96 これであたしの研究も昇華したね~☆(*)
「これであたしの研究も昇華したね~☆」
モアはとても満足そうにウインクを飛ばしてくるのだった。
*
「ッたく……。私が意識不明の間に決定しやがって」
ルーシ・レイノルズは憤慨していた。味方であるはずのクールが、ルーシになんの了承も得ずに『蒼龍のメビウスの死』を全国放送してしまったからである。
そんな憤りを隠さないルーシの隣へは、アーク・ロイヤルとミンティが見舞いというわけで訪れていた。
「まあまあ。クールくんも色々考えた上で決断したんでしょ」
「あのヒトたぶん、その場のライブ感で決めてると思うよ」
クールの息子のミンティは、かの大統領がパフォーマンスのためにわざわざ国営放送にまで出しゃばってきた、と捉えているようだった。
「間違っちゃいねェだろうな。クールはなんとなく行動するヤツだ。それでもすべてうまく行ってしまうのが一番の問題点ですらある」
「まあ、あれでしょ? メビウス元上級大将が亡くなったことになっても、今度は少女の器を持って第二の人生始めるだけじゃん? それに、あの方は自分たちに危害が与えられなければなにもしてこないさ」
「アーク、煽るのも大概にしろよ……。こちらは侵害したつもりないのに、偶然の結果あの野郎が参戦しやがったことを知っているだろう?」
「でもさ、アネキ。アンタの主目的は達成できたんじゃねーの?」
ミンティはいかにも退屈そうなあくびを浮かべ、されど鋭くルーシの目を見据える。
「ああ……。世界の再定義は成功した。もう数年も経てば、この惑星はロスト・エンジェルスに追いつけるはずだ」
闘いに完敗したが、戦争そのものへは辛勝した。平和の魔術“パクス・マギア”による『世界の技術力を200年早める』プランは成功し、世界は大荒れを起こしている。
アークらが属す連邦国防軍の軍種のひとつ宇宙方面軍は、大陸で起きている戦争に戦闘機と戦車が追加されたことを感知したという。
「あとはどのように調理していくか、だな。大丈夫、オマエらには私がついている」
銀髪碧眼のショートヘア、包帯まみれの幼女は不敵な笑みを浮かべるのだった。
*
「やあ、大統領閣下」
「よう、切り込み隊長」
演説を終えたクール・レイノルズと演壇の下でそれを見守っていたジョン・プレイヤーは、盟友として握手を交わす。
「オマエの決めたことだ。おれはなんも言わんが、メビウスさんに伝えておいたほうが良かったんじゃねェのか?」
「そうしたらメビウスさん固辞するだろ。死んだことにしたほうが都合良いとはいえ、もう国葬の準備まで始めてんだ。あのヒトが派手な葬式を好むと思うか?」
「思わんな。政治的利用ってか」
「そりゃその側面もあるさ……」クールはタバコをジョンに渡して、「ただ、もうメビウスさんを解放してやろうとも思うんだよ。12歳より我が国に尽くしてきたんだから、残りの人生は好き放題生きてもらいたい。だろ?」
「言えてるな……」ジョンはニヤッと笑いタバコを咥え、「オマエらしく酔狂な真似だよ。もう蒼龍のメビウスが死んだという事実は揺るがない。残るのはMIH学園の超大型ルーキー、120億メニーの少女バンデージのみだしな」
次回最終話、ちょい長めです
いつも閲覧・ブックマーク・評価・いいね・感想をしてくださりありがとうございます。この小説は皆様のご厚意によって続いております!!




