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グランドフィナーレ
暗い森の奥深くに道化とともに暮らす魔王は、ありとあらゆる女の悪徳を知っていたので、魂をもたない美しい人形に恋をする。
道化は踊る
流れる金糸の髪を結い、ビロードの肌、サファイアの瞳
道化は謳う
暗い森のあやかしが、魔王に囁く。
「人形を人にするには、血を
誰よりもあなたを愛する者の血を」
道化は嗤う
魔王は道化に問う
「お前に望みがあると言ったら?」
道化は答える
「真のお望みであれば」
魔王は再び問う
「お前の血が欲しいと言ったら?」
道化は答える
「真にお望みであれば」
~けれど、あなた様は愛しい恋人の変わりに、悪徳のつまった女を手にするのでしょう~
道化の言葉は声にはならず
部屋は、血の薔薇
かくして、
魔王の願いは叶ったが、美しい人形はただの女に
道化は冷たい人形に
あとは…空っぽ。
現実の女が嫌だっていって、人形を愛するのは勝手ですが、その人形が人間になったら、やっぱり嫌になると思うんですよね。永久に手に入らない幻想を現実に求めると悲劇を生むんじゃないのと思いながら書きました。