傷跡
手首に刻まれた傷。
周りに飛び散った血。
自らの血で汚した身体。
辺りは静寂。
ぶつける対象などない。結果は自分自身で示した。
誰かがそんな自分自身を案ずるわけでもなく、周りの風景も何も変わらない。
「……」
傷ついた自分だけがいて、周りには誰も。
誰かが理解してくれるとか――別に望んでない。
嘘だ。
独りは嫌だ。
誰かにわかってもらいたい。
“わかってもらいたくて”やった行為なんだ。
お前が行った行為は、他にわかってもらいたかったんだ。真相は――そうなんだ。
「……」
自身を傷つけて示したい。それを可哀想とは言わない。
人はみんな脆いから。他に当たらないだけ良い。
「他人に当たらないだけ……マシみたいな言い方だねえ」
……。
自身を傷つけるという行為。無意味だとか馬鹿だとか不快とか言わない。
残るものは痕――。
その行為をしなくなった時、自身がどう思うか。その時、思ったことが答えだろう。
人それぞれ違う答え。
その時が早く来ればいいな。
「さあ……どうだかね」
縫われた傷を見てぽそりとこぼす。
答えは止めた時――その言葉が、ぼんやりした頭の中を反芻する。




