7 そんな顔しちゃ駄目~!! 可愛すぎるもん!!
「無難にカイザ・バーカーとコーヒー、ポテトで良いか。モアは?」
「ギガント・バーガー3つにコーラ5本、Lサイズポテト3人分!!」
「……。は?」
「ギガント・バーガー3つにコーラ5本──」
「言っている意味は分かっておる。問題はふたつある。ひとつ。そんな量を食べ切れるのか。もうひとつ。慣れた言い草だがいつもこんな注文をしているのか?」
なぜモアが太っていないのか不思議でならない。いや、軍人の孫娘で娘でもあるから消化器官が強靭なのかもしれない。ただ、理解し難いのは事実である。
「食べ切れるよ~。お姉ちゃんあたしを舐めないでね! 必ずこのオーダーするんだから!!」
まあ攻めることもないだろう。だからメビウスはグリグリをせずにファースト・フードを受け取りにいった。しかしなんとなく、お仕置きしておくべきだとも感じる。
ヒトの形をしたロボット『ヒューマノイド』が頼んだ品数的にこちらまで運ぶつもりだったようだ。仕方ないのでメビウスは結構な速度で走るヒューマノイドを追いかける形で席へ戻る。
「ヒューマノイドも普遍的だよね」
「人類の新しい奴隷というわけか」
「そのうちロボットに人権を求める運動が始まるよ」
「厄介だな」
そんな言葉を発さないヒューマノイドが動き回るファースト・フード店で我々は黙々と飯を食べる。胃もたれを起こしていてもおかしくない脂まみれな食べ物にも負けない。やはり若返ったことがうまく作用しているみたいだ。
「お姉ちゃんさぁ、家族サービスしてる自覚ある?」
「すくなくとも君に服を買う楽しさは教えてあげられたはずだと思っている」
「そうじゃないんだよ! あたしはTS娘が恥じらうシーンが見たいの!! こんなHな服着られませんとか、恥ずかしいのにバッチリお化粧してセルフィーすることとか、たまたま知り合いに出くわして魔力の所為で正体がバレて恥ずかしがる姿とか!! それなのにお姉ちゃんビッチみたいな格好平然としてさ! あたしを楽しませてよ!」
怒られてしまった。たとえ若輩者の意見でも正しければ謝罪し意見を聴き通すことが肝心だ。
ただ、モアの考える家族サービスは常軌を逸しているように、いや、常軌を逸しているのだ。
「ああ、この格好か。やはりスカートというものを一度履いてみたくてな。ライダーズジャケットと相性良いじゃろう?」
美しい笑顔を意図せず見せつけた。
気が付いたらモアは携帯を取り出し、雨嵐のようなシャッター音が鳴り響いていた。
群衆は全員メビウスのほうを向いていた。「かわいい」「すげえ」「妹のほうはそんなだな」「これTSしてるんじゃねェの?」といった感想を頂いた。
やがて本当にいつの間にかバーガー3つとLポテト3つ、コーラ5杯を食べ尽くしていたモアに手を引っ張られ、メビウスは怪訝に思いながらまだ残っていた食べ物たちに思いを馳せる。
「そんな顔しちゃ駄目~!! 可愛すぎるもん!!」
モアはドカ食い気絶部所属? 姫になれそうですね!
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