80 ほら! 着払い勢だよ、オレら!!
「あと、バージニアって小僧いるか?」
「知らんよ」
「いや、バージニアくんなら知ってるよ」
ミンティがそう答えた。彼は眠たげな目つきで話し始める。
「バージニア・エスってね。付き合う女の子がなぜかみんなどMだから、サディストのSをとって名字みたく言われるようになったらしい。んで、マゾの女の子に首輪つけて深夜の学校徘徊してたのがバレてその子の親から訴訟されたんだってさ。しかも裁判はボロ負け。でも金回りは妙に良いんだよね」
「我が弟ながら、めちゃくちゃな生き方してるなぁ……」
「エアーズさんってバージニアくんのアニキなの?」
「まあな。久々に会っておきたい。歳の離れた兄弟ってのは可愛いモンなのさ」
というわけでエアーズは学校内にいるはずのバージニアと合流すべく、電話をかけ始めた。彼は会えることを知ったらしく、足早に場を一旦去っていった。
「ミンティ、オマエ兄弟とかいる? オレはいねえ」
「いない。着払いで父さんの元へ送られたから、もしかしたら腹違いの兄弟姉妹はいるかもね」
「……。オマエも着払い勢?」
「も、ってなんだよ。この世にダンボールへ詰め込まれて家具みたく会ったこともなかった親の元へ送り込まれるヤツなんて、おれひとりで充分すぎる」
「いや、オレもそうなんだよ」
「は?」
「DNA鑑定では99パーセント親子だって出てるけど、父ちゃんの体裁に関わるから“プレイヤー”っていう名字が使えないんだよ。オマエもそうなんだろ?」
「まあ、父さん大統領だから隠し子がいることバレたらやべェし名字使えないけどさ」
「だろ? ほら! 着払い勢だよ、オレら!!」
「だからなんだよ……」
ミンティは機嫌が斜めになったような表情になり、尻尾をブンブン振る。なにか地雷に触れた気がしたフロンティアは、「あ、まあ。良い記憶ではないしな……」と言う。
そんな若人の話を黙って訊いていた……基、先ほどの戦闘で疲れたのもありすこし眠っていたメビウスは、目をこする。
「んー……。エアーズくんはどこじゃ?」
刹那、フロンティアとミンティに電流が走る。眠たそうな超絶美少女が、ヒトを性的煩悩で惑わす悪魔とされてきたサキュバスを彷彿とさせるような艶のある表情が、ふたりの心を射止めつつあった。
「ん? どうしたのだ? 黙り込んで」
フロンティアはメビウスと目も合わせられない。が、辛うじてミンティは美少女の前にみっともない真似はしない。
「……。アンタはさ、無防備だよね」
「なんのことだ?」
「さっきのケーラのアホな動きもそう。モアが止めなきゃアンタそのまま抱きしめられるどころか抱きしめてたろ? 同性同士だとしてもそんなに熱烈にハグし合わないぞ? なあ、アンタって結局何者なんだ? バンデージさん」
亡き妻バンデージの名を借りている72歳の女子高校生メビウスは、手をゆるく広げた。
「何者でもないさ。強いて言えば、死に損なった者だよ」
ミンティは脳裏に、自身の父クール・レイノルズが熱弁していたメビウスという英雄を浮かべた。
着払い勢ってなに?
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