55 最近の若者のレベルは下がったのかもな?
「てめェッ!! 頭に血ィ昇りすぎだろ! 人質も一緒に焼け死ぬぞ!?」
廃工場どころか都市区画ごと焼き尽くそうと炎を吹いていたメビウスの脳裏に、モアの姿がよぎった。
そして、その隙間をルーシは見逃さない。その幼女は背中に黒い翼を生やし、空中高くに立つメビウスの元へ駆け上がっていく。
「ッたく、無差別爆撃なんてやったら死刑だぞ? 一般人に危害が及ぶことにうるせェ世の中なんだからよぉ。まあ──」
黒い翼は、鷲の羽根のように見えた。銀髪碧眼の幼女の背中へ壮麗に広がる黒い羽が、一斉に光りを帯び始める。
「ゲームをしようか。いまから5分以内にてめェの妹をぶち殺す。止めたきゃ止めれば良い。死刑執行人はそこいらにいるチンピラだしな。しかし当然……」
瞬間、メビウスの身体も光り始めた。なにか良くないことが起きる、と思ったときにはもうすでに遅きに失していた。
「私がオマエを足止めしないとは限らない。どうだ? 身体の内部から起こる爆発は」
ピッピッピッ……というわざとらしい爆破警告音。メビウスがその音を肺の部分から聞き取ったとき、すでに大爆破は起きていた。
硝煙にまみれて、メビウスは落下していく。
──この小娘、さすがクールの娘というだけあるな……。
ただ、風切り音とともに落ちていくメビウスは戦闘の継続をまったく諦めていなかった。
どのみちモアを探すのにはそれなりに手間がいる。5分以内に探し出すのは不可能だ。ならばこの小娘の口から処刑を辞めさせれば良い。
という算用である。どうなるかを知るのは、それこそ不可能だ。
「あァ? まだやり合おうっていうのか──」
メビウスの目つきを見たルーシは、彼女が継続して殺し合うつもりであることを知る。
「……どこだ? 魔力まで抑えやがって」
ならばもう一撃叩き込んでやろうとルーシは羽をうねらせるものの、どこを見渡してもあの白髮少女の姿がいない。
「後ろだよ」
メビウスはルーシのはるか頭上に自身をワープさせ、いま渾身の一撃を叩き込もうと急速落下していた。手にまとうのは凍結の魔法。
呼吸が苦しいほどの高さから一気にルーシへ詰め寄ったメビウスは、かつて英雄としてロスト・エンジェルス中で親しまれてきたメビウスは、この柔らかく筋肉のない身体でも決して自分のやり方を曲げない。
「てめェッ!? 戦闘機並みの高度から降りて来やがったのか!?」
「──この程度で驚かれるとは、最近の若者のレベルは下がったのかもな?」
「チクショウッ!!」
ルーシは背中に広がっていた2枚の翼で防御体勢に入るが、もう間に合わない。この攻撃はまともに食らってしまう。たとえ分かっていても食らってしまう。この攻撃は速すぎるのだ。
「ぐはッあァ!?」
10歳程度の幼女が地面まではたき落とされた。肩には氷の槍が刺さっており、じわじわと彼女を凍らせる。
そしてそれを解除できるのは、メビウスしかいない。
ひがしやまコロナ説急上昇!!
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