47 粋ってばかりの弱者はこの学園には不要です
そんな折、予冷が鳴った。生徒3人が泡を吹きながら地べたに倒れている無法地帯へ、教員が訪れる。
「オリエンテーションを始めます~……なんです、この子たち」
当然、その小柄な女性教員は修羅場に気がつく。どのように言い訳しようか思考を巡らせていると、彼女は予想外の言動をした。
「まあ、粋ってばかりの弱者はこの学園には不要ですからね~。おそらくバンデージさんのカイザ・マギアでピヨピヨしてるんだと思うんですけれど、天下のMIH学園の生徒が同学年の魔力に圧されるのってどうかと思いますよ~」
普通の学園であればメビウスは入学早々停学処分、あるいは退学を食らうはずだった。だが、MIH学園の美徳は強さだ。美学からもっともかけ離れたところにいる“弱者”の味方をするわけがない。
「というわけで、オリエンテーション始めましょ~。まずは在学生の中から特別講師を招いています~。キャメルちゃん、どうぞ~」
メビウスはポカンと口を開け、愕然としていた。色々と情報過剰過ぎて、思考がまとまらないのだ。
まず、この意識不明の生徒3人を完全放置するつもりか? 魔力がすっかり抜かれていて、そろそろ注入しないと手遅れになる。頭に血が昇って手加減しなかったメビウスにも非はあるが。
それに、キャメルという名前は良く知っている。彼女はかの大統領クール・レイノルズの妹だ。もう10年以上会っていないが、最前の魔力膨張で察知される可能性は高い。正体を感づかれて良いことなんてひとつもないため、ここで事実上メビウスは自身の本性をさらけ出してしまったと思う。
そんなわけで硬直し座る素振りも見せないメビウスを訝り、教員が入ってきた段階で座っていたフロンティアがメビウスの袖を掴む。
「座ったほうが良いですよ。初日から目立つこともないでしょ」
「……。もうすでに目立っているような気もするが」
「ま、キャメル先輩のお話を聞きましょう。バンデージさんにはなんの意味もないかもしんないけど」
「ふむ……」
ちょっと不貞腐れた表情になったメビウスを、フロンティアはジッと凝視する。顔になにかついているのでは? と疑念を感じるほどに。
「先生。いくら後輩への見せしめだからって、死にかけの1年生3人放置はまずいのでは?」
「そうですね~。救急隊員、呼びましょうか」
とはいえ、学園内で殺人は発生しないようだ。キャメルの一声で彼らは助かる可能性が非常に高まった。
そして、身長150センチにも満たないくらいの低身長茶髪美少女キャメル・レイノルズは、つらつらとありがたいお話を始める。
──誰が台本を書いたのやら。カンペを頻繁に確認し、自分の言葉で喋れていないようだしな。ただ話し方自体は爽やかで抑揚が効いている。やはりクールの妹というだけあって、演説上手のようだ。
メビウスとキャメルはしばしば目線を合わせるが、彼女はまるで応じない。見た目があの蒼龍のメビウスでないと判断したのか、それとも魔力の探知ができないのか。
「──というわけで、以上です。ですが最後にひとつ。そこにいる白い髮の子、あとですこし話しましょう」
イキがるよりも粋がるのほうがかっこいい気がする!
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