71 クールな姉と天真爛漫な妹の顔が似てない双子で売り出そうとしてるのにぃ!!
「まーた“わし”なんてしわしわワード使ってる!!」
「また理不尽に怒られてしまったよ」
「別に一人称なんてどうでも良いんじゃねえの? ロスト・エンジェルスは無駄に一人称が多いけど、なに使おうが当人の自由だろ」
フロンティアは常識的なことを言ってきた。ただ、モアはそれでも納得しない。
「やー! お姉ちゃんの一人称は“私”なの!! クールな姉と天真爛漫な妹の顔が似てない双子で売り出そうとしてるのにぃ!!」
「バカじゃねーの……。あれ、バンデージさんは?」
「ありゃ? お姉ちゃんがいない」
モアとフロンティアが取り残された頃、メビウスは非常に強い殺気を感じて念のため外へ退避していた。ウィンストンとやらが本当にセブン・スター級の化け物を雇っているのであれば、合点が合う。そうでなければ説明できないほどの殺意だ。
「……。裏で手を回されているのが気に食わないな」
メビウスがそうつぶやいたときには、空中はるか高くに砲身の長い大砲が広がっていた。
誰しもが空を見上げ、写真すら撮る者もいる。このままでは危険である、とメビウスは射線をずらすべく空へ舞い上がった。
「こんなところで殺し合いを始めるなど……いや、つい最近わしもやったな。やはり加齢で前頭葉かなにかが溶け始めているのかもしれん」
そう自嘲して、メビウスは超高速で戦線へと向かう。
「おお。さすがの接近力。こりゃ危険な匂いがするねェ」
「危険なのはどちらだろうな。そのような大砲を天空に展開するとは」
「別に砲弾頼みってわけじゃないぜ? まどろっこしい真似が嫌いってだけさ。その点砲撃は良いぞ? その気になりゃ都市区画も吹き飛ばせる。ヒトがいなくなって問題がすべて消し飛ぶわけだ。ただし……!!」
なにかが、精霊のような何者かが、高貴な鳥のようないきものが、その紫髮の青年の身体を割って現れた。
「でけェ攻撃頼みだと思うなよ? おれァエアーズ!! てめェに恨みはねェが、ある小娘に近づくためだ!! その首捻り潰してやらぁ!!」
その赤い鳥は、まるで不死鳥を思わせた。伝記に出てくるような神々しさは、この無神論であることを国是とするロスト・エンジェルスにまったく似合わない。
「……!?」
「フェニックスの炎は攻撃力を持たねェ。所詮は再生用だからな。ただしそこへおれの魔術理論を付け足すことで……!!」
火の鳥に飲み込まれたメビウスであったが、痛みはなかった。されどこれで終わるわけがないと、メビウスは、かつてロスト・エンジェルスの英雄だった男は、いまや白い髮の少女になってしまった存在は、確信している。
その証拠に、メビウスの身体がジリジリ……と熱を帯び始めた。
「この炎は一定期間相手から再生能力を奪う!! 細胞が事実上死んじまうってことだ! それに加え──」
エアーズは拳銃を取り出し、メビウスの肩に発砲した。
10回無失点で勝てないってどういうことだったの?
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