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イースとキセル


イースは師匠と過ごしながら、森の中でトレーニングを続けた。


師匠の教えは、体を効率良く動かす事を意識する事だった。


師匠曰く、


戦闘に必要な筋肉以外は、変に鍛えると逆に動きが悪くなる。

柔軟な筋肉の方が動きにキレが出る。


とのこと。


師匠は森の中での生活を通じて、基礎トレーニングを行い、時間が空いたら模擬戦で戦闘の感覚を磨く。


イースは今まで戦い方は独学で、どちらかというと野生の動物が戦ってるようなものだったが、師匠の弟子になってから戦闘技術も上がり、動物の動きをマネしていた戦い方も一段階進化して武術と言えるくらいの動きになっていた。


イースが師匠の元でトレーニングして半月が経った頃。


師匠「イース。最低限の技術は教えた。後は自分で考えて工夫して行けば良い。」


師匠はそう言うと、キセルに火をつけ、吸い始める。


イースは師匠をジーっと見ていた。


師匠「ん?どうした?」


イース「師匠・・・いつも・・・吸って・・・ますよね?」


師匠「あぁ。これか?キセルってやつでな。王国の北側にある和都って町のタバコを吸う道具さ。興味あるのか?」


イースは黙って頷いた。


イース「・・・何か・・・カッコいい・・・です。」


師匠「そうか?イースはタバコ吸った事は?」


イースは首を横に振った。


師匠「じゃ、吸ってみるか?確か、使ってない新品のキセルがあったはずだ。ちょっと待ってろ。」


師匠は奥の部屋に行って、新品のキセルを持って戻ってくると、イースにキセルを渡す。


師匠「そこの広がってるところに乾燥したタバコの葉を詰めな。」


イースは師匠の言うとおりにキセルの準備をする。


師匠「葉っぱ詰めたら、キセルを吸いながら葉っぱに火をつけろ。」


イースは師匠に言われたとおり、キセルの葉に火をつけ、煙を吸った。


イース「ゴホッゴホッゴホッ」


イースは勢い良くむせる。


師匠「初めてはそうだよな。どうだ?」


イース「・・・苦しい・・・です。あと、何か体がフワフワします。」


師匠「そうか。そのキセルはお前にやる。」


その後、イースはキセルを吸い続けるとむせなくなり、吸ってる姿も様になっていた。


その夜、イースはキセルが急に吸いたくなり、吸っていると師匠が来た。


師匠「しばらくすると、何でか吸いたくなって、やめるにやめれないんだよな。お前もやめれないぞ。きっと。」


師匠は笑いながらイースに言ったのだった。


師匠「イース。お前に教える事はもう無い。そろそろ、ここを出てジョーカー連邦に行かないと、冬で山を越えられなくなる。出発の準備をした方が良いぞ。」


イース「・・・わかり・・・ました。」


師匠「俺が教えた事は忘れずに鍛練しろよ。それじゃ、俺は寝る。」


師匠は自分の部屋に入っていった。


イースは師匠との生活を振り返りながらキセルを吸う。


キセルの煙は夜の空に漂っていた。


翌朝、イースは師匠と朝食を食べた後、師匠と話していた。


イース「・・・お世話・・・になり・・・ました。今日・・・出発・・・します。」


師匠「おう。道中気を付けろよ。格上とは戦わず、逃げろよ。あと、これ持ってけ。」


師匠はイースに何か投げた。


それは三日月の形をした銀細工に鎖がつけてあるネックレスだった。


師匠「俺の弟子に渡してる物だ。持っていけ。いつか何かの役に立つかもな。」


イース「・・・あり・・・がとう・・・ございます。」


師匠「さぁ、早く準備しろ。日が暮れちまうぞ。」


イースは頷くと、荷物を持って外に出た。


師匠「達者でな。あ、俺の名前教えてなかったな。ジェガンだ。まぁ、覚えとけ。」


イースは黙って頷く。


イース「・・・お世話・・・になり・・・ました。」


師匠「おう。元気でな。」


イースは頭を下げると、振り返って森の中を歩いていく。


ジェガンはイースの姿を見ながら、キセルを吸い始める。


イースも歩きながらキセルを吸い始める。


どうも弟子は師匠に似るものらしい。

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