76 ルーシ・レイノルズを必ずぶっ潰すぞ
軍隊のトップでもあったメビウスからすれば、耳の痛い話だ。
平和を求めようとしているのに人身御供を用意するなんて本末転倒にも程がある。しかも成功率は10パーセント程度。9割の者は犬死にする。せめてネズミやモルモットあたりに試したところで廃棄しておくべきだったのだ。
「一旦停戦しよう」メビウスは空中にて手を広げ、「国防軍が出張るほどの緊急事態だ。私の首を獲る前にセブン・スターへまとめてやられるぞ?」
「……。分かったよ。チクショウ。こんな形で終わりとは」
戦闘を停止したふたりは、空中にいるのにも関わらず、さらに空高く遠い場所を見据える。いや、轟音と熱波、驚異的な魔力の所為で目視せざるを得ない。
「台風みてーだな」
「ああ。黒いハリケーンといったところか」
メビウスは自らの皮膚が再生し始めていることを確認し、首をゴキゴキ鳴らす。
「あ? オマエ、行くつもり?」
「君も来るか?」
「行くわけねーだろ。おれァルーシ・レイノルズを倒せればそれで良いんだ。オマエに協力する義理は断じてない」
「しかし、この状況はあの薄気味悪い幼女がつくったものだと思わんかね?」
「……あ?」
「君はウィンストンという者に雇われたのであろう? しかしウィンストンの雇い主があの幼女だとしたら? 私と君は共に彼女と不倶戴天だ。しかし我々は協力関係にない。それならば利用してぶつけ合わせれば良い。そう考えたとは思わんか?」
エアーズはしばし首をかしげるが、やがて地上へ降りるようにジェスチャーする。メビウスはそれに従って着陸した。
「……あのガキィ!! ルーシ・レイノルズが絵を描いてたってことか? アイツの所為でどれだけ失ったと思ってんだ? ……。バンデージ、だよな」
「ああ」
「協力する義理はねェが、共通の敵は生まれた。スターリング工業、さらにはルーシ・レイノルズを必ずぶっ潰すぞ」
「そうだな……!!」
*
「お姉ちゃん、上にいる……」
「あれってエアーズさんじゃねぇの?」
「ケーラ、知ってるの?」
「飛ぶ鳥を落とす勢いで名を上げたんだけど、ルーシ先輩とその部下に殺されかけてもう復活できないって聞いてた。だってイモムシみたいになって病院へ搬送されたらしいぜ? 普通そこからバンデージさんと張り合えるまで復活できねぇよなぁ」
「ほへー。変なヒトもいるモンだね。まあ隣にもいるけどさ」
「……。オレのこと指してるのか?」
「そりゃそう。面と向かって嫌いと言ってきた相手の隣にいられる精神力、正直意味分かんない」
「ま、まあ。落ち着けよ、ふたりとも。いまやるべきことはバンデージさんを室内避難させることだろ?」
MIH学園の校舎はすべて対空仕様となっている。まだ飛行機すらロスト・エンジェルスしか開発できていない時代にそんな装備は不要かもしれないが、こうなってくると非常に重要になってくる。魔術による大攻撃にもある程度は耐えられるはず、だと科学者たちが太鼓判を押していたからだ。
免疫力カス過ぎて喉が若干痛てぇ
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