70 自由と無秩序は似て非なるものですよ?
「は? あたしの肌がボロボロ? 戯言も大概にしていただきたいねぇ!!」
「戯言じゃねーよ。鏡見たことあンのか? すげー肌荒れしてるじゃねーか」
「は、はあ? お、お姉ちゃんはどう思う?」
メビウスは目をそむけた。そして彼女は教師を指差した。
「そこの3人、自由と無秩序は似て非なるものですよ? 退室してください」
騒がしいから出ていけとお怒りである。そりゃそうだろう。モアとフロンティアの声の大きさを考えれば、誰でも追放を決断するに決まっている。
モアやフロンティアは噛みつくつもりにはなれないのか、大人しく退室するようであった。メビウスも立ち上がり、「これくらい不運にも入らん」とぼやく。
教室から出たメビウスは、広々とした宮殿のような廊下でモアたちより謝罪を受ける。
「ご、ごめん。お姉ちゃん」
「すみませんでした」
「先ほど返事しただろう? これくらい不運ですらないよ」メビウスは淡々と、「それより、ウィンストンという生徒について知りたい。彼が復学を考えているとして、なぜ私とモアの首を献納しようとしているのだ? そもそもウィンストンはあの傾奇者に敗れたのであろう? だったら復讐したいはずだ」
「……。ウィンストン先輩は心をへし折られたんですよ。相当手酷い拷問されたって話だし。もうあのヒトはルーシ先輩に逆らえない。ルーシ先輩は敵の心をへし折って戦力にするのがとても上手いので」
「あんな子どもに恐怖心など抱くものか?」
「お姉ちゃん、あたしのことディスってるの?」
「他意はない。すまなかった」
すっかり元気になったモアだが、元々はルーシ・レイノルズによってメンタルに深い傷を負わせられた立場だ。いつその傷跡が膿を出すのか分かったものではない。
「まあ、そのウィンストンとやらは私たちを潰せると思って懸賞金を懸けたのであろう? ところが私たちはまったく襲われない。仲良くお喋りしながらケーキを食べる時間があるほどだ。つまり1億メニーを超えるカネは当然眉唾だと捉えられている。となれば、だ」
ぐるぐるメガネをデコの上に乗せたモアが、意気揚々とした態度になった。
「悩む必要はない、と思わせておいて、ウィンストン先輩がなんかしらの秘策を用意してると思うってことでしょ?」
「その通りだ。ウィンストンはなにかを用意している。それこそセブン・スター級の大物を」
「え? セブン・スター級? めび、バンデージさんそれはないって。確かにウィンストン先輩は未だにMIH地区へ権力持ってるらしいけど、そんな高価な鉄砲玉買えるほどじゃないって」
「そうか? ひとつ思ったことがあるのだ」
「んん? なに、お姉ちゃん」
「ウィンストンがあの幼女から資金提供を受けているとしたら、国の最高戦力であるセブン・スターに匹敵する魔術師も雇えるのではないか、とね」
「なるほど。でもそんなくどい方法使わなくても、ルーシ先輩自らヒトを雇えば良いじゃないですか」
「いや……」メビウスは弱々しく首を横に振り、「おそらく彼女はもう自分の手でわしらを追い詰めるつもりはない。本来は関わりたくもないだろうな」
ドカ食い気絶+肌荒れ系メインヒロイン
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