1 花
私は暗闇の中で生きている
苦しい。苦しい。苦しい。
誰のことも信じられないし、信じたところで裏切られるだけに決まってる
そう思いながらメイクをして、髪を巻いて、セーターにジーパンを履いて家を出た。
行くところはどこにもないのに。どこにも私の居場所はないのに。
あぁ、人が多い。雑音がうるさい。みんな静かにしてほしい。
太陽が眩しくて、キラキラしたカップルとか、騒いでいるJKとか、母親に連れられた子どもとか、なるべくなら見たくない人達が歩いている。なんか惨めだな。こんななら外になんて出なきゃよかった。
私、ハナ、20歳は、高校卒業してから一人暮らしをしている。実家の居心地が悪くて1人で暮らし始めたけど、今快適かというとそうでも無く。
むしろ、私の中のネガティブが私を取り巻くようになった気がする。
昼12時に起きて、バイトに行って、帰ってきたら酒をのんで寝る。こんな生活なにも楽しくなくて、もう死んでしまった方がいいんじゃないかと思ったりもするけど、死ぬ勇気も覚悟もなく、だらだらと生きてしまっている。
結局、コンビニで酒とお菓子と切れていた卵だけ買って帰ってきた。そういえば最近食欲がなくて、ろくなものを食べていない。自分のために食事を作るなんて馬鹿馬鹿しいし、食べても太るだけなんだけから、それだったら食べない方がいい。
お菓子をつまみにビールを飲んでいると、まだ全然酔いが回っていない私はなんでこんなにも孤独なんだと泣きたくなってきた。自らの太腿を拳で殴りつけた。痛い。でも、痛い方がいい。どんどん殴った。ああどうしてこうなっちゃったんだろう。
同じ高校だった人たちを考えた。みんな大学に行ったり、留学をしたりして友達や彼氏もいて、楽しそうだな。
家族のことを考えた。仕事が出来る良い父親。専業主婦で美人な母親。勉強が良くできる弟。
取り残されてしまったみたい。
本当に私ってなんなのだろう。
それから、全体的に青くなってきたところで辞めた。傷ついた身体を見て、安心する。白い肌がどんどんと汚されて、いつかは後悔するのだろうか。
ビールを飲み終わった私はチューハイを持ってきて飲み始めた。お決まりの飲み方なのだ。
翌日の夜、何も目的はないけれど出かけた。
フラフラと歩いていたら疲れたのでジュースを買って飲んだ。
そのまま家に帰ろうと思ったけど、なんとなく帰りたくなくて、道路の脇に座り込んだ。路上には、タバコの吸い殻が大量に捨てられていて、汚い。
通行人の視線を感じる、でもそんなこと気にする気にもなれなかった。
そうしたら、1人の男が声を掛けてきた。
「ちょっとそこで話さない?」
普段、ナンパなんて断るけど、「うん」と答えた。興味本位だった。
近くのカフェに入った。
「へぇ〜、こういうお店好きなんだ。」
「まあね、ここでバイトしてる奴と友達なんだよ。」
そこは少しレトロなお店で、彼が出している雰囲気とは違うなと感じた。意外だった。
それよりも、知り合いがいるようなお店に初対面の他人の私を連れ込むなんて、変わった人だと思った。
「名前なんていうの?」
「ハナ。」
「ハナね、俺はショウ。」
ショウは新宿で居酒屋のバイトをして暮らしているらしかった。たまたま私を見つけて声をかけたみたい。正直そんなの今の私にはどうでも良くて、ただ誰とも話さないで孤独だった私はついてきてしまった。
その夜私はお持ち帰りされた、というより本当は私のほうが乗り気だったのかもしれない。
ショウとセックスをしてそのまま朝を迎えた。
次の日起きたらショウはまだ寝ていた。色白で、触りたくなるようなサラサラなベージュの髪の毛にピアスがこれでもかと言うほどあいていた。
ショウの髪の毛を触っていたら起こしてしまった。
「ハナ起きてたんだ、なんか食べる?」
「いいや、お腹すいてない」
「そうか、まぁゆっくりしてて」
机の上に置いてあったペットボトルの緑茶を飲んだ
いらないって言ったのにショウは卵焼きとスープを作ってくれた
「おいしい。料理上手なんだね」
「まぁ一人暮らし長いからさ」
それから私とショウは酒を飲み始めた
「ハナって大人しいよね。俺は結構誰にでも話しかけれるタイプだと思うけどさ。」
「大人しいは言われるかも。」
「もっと自分出せるといいね。でもこの前さ、渋谷歩いてたら友達いたと思って声掛けた人が、全然別人でちょー恥ずかしかったんだよね。」
「なにそれウケる」
「ハナはさ、なんかないのそういう恥ずかしかったこと」
くだらないことをたくさん話した
ショウとは何故か話しやすかった
気づいたら、好きになっていたみたい
「俺、タバコ買ってくる」
「待って、一緒に行く」
私達は近くのコンビニにタバコを買いに行った。
正直言うと、私は普段タバコを吸わないけれどショウに合わせて吸った。寒い夜になっていた。
この時間が永遠に続けばいいのに
孤独だった私は心からそう思った。




