8 うォ!! メビウスさんじゃなかったら惚れさせてたところだった!!
トイレに入った我々だが、始まったのはお説教だった。
なぜ孫娘に叱られないとならないのだ? 見た目で言っても変だぞ? 白髪少女になっても、メビウスのほうが年齢は上に見えるからだ。
「お姉ちゃんあたしが一生独身になってほしくなかったら、もうさっきみたいな顔したら駄目だからね!? 分かってるの!?」
「分かった。すまなかったな。やれやれ」
ついでにトイレも済ませてしまおう。
腰痛がないのはとても利便が効く。重力に押しつぶされず、自由に動ける。こんな感覚数十年間味わっていなかったな。
「とはいえ、女性として生きるのなら大変なのはこれからだな」
おそらくおりもの(?)と思わしき液体が股間から流れ出ていた。生理にはまるで詳しくないが、これからはその驚異にも対処していかなければならない。
「さて、行こうか」
生理についての詳しい話は後からモアに訊くこととして、残り我々が楽しめる場所はどこであろうか。
「ゲームセンター?」
すこし拗ねているモアはゲームセンターのチラシを持っていた。
「まあ構わんが、普通モアくらいの年齢の子はゲームセンターなど寄らないのだろう? テレビではそう言われていたが」
「テレビなんてスマホの前で雑音流すだけの存在だよ? そんなものの情報信じるの?」
「現実的に見ないと分からない世界もあるのか。なら7階だな」
*
メビウスは呆然としていた。
まずこのゲームセンターとやら、モアと同年代くらいの女子が誰ひとりとしていない。
しかしモアは人気者だ。ガンゲームで百発百中。カードゲームで必ず勝つ。コインゲームで溜めたコインは巨大箱から飛び出るほど。
それが故、モアより年下と思われる男児から人気と尊敬を一重に集めている。
子どもたちと遊ぶのが楽しくて仕方ないのか、こちらの存在を忘れてしまっている模様。そのためメビウスはすこし離れたところで、溜め息混じりに独り言を言う。
「モアは我が娘とアイランドくんのひとり娘だ。だが、彼女にとってもっとも不幸だった出来事とは……」
「両親がおれの率いた特別部隊『ジョン・プレイヤー・スペシャル』に参加し、戦死したこと、ですか? メビウスさん」
姿かたちが変わろうとも、魔力というものはいつだって個体認識の番号になる。
ジョン・プレイヤーが階段のほうに立っていた。サングラスをかけ、あくまでお忍びで遊びに来たような出で立ちだ。
「さすが。疑わないのだな」
「ロスト・エンジェルスの総力使っても、メビウスさんほどの魔力持つ少女はつくれませんよ。きっとモアちゃんがいたずらで盛ったんでしょう? 性別変換剤的なものを」
「まあな。ただ、この生活も悪くない。まだ数日しか経っていないが」
「ともかく、モアちゃんのこと思いやるんなら彼女と視線を合わせてやることも大事だと思いますよ」
「言ってくれるなぁ! 若造が」
メビウスは満面の笑みを浮かべる。
「うォ!! メビウスさんじゃなかったら惚れさせてたところだった!!」
「そんなにわしはかわいいのか?」
「娘さんのキャビンそっくりでしたよ? あンときはアイランドがいたから手出さなかったけど、ありゃ良い女だった」
生理ネタはぼちぼち書くかもしれないし、ぶん投げるかもです。
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