46 私は家族や友人を貶されることがとても嫌いだ。
「とりま賠償金って形で有り金全部没収な。財布出せ」
「いやいや、損害賠償は親がすべきだろ。あ、モアのアネキってことは両親もいねェのか! 悪りィ悪りィ!!」
「ま、親がいなきゃあんな狂犬みてーな女になってもおかしくないわな。ははッ……あーあ、死ねば良いのに」
殺意と悪意が煮える現場で、メビウスは罵詈雑言を黙って受けていた。隣にいるフロンティアが怪訝そうな表情になり、もしかしたらメビウスのために怒ってくれたのかもしれない。彼女は、「てめえら、バンデージさんはあのちびっ子と関係ねえだろうが!! だいたい親がどうのこうの言うんじゃねえ!!」と怒り散らかした。
「あっ! そっか! おめェも親に恵まれなかったもんな!!」
「着払いでセブン・スターのジョン・プレイヤーの家へ送られた哀れな少女ってな! オマエ、MIH学園のてっぺん獲るとか抜かしてたらしいけど、もうすでに喜劇の王様じゃねェか!!」
「ぎゃははッ!! 傑作だわ! 見ろよ、この勘違い女のアホ面ァ!! 男ぶってる癖に産まれをいじられたくらいで泣きそうな表情してるぜ!?」
予鈴まであと1分ほど。メビウスは自らを擁護したフロンティアが涙目になっていることを知り、途端に魔力を膨張させた。
「ンだぁ? やり合うつもりか?」
「そこのバカアマは戦力として見込めねェぞ? 3対1で勝てると思ってるのか?」
「ンだよ、その目つき。本気でムカつくな。仲良く臨死体験してみるか──!?」
瞬間、その不良男子生徒3人は、膝をついてメビウスに屈したかのように跪いた。
「こ、呼吸ができねェ──!!?」
倒れた生徒のひとりの胸倉を掴み、白髮少女のメビウスは宣言する。その見た目に似合わない威厳をもって。
「良いか? 私は家族や友人を貶されることがとても嫌いだ。そして当然だが、自分を批判されるのも大嫌いだ。分かったか? 若造」
「……!!」
「どうした? 貴様ら、口が聞けないのか? いや、そんなわけない。先ほどまで饒舌に中傷を重ねてきたのだから、返事くらいはできるはずだ」
目の色が、メビウスの青い目が変わっていく。赤く染まっていく。それは憤怒の合図だ、と確信したフロンティアの涙は引っ込んだ。この白髮少女が威圧感だけでヒトを殺さぬよう、赤髪少女は肩を叩く。
「バンデージさん、もう勘弁してやってください。学校内で殺人事件が起きるのは怖すぎるし」
すでに3人は泡を吹きながら白目を剥いでいる。メビウスの見た目にそぐわない魔力に感化され、自身の身体を巡る魔の体力が萎縮したからだ。
血流のように巡るそれが身体のどこかで硬直しており、このままでは『睨み合っていたと思っていたら、片割れが突然跪いて足をピンと伸ばしている……要するに死にかけている』と思われても仕方ない。
「それに、こんな誹謗くらいで泣いてたら父ちゃん越せないですよね。オレが着払いで送られてきて一番頭抱えたのは父ちゃんだと思うし」
スラスラとチクチク言葉が出てくる性格の悪さよ
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