40 あのすべてを欲張った空母と同価格なのか。私は
「ふざけた金額だ。MIH学園はなにが言いたい?」
メビウスがその通知書に少々頭を悩ませていると、モアが帰宅してきた。これは良い機会だと、メビウス
は金髪低身長のぐるぐるメガネの孫娘モアを招き寄せる。
「ただいま」
「おかえり。モア、すこし教えてほしいことがある」
「なーに?」
「カテゴリーと評定金額というものだ。先ほどメイド・イン・ヘブン学園から送られてきた」
「金額は?」
「120億メニーじゃ」
「……。写真撮るか絶句するかで迷うな」モアは露骨に眉をひそめ、「まあまあ、おじいちゃんなら120億メニーくらい値札がついてもおかしくないか。カテゴリー・PTだと考えれば破格だけど」
「専門用語ばかりで良く分からないな」
「んー。要するに、おじいちゃんにはレーザービーム搭載対魔術ステルス原子空母くらいの価値があるってMIH側は考えてるってことかな。値札っていうのは評価金額で、PTはプロスペクトの略称だよ」
いつだか同期のセーラム将軍率いる海軍が、100億メニーを超える最強の空母をつくると息巻いていた。結果それらは3機ほど着港したらしく、モアが言うように迎撃へはレーザービームを使い、魔術師による集中砲火に遭わないようステルス加工もされている。
そんな不沈艦と同等以上の評価を受けた少女は、思わず首を振った。
「あのすべてを欲張った空母と同価格なのか。私は」
「おじいちゃん知ってるの?」
「セーラム将軍の顔がちらつくよ……。彼は素晴らしい軍人だったが、一方でロマン主義過ぎた」
「セーラム? そのヒト、うちの理事長じゃん」
「本当か!?」
淡泊なモアの言い草に、らしくもなくメビウスは狼狽えた。
「本当だよん。ある程度のプロスペクトには、理事長自ら面談することもあるしね。あたしもすこし話したし、セーラムさんが昔話好きならおじいちゃんも招集かかるんじゃない?」
「彼は意外と喋ることが好きだからなぁ。おそらく面接を受ける羽目になるだろう。この姿で」
「ねえねえ」
「なんだ?」
うなだれているメビウスに、モアはなにやら嬉々とした表情でこちらを見てくる。
「あたし、おじいちゃんのこと知らなすぎるみたい。なんかさ、あれだよね。身近に偉人がいると感覚が麻痺って、大したヒトに感じなくなっちゃう。というわけで、おじいちゃんなにかお話してよ」
孫からの突然かつ無茶な要求に、メビウスは首をかしげる。
ただ、考えてみればモアがメビウスの身の上話を尋ねてくるなんて初めてだ。この数週間、自分の意図通りメビウスが美少女になって、モアの中でも心理の変化があるのかもしれない。
「そうだな……。それこそセーラム将軍とわしの関係性が真っ先に浮かぶな」
「理事長とおじいちゃんが盟友なのは知ってるよ? 教科書に載ってるレベルだもん!」
「いや……私とセーラム将軍は友人といえるほど親しくない」メビウスは遠くを見据え、「むしろ敵対関係といえるほどだった。陸軍出身で軍縮派の私と、海軍畑の軍備拡張派。政治的にも立場的にも、常に対立していたよ」
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