56 私が小娘ならオマエもクソガキだなぁ!?
「どうだァッ!!」
メビウスは雄叫びをあげる。すこしずつ凍っていくルーシ・レイノルズを見て、勝利宣言をするかのごとく。
だが、そんな宣言を受け入れるほどルーシも甘くない。彼女は黒い鷲のような翼を動かし、両肩に刺された氷の槍に触れさせ破壊する。
「……なんだか変な感覚だ」
当たり前だがダメージは食らっている。それなのに平然と立ち上がったように見せかけたルーシに対して、メビウスもまた驚いている様子はない。あれだけ絶叫していたはずなのに、である。
「てめェ、まさか蒼龍のメビウスなのか?」
もっとも、返事が返ってくることはない。メビウスが炎を吐き散らし始めたからだ。この女は一体なにを考えているのか分からないほどに、あたり一面を焼き払っている。
「飛んでいりゃ当たることもねェが……いや、待てよ。妹の手助けをしているってことか?」
良く見てみると、炎を吐き散らす場所には周期性がある。何者かを守るかのように、龍娘は街を破壊しているのだ。
「白ける真似してくれるなァ……!!」
蚊帳の外に置かれたと苛立ったルーシは、もはや災害を巻き起こす舞台装置のような存在になったメビウスへ詰め寄る。
「近距離戦が苦手だと思っているのかい!? 上等だゴラ! 頭かち割ってやるよォ!!」
「──やはり未熟じゃなぁ」
「……!?」
怒れる龍娘の、されど顔には笑みを浮かべる龍娘の羽根がルーシに突き刺さった。血液がドクドク……と腹部から流れる。最前の攻撃も相まって、ルーシは言葉も発することもできない。
「貴様は妹をあんな目に遭わせた外道だ。どのみち処刑するつもりだったが、最期にモアの居場所を教えろ。さもなくば──」
しかしメビウスは異変に気がつく。ゆっくりと、メビウスが突き刺した龍娘の羽根が引き抜かれているのだ。ルーシが手で引き抜こうとしているためだが、死にかけの幼女にここまでの迫力があるのか、と感じてしまうほどであった。
「ああ……!! こんなところじゃ終われねェんだな、私は。内蔵が焼かれた? 頭が撃ち抜かれた? だからなんだって話だ。そこに存在しようと思う限り、私はそこに居続ける……!!」
矢先、言葉を失っていたルーシの意思表明とともに翼が引きちぎられた。メビウスは、「うおおおッ!?」とらしくもなく絶叫する。
「内蔵も脳みそも魔力で再生し続ければ動く!! ここからが勝負だぞ!! “蒼龍のメビウス”!!」
バランスを崩し空中から踊るように落下していくメビウスを見て、ルーシは最後の賭けを始める。黒い翼が銀色に染まり、明確に魔力が強まった。それらをなんとか着地しようともがくメビウスにぶつけるという算段だ。
「勝てると思うなぁ!! 小娘ェ!!」
「私が小娘ならオマエもクソガキだなぁ!? 防御できると思うなよ、暴力装置ィ!!」
意地の一撃がメビウスに襲いかかる。魔術などによる防御は一切していないし、できない。
ルーシは笑う。メビウスは目を見開く。
そして、メビウスとルーシの翼が激突し、灼炎渦巻く地上へメビウスは叩き落されたのであった。
あえての朝更新
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