83 殴られても殴り返せねェのならそんなものどうだって良い!!(*)
そして、ルーシたちがついに魔術を用いた対決をしようとしたときであった。
パコン、という小気味良い破裂音とともに、死んだはずのラッキーナ・ストライクが大量の煙に塗れた。ルーシたちは怪訝な表情になりながら確認しようと動く。
が、ふたりはこのとき知らなかった。ロスト・エンジェルス連邦国防軍が総力を挙げてつくった“パクス・マギアへの迂回路”がもたらす運命と結末を。
「なんだこりゃ? 幽霊みてーなのが……おいッ!? てめェ、離せ!!」
「ルーシ!? ンだよこりゃ!?」
幼女で小柄なルーシはラッキーナに良く似た、しかし姿が透けて見える存在に肩を掴まれた。そのゴーストらしき者はルーシへ頭突きをお見舞いし、銀髪の幼女は一瞬白目を剥く。
「いってェなぁ……!!」
だが、ルーシも負けていない。地面に這いつくばるルーシへ迫撃しようと拳を固く握ったラッキーナに対し、いつぞやのメビウスとの戦闘時のごとく地面から黒い触手じみた物体を大量発生させた。
「落ち着け、ルーシ! まだパクス・マギアが成功したか分かってねェのに!!」
「殴られても殴り返せねェのならそんなものどうだって良い!! おら、ぶち壊してやるよ!! 亡霊がァ!!」
ルーシは完全に我を失い、ラッキーナから分裂したなにかを除去すべく雄叫びをあげる。
法則を奪い取る黒い触手が津波のようにラッキーナを襲いかかろうとしたとき。
魔力につままされ、頭痛がするほどの感覚を一瞬で感じ取った。何者かが、いる。ルーシとポールモールは前にラッキーナのような何者、背後に頭が痛くなるほどの魔力を持つ厄介そうな者を抱えてしまった。
「……。ポール、後ろは私がなんとかする。あの宗教放棄者率99パーセントの国に似合わねェ幽霊を潰してくれ」
しかし、闘わずして生き残れる方法も思いつかない。ルーシは手短にポールモールへそう伝え、廃工場の裏出口に向かっていく。
そこにいた者たちを見たルーシは、思わず高笑いを飛ばすのだった。
「なにがオカシイのだ? 貴様の狙いと策はすでに破っているぞ?」
「フッフッフッ……。そうかもな。エアーズのガキはどうした?」
「貴様に教える義理があるか?」
「ないな。しかし……」
二度と対峙するつもりはない、と誓った相手が目の前にいる。ソイツは今度こそルーシを殺そうとするだろう。
それでも、ルーシは不敵に笑う。
「そりゃつまり教えてくれなかったから卑怯です、なんて論法が通用しなくなるぞ?」
「なんの話をしている?」
「リヒト」
ルーシは葉巻を咥え、白いボブヘアの少女の隣にいた赤髪の後輩を自身の仲間が突き刺すのを、愉悦をもって眺めた。
「!? 呼吸がっ──!?」
奇遇にも同じく赤髪の少年が、フロンティアを、脇腹をナイフで刺され転倒するジョン・プレイヤーの息子を何度も突き刺す。
「ナイス、リヒト。魔力も透明化しちまうのはえげつねェほど効くらしい」
「だろ? 社長」
主人公のメビウス(バンデージ)登場していますが、(現時点ではルーシが圧倒的有利なので例外です。
いつも閲覧・ブックマーク・評価・いいね・感想をしてくださりありがとうございます。この小説は皆様のご厚意によって続いております!!




