している。閑静な住宅街にあまりに似合っていない。


「いくらなんでもやりすぎだろ・・・。」


気まずい顔で迎えの車へと向かう。



「クロ様ですね。お待ちしておりました。それではこちらへ。」


ボディーガードの中でも一際風格のある男が低い声でそう告げる。


「こんな警備体制いるか?俺は大統領じゃないんだから・・・。」


と、ついついぼやくと、ボディーガードが答える。


「いえ、貴方様はもはや一国のトップと遜色ない価値をお持ちです。堅苦しいかもしれませんがお許しください。」


「・・・。」


さすがに一国のトップは言い過ぎだろ。

こういう王様待遇は慣れないがさっさと車に乗り込み、目的地へと向かう。


ただ、VRが中心となったこの世界だとしょうがないことなのかもしれない。

今の時代VRプロゲーマーは誰もが夢見る夢の職業だし、実際にVRプロゲーマーの人気はすさまじい。

VRゲームで大会があろうものならトレンド独占だし、テレビもその話題が特集で組まれるほどで、VRゲーム市場は今やあまりに大きいものになっている。

時代の流れだろうなぁ。


車を走らせて数十分。都内の一等地に目的地であるビルはあった。


今回俺に声をかけてきた、企業は 「NEXUS」 という企業だ。

このVR台頭時代に、いち早くVRゲームの人気作を次々と発売し、今やVRゲーム業界の王とも言える存在にまでなっている企業だ。

なんといっても社長がとんでもなく天才で、立案から実行までなんでもやってしまう。


その社長とは昔一度だけ会ったことがある。

NEXUSのいくつかのゲームで世界王者になった後、社長から直接会いたいとGMメッセージが届き、飯奢りじゃんけんの末に焼肉を奢ってもらった。


ふつう飯の約束をGMメッセージでするかよ。

だが、基本VRワールドにこもっている俺にとっては、数少ない友人(?)とも言える。



無茶苦茶だが、面白いやつには違いない。  


「クロ~~~!!!!」


会社に入るや否や目の下のクマがとんでもないことになっている長身ヒョロヒョロの男が駆け寄ってくる。彼こそ一代ですべてを手に入れた男、天瀬あませ 永遠とわだ。


「久しぶりだな・・・永遠。あと近いんだが。」


「あぁごめんごめん・・・。昨日の決勝見てたよ~~!相変わらずすごいね~~!やっぱり昨日ので確信したね!!君なら最強の魔王に成り得るって!」


「いいよそういうの・・・。」


ベタベタしてくる永遠をヒラリと躱し、本題に移るようにそれとなく促す。


「おけおけ~とりあえず場所変えよっか~!」


すぐに俺の考えが伝わったようで、二人で話せる場所に連れて行ってくれるらしい。

厳重なロックがかかっているエレベーターやら何重もの扉のロックの先にある社長室へと通された。

コーヒーの匂いを漂わせる、かなり大きい部屋には、見たこともないマシーンやら、開発中の企画書やらが所せましと敷き詰められている。


「君ならすぐ来てくれると思ったよ~!どうせ次にやるゲームもなくて暇してたでしょ~!」


「あぁそうだよ・・・。」


こいつには俺の心を全部見透かされているような、そんな気がするんだよなぁ。


「なんとなくメールは読んだが、つまり最強AI魔王の代わりをやればいいんだよな」


「話が早くていいねぇ~まぁそゆことよ!み~んなが君のことを狙ってる。そんなゲームなら君も退屈しないだろ?」


「あぁ・・・。そうだな・・・。こんなことを聞くのは野暮かもだが最強AIは完成しなかったのか?」


「そうだねぇ・・・。いいところまでは行ったんだけど未完って感じだね~!」


俺としては最高のVIPチケットだが、本当にユーザーにとってはいいのかなぁなんて考えも頭をよぎったが、まぁこいつならなんとかやるだろう。

それに俺が最強の魔王としての役目を果たせばいいだけ。単純な話だ。


「どうせもう準備はしてあるんだろ?」


「もっちろ~ん!」


永遠が満面の笑みでグーサインを返すと同時に、目の前の壁が透明になり、巨大なコックピットのような機械が現れる。


「これは・・・。」


「当社開発の反応速度のラグは最小限、長期のVR環境のダイブに耐えうるとんでもない代物だよ~!まだ小型化と量産は厳しかったから虎の子なんだけどね~!」


早速機械に乗り込み、ダイブの準備を整える。


「じゃあ早速行くぞ」


「いってらっしゃ~~い!!ちなみに魔王は一回死んだら復活できないからね~~!」


なってやろうじゃないか。最強の魔王に。


聞きたいことはたくさんあったが、正式リリースまではかなりの時間がない。

今は一分一秒すら惜しい。



 

『ETERNAL STORY ONLINE SHADOW SIDE』



起動しますか


はい←

いいえ




はいを押したその瞬間、




俺は戦火の真っただ中に放り出されていた。



-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------


数刻後。

一人きりになった部屋で静かにVRマシーン内で眠る、彼にとって唯一の友人に目を向けしばらく眺めた後、透明であった壁を元の壁に戻す。


「さぁ・・・。産まれるぞ・・・。最強の魔王が・・・!!」


彼は恍惚とした表情で身をよじらせていた。


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