58 似たもの同士だとは思っていたが……!!
「似たもの同士だとは思っていたが……!!」
すでに地上は煙と炎まみれ。地上に戻って殴り合いなどできるわけもない。メビウスは痛みに悶えて奈落の底へ落ちていくばかり。今度こそ勝った、とルーシは確信する。
「……。小娘、あと何秒その魔術を使えるのだ?」
メビウスが尻もちをつくように着陸した場所が、一斉に凍り始める。あれだけ広がっていた火を一瞬で蒸発させてしまった。もちろん都市区間の一部だけではあるが、人間ひとりが立てるだけのエリアは確保したわけである。
「先ほどから煽るような口調ばかり続け、早期決着を念頭においているのだろう? ならばその魔法はいつ解ける?」
「てめェに教える義理はねェ」
「そうか。ならひとつだけ言わせてもらおう」
白い髮の少女が、銀髪の幼女の首を掴んだ。そして地上へ隕石のごとく落ちていった。傍から見ればゲームのラグのようである。
メビウスは叩きつけられたルーシの唖然とした表情を見て、彼女を持ち上げる。
「年上は敬うものだぞ? もうお遊びはおしまいだ。隙を見せた貴様に勝ち目はない」
「……。隙、ねェ」
ルーシは首を圧迫されゲホゲホと咳き込みながら、メビウスの背後を指差す。
「……なんでもう勝負がついた気でいるんだよ。こちらの魔術はまだ万全だし、オマエも妹も殺してやる。必ず、な!!」
「この状況でも吠えるとは、なんと哀れだろうか……!!」
うようよと広がるルーシの魔術による黒いなにか。これを食らう度になにかしらの法則を組み込まれる、あるいは没収されると考えれば分かりやすいか。正確な効能は不明でも、最低限はもう掴めていた。
「……!!? ゲボぉッ!? おっええ──」
が、そんな話も吹き飛ばす方法もある。本体に致命的なダメージを与えてしまうことだ。高校生女子程度の腕力があれば、幼女ひとりくらい撲殺することもできるのだから。
宙ぶらりんになりながら首を締め続けられて全く損傷を食らわない人間なんて存在しない。戦意がなくなるまで、血などの嘔吐物が龍の手にかかろうと、メビウスがその腕力を緩めることはない。
「おい」
メビウスの背後に何者かが現れた。魔力からしてなかなかの猛者であることがうかがえる。もっとも、クールやルーシには敵わないだろう。
「ウチのボスを勝手に殺すなよ。こっからは政治的取引と行こうぜ?」
思わず手から力を緩める。振り返った先にいる黒髪の巨漢は、ぐったりとしたモアを抱えていた。
メビウスはルーシを地面に投げ、「……。貴様は何者だ」と低い声で訊く。といっても当人が思っているよりドスは効いていない。
「ボスの子分だよ。それだけで充分だろ? ッたく、背後から突き刺せって命令してきた癖にダウンしやがって。で、ウチのボスとアンタの妹、交換だ。互いにその場へ置いていこう。んで、歩いて感動の再開ってな」
モアが目の前にいるのならば、ルーシを痛めつける意味はない。ここは彼の提案に乗ってしまったほうが良さそうだ。
「構わんが、ひとつ訊きたい」
「なんだ?」
「君なら他人の正体や秘密をどのように暴く?」
「さあ。ただまあ、嘘ついてるヤツは常に演技してるわけだからな。どっかでほころびが生まれるんじゃねェの?」
そんなわけでルーシと謎の青年は去っていった。
VSルーシ決着! ゲロ吐き散らしながら頑張るよっ!
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