第一話 最強のゲーマー
第一話 最強のゲーマー
『さぁ、とうとうこの日が来てしまいました!VR(仮想現実)が当たり前になったこの時代だからこそ、このVR世界の中で最強を決めるべきなんじゃないのかぁぁ!!?』
「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」」」
歓声が地鳴りのように響いている。超大型の円形闘技場は満員御礼。
そう、今日はVRFTG(仮想現実格闘ゲーム)で最も人気が高いとされている『GOD OF FIGHT』 通称ゴッファイの世界大会決勝である。
観客のボルテージは最高潮。全世界の同時視聴者数は、配信を含めると1000万人超え。
いまかいまかと観客が待ちわびるなか、実況が入場を告げる。
『赤コーナー!!!誰が呼んだか人類最強!アメリカの英雄!絶対的王者!ディフェンディングチャンピオン!!人呼んでミスターゴッドオブファイト!! ‘‘キング=ジャック‘‘ !!!!!!!』
「いけぇぇキングぅぅ!!!」
「やっちまえジャック!!!」
入場と同時に会場が沸き立つ。その筋骨隆々な見た目はまさに強さの象徴。
絶対的王者を彷彿とさせる。
観客が総立ちでジャックコールを響かせていると反対側のゲートが鈍い音を立てて開く。
そのゲートからはキングとは対照的な姿のすらりとした男が現れる
『対して青コーナー!!!史上最凶の挑戦者!今まで獲得してきた世界王者タイトルの数は何十、いや何百にも及ぶと言われております・・・。ナンバーワンを取った途端にそのゲームをやめることからついた異名は『THE ONE(たった一人の挑戦者)』!ゴッファイもこの男に攻略されてしまうのかぁぁ!!!
‘‘チャレンジャー=クロ‘‘ !!!!!』
観客の歓声は気づけば消えていた。みな応援すら忘れ、彼の一挙手一投足を食い入るように見ていた。
「オー・・・。ミスタークロ・・・。とうとう私の番ネ・・・。私はチャンピオンと呼ばれているがチャレンジャーのつもりでいかせてもらうヨ・・・。」
「よろしく頼む。」
会話も最低限に、闘技場中央で拳をぶつけ、お互い闘技場の端まで戻る。
お互いの闘気が会場の空気を震わせる。その緊張感が最大まで高まった瞬間
『GO FIGHT!!!!!!!!』
ゴングが鳴ると同時に二人の拳が交差した鈍い音が響いた。
ジャックがコンパクトながら重い一撃を加えようとするも、クロが鮮やかにいなす。
一撃一撃の重さであればジャックの方が重いのだが、クロはまるで踊っているかのようにいなしている。
「おおおおおお!!ジャックが押してるぞおおおおおお!!!!」
観客たちはジャックの勝利を期待している。ジャックが一方的に攻撃をしかけているため、会場はジャックコールがどんどんと大きくなっていく。
しかし同時刻、一部の猛者たちの見方は違った。
「馬鹿ね・・・。あれはジャックが押してるんじゃないの・・・。測られてるのよ。」
ふと物陰でつぶやく彼女は、昨日の準決勝で散った者。
彼女の見立て通り
次第に、流れが傾いていく。
「なんかジャックの攻撃一発も当たって無くねぇか・・・?」
「嘘だろ押してるはずだろジャック!!」
「違う!クロが攻めることもできねぇんだ!」
観客席のざわめきは結果という形で収束することとなる。
とうとうクロが攻めに転じたのだ。
数分の間攻め続けていたが、攻撃が当たらないジャックに対してクロは的確に弱点を突く一撃を入れ続ける。
あっという間にジャックの体力ゲージが半分を切り、その場にいるすべてのもの。世界中で見ているものが実感することになる。
「やはりクロは唯一無二なのだ」 と。
ジャックの体力ゲージが一発で消し飛ぶほどの体力になったとき、数秒の静寂が訪れた。
ジャックが攻撃を止め、クロに語りかける。
「やはり上には上がいるな・・・。必ず・・・。いつか・・・。」
「あぁ・・・。待ってる。」
その刹那の会話に気づいたものがいるだろうか。
その数秒の後幕引きが訪れる。
ジャックの最速の拳に対してクロの超反応のカウンターが入る。
『Winner KURO』
世界王者にのみ与えられる七色に輝く王冠が彼の頭上でクルクルと回っていた。
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夕焼けが差し込む部屋のベッドに横たわる男が一人
VRゴーグルを外し、伸びをすると少し溜息をつく。
「これからどうするかなぁ・・・・。」
彼こそ、先ほどまで『GOD OF FIGHT』の決勝を戦っていた男
『黒宮 一』 クロである。
「結局ゴッファイも攻略しちゃったからなぁ。」
めぼしいタイトルは大体やり終えてしまった。
格ゲーに頭脳ゲー、FPSまで多岐に渡ったが頂点を取れなかったタイトルはなかった。
頂点になるまでは楽しいのだが、頂点を取ってからは消化ゲーになってしまう。
次に世界が熱狂するようなゲームが出るまで適当なVRワールドに引きこもるか・・・。
蓄えは十分にあるし・・・。
そんなことを考えていると、スマホが鳴る。
メールだ。件名は・・・。
『クロ様へ 終わらないゲームをあなたへ』
このメールが俺の人生を大きく変えることになることを俺はまだ知らない。
毎日、最低一話投稿しますm(__)m
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