41 おじいちゃん、鬼畜だね……
仲良し小好しでは英雄など務まらない。メビウスの言う通り、彼女とセーラムは常時と言って良いほど対立していた。セーラムの言い分も分かるが、どうしても解せない……そういう関係だったのだ。
「えーっ!? 教科書が嘘ついてるってこと?」
「そうだな……。真っ向から言い合うこともあったし、気に食わないヤツだと何度も思った。だが、いまこうして人生の終わりに近づくと、彼のような者の顔もチラつくものだ」
「おじいちゃん……、じゃなくてお姉ちゃん。寂しいこと言わないでよ。まるで死んじゃうみたいな言い草じゃん」
「人間はいつか死ぬからな」
半分冗談ではあるが、思いの外モアは精神的に来るものがあったようだ。そのため、メビウスは話題を逸らす。
「ところで、他に訊きたいことはないのか?」
寂しげな表情になっていたモアが一瞬で笑顔になった。
「うん! ジョンさんとクール大統領との関係性訊きたいな!!」
「彼らのことか? そうだな。最後の教え子と言ったところか」
「最後の教え子? おじいちゃんが50歳だったときくらいにふたりを弟子にしたんでしょ? でもおじいちゃんが退役したのってそれから20年弱経ってるじゃん」
「60歳過ぎてからは弟子を取らなかったからな。陸軍の事実上のトップということもあり、後進を育てている暇がなかったのだよ」
「ふーん。でもさあ、あのふたりってバカ強いじゃん? どういう特訓したらああなるの?」
「隣国かつ敵国ブリタニカに数ヶ月放置してみたり、人間の条理が通用しない場所に閉じ込めたり……。いま思うと、随分手厳しい手ほどきをしたものだ」
「は?」
モアが固まっているのを気にせず、「ただ成果は莫大だったな。ヤツら、多少撃たれたり刺されたりしてもピンピンしているからのう」と満面の笑みを浮かべる。
「ブリタニカに数ヶ月放置? 人間の条理が通じない場所に隔離? おじいちゃん、鬼畜だね……」
「彼らが最短で強くなることを望んだからじゃ。現にいま、あのふたりはロスト・エンジェルス最強の魔術師として君臨しているだろう?」
「まあ……そうだね。じゃあさ、まだ訊きたいことあるんだけどさ。おじいちゃんってどんな魔術使うの?」
シンプルかつ難解な質問がやってきた。モア自身の魔術が理解不能な現象を操るという滅裂なものであるため、その大本となっているメビウスのそれは更に複雑なのだ。
「主に使うのは“凍結術式”じゃな。空間を支配する術式も多用する。そして身体能力と飛行能力、さらに機動力が凄まじく上がる“龍王術式”も使う。見た目が龍神になる魔術じゃ。ただこれはそれなりに消耗が激しい上に、この身体では余計に長い時間は耐えきれん」
モアはまるで話を飲み込めていなかった。彼女はパソコンのブルースクリーンのように固まっていた。それはメビウスのスケールに驚嘆しているからか、それとも祖父という名の少女が頻繁に超絶美少女になるからか。
7月19日は東山がTSF小説を書き始めた日! きょうで2年目だよ! まあ予約投稿だから日付変わってるけれどね!
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