78 美少女はそう言った。
誰かに魔力を与える魔術『レジーナ・マギア』。自身の魔力を分け与えられる魔術が存在する。ただしそれを使えるのは、女性の魔力を持つ者のみだ。
魔力はなくなればなくなるほど体調がおかしくなったり、怪我をしやすくなったり、果てには意識不明になってしまったり……如何に人体に重要な概念かが分かる。
しかし見た目が変わってから一ヶ月、よもや魔力の遺伝子すら入れ替わっているとは思ってもなかった。いまやメビウスは立派な少女になったのだ。あり得ないほどの魔力量を持ち恐ろしい魔法を使う、まだあどけなさの残る少女。それがいまのメビウスだ。
それを知ったのはモアとフロンティアである。
「おい、バンデージさんレジーナ・マギアでミンティ守ったみてーだぞ!!」
「えっ!? おじ、お姉ちゃんがぁ!?」モアは目を見開く。
「そりゃあんだけ強けりゃレジーナ・マギアくらい使えるだろ」
興奮するふたりの女子とは裏腹に、ケーラはさも当然といった態度であった。この場合、メビウスの正体を知っているかによって捉え方が変わってくる。
「じゃあてめえはレジーナ・マギア使えるのかよ?」
「そうだよっ! 使えないヒトが偉そうにしないでよね!!」
「遺伝子的に無理じゃん? でもまあ、王の魔術『レクス・マギア』なら使えるぜ?」
「え」
「え」
「確かにおれって不良界の三下みてーな存在だけどさ、腐り果ててもアーク・ロイヤルと血を分けてるんだぞ? つか、御二方は使えない感じ?」
「……」
「……あとすこしで理解できるし」モアは強がる。
「おれ、こんなのに一発KO食らったんだよなぁ……」
使えて当たり前、ではないが、ある程度の段階を超えた者は皆使える魔法。すなわちこのふたりの女子はプロセスをろくに踏まず強くなった、あるいは元々強かったのであろう。
3人がそれぞれ劣等感を抱いている中、メビウスたちがモアたちの元へ戻ってきた。
「おお。バンデージさん!!」
ケーラ・ロイヤルは飛びかかるような熱い抱擁を交わそうとしてきた。最初は受け入れてやろうかと思ったが、彼はモアの魔術によって地べたへと拘束されるのだった。
「なんでぇ!? バンデージさん生き残ったからハグしたかっただけなのに!!」
「この女泣かせのスケベ野郎め……。あたしのお姉ちゃんには指一本触れさせないよっ!!」
「おめえ、それなりにモテるらしいな。めび、バンデージさんのこともヤリステポイするつもりだろ!? 上等だゴラぶっ殺してやる!!」
……なぜここまでヒートアップしているのかさっぱり分からず仕舞いだが、メビウスはひとまずモアとフロンティアの肩を叩く。
こうしてみると、両者は身長が20センチくらい違って顔は似ていない。肩もすこしゴツゴツしていて鍛えていると推測できるフロンティアに対し、モアのそれは弾力があった。
ただ、感じ取れる魔力の強さはほとんど同じ。言っていることも似たりよったり、だ。
「落ち着け。ケーラくんがなにか悪いことしていたのか?」
美少女はそう言った。
ヴァナータ美少女やってる自覚ないの?
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