77 『レジーナ・マギア』
「んん? あれ? てか、ミンティは?」
ミンティがどこにもいない。ケーラの一声でモアとフロンティアもあたりをくまなく探すものの、茶トラ獣人はついに現れなかった。
いつまで経ってもかくれんぼをしているミンティに3人が痺れを切らしつつある頃であった。ケーラ・ロイヤルが固唾を呑み込んで外を指差したのは。
「……。なんであの子、外にいるの?」
「さすがにバンデージさんを止めに行った……。いや、敵にレーザーガン撃ち込もうとしてるみたい」
「頭オカシイんじゃねぇの!? アイツ!」
ただメビウスと敵性が手のひらを出し、ミンティが凶悪極まりない攻撃を行わないために警告めいたことも言っているようだ。
「ミンティ。心遣いは嬉しいが、私たちはもう闘わない。予測が正しければ、私たちはルーシと闘うことになりそうだしな」
「予測?」
「おうおう、バカガキ。いきなりヒトぶっ殺せる光の銃弾ぶっ放そうとするんじゃねェよ。まずはそれに詫びろや」
「おれ、誰にも謝るつもりないし」
「あァ!?」
「おれの父さんクールがヒトに謝ってるところ見たことないし、おれもそれで良いかなぁーって」
「てめェ!? クールさんのガキなのか?」
「父さんと知り合い?」
「元々おれァクールさんに勝ちたかったんだよ。だからクールさん最大の仲間のルーシを襲撃したこともあった。ただまあ……もう目的と手段が逆転してるわな」エアーズは髪をかき分け、「いまじゃルーシに勝たなきゃ前に進めなくなっちまった。仮にクールさんを倒せても意味がねェ」
「ふーん」
「自分から訊いておいて退屈そうな態度だなぁ……」
「まあまあ。それよりも、屋内へ避難したほうが良いのでは──」
刹那、音が破裂した。身体が溶けてしまうような熱波がメビウスたちの肌をかすり、キノコ雲が巻き起こる。そのオレンジ色の光に導かれるかのように、白髮少女の意識は飛びかけた。
「伏せろ──!!」
メビウスが絶叫した頃には、MIH学園の白い校舎が硝煙などで薄黒く汚れ、爆発のピークが訪れていた。エアーズは伏せつつなんとか魔力による防御壁を張っているようだが、問題はミンティだ。
いまにも爆風に吹き飛ばされそうになっている。しかしメビウスにふたり分の防御をするだけの方法がない。この大爆発の中ふたりを包み込む壁をつくろうものならば、薄くなったところに攻撃が通ってしまう。
なんの爆弾かは知らないが、すくなくともメビウスは爆風が感じ取られた時点で死ぬ、と確信していた。
「なにか良い手段は……!!」
されど、ミンティは落ち着いている。諦観しているのではない。あくまでもメビウスが自身を助けると踏んでの態度だ。
「……!! そうだ!!」
愛らしい声を張り上げた少女メビウスは、元の性別が男性であるため使えないと思い込んでいた魔術を使った。
そして無事に生き延び、爆発に一区切りがつく頃、父親に似ずあまり笑う印象のないミンティが笑みを見せる。
「『レジーナ・マギア』使ったんだよね? 女王の魔法っていう」
実は第17話の『レクス・マギア』という単語を『レジーナ・マギア』に修正してあるんですよ。勢いのみで突っ走ってるから良くあるヤツです。
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