38 着替えているときチラチラ見られる感覚には慣れないな
超広大な校舎は、学校というより宮殿だ。先ほどラッキーナがモアの価値を5億メニーと言っていたが、この学びの場はそれと同じくらいの値段をかけてつくられていそうな雰囲気である。
「後期入学志望の方ですか?」
入り口のひとつの前で係員にそう聞かれた。メビウスは、「そうです」と淡泊な返事をする。
「身分証明書をおかざしください」
なにやら電子機器に身分証をタッチしなくてはならないようだ。メビウスとラッキーナはそれぞれ触れ終える。
「バンデージさんとラッキーナ・ストライクさんですね? 早速ですが、身体検査があります。着替えてきてください」
係員はタブレットで更衣室への道しるべを見せてくる。ふたりはそれに従い、白い宮殿ことMIH学園本校舎を歩いていく。
「本当にここで授業が行われているのか?」
「え、あ。そうみたい。で、でもここは権威的な存在らしいよ」
「学校に権威が必要なのか?」
「わ、わ、分かんないけど、ひ、必要かもしんな、い」
「すこし緊張がひどいようだな……」
そもそも身体検査とはなにか、と訊きたくなるが、いまのラッキーナを見ている限りまともな答えが返ってくるとは思えない。孫娘モアが入学試験を受けたときは、紙のテストと魔力の軽量が課せられる入学試験だったはずなのに。
「まあ、やってみれば分かるか」
「ば、バンデージさんは怖いもの知らずですね……」
「そうか? 誰よりも怖いものから逃げ回っているような人間だが」
「テストと魔力測量だけでも緊張するのに、身体検査なんてまったく聞いたことない試験までやらなきゃいけないんですよ……?」
「不運も運のうちだ。それに、まだ不運だと決まったわけじゃない」
メビウスはそう言い、着衣室までさっさと歩いて行ってしまう。ラッキーナは吐き気に悩まされながらも、白髮少女についていくのだった。
*
そりゃいまのメビウスとラッキーナは同じ性別だ。同じ部屋で着替えるに決まっている。
だけど、こういう場面ではメビウスがラッキーナに劣情を抱くはずだ。メビウスは中身が男だからだ。
──それにしても、着替えているときチラチラ見られる感覚には慣れないな。
案外見られている感覚はあるものだ。主に胸や尻とかを。男性時代、そういったことがなかったとも言い切れないが、ここまでマジマジ凝視されるとは思ってなかった。
「……。あまりヒトの裸体を見ないほうが良いぞ? 相手がどう思うか分からないからな」
というわけで、メビウスはラッキーナを見上げ顔を見て、一応指摘しておいた。それが優しさだからである。しかし、その優しさを受け取ったラッキーナは赤面して顔を伏せるのみだった。
「まあ……。減るものでもないが、いまは色々と厳しい世の中だからな──」
「バンデージさんっ!! このバトルスーツすごいですね!! 着やすいし耐久性もありそうだし! スクール水着みたいなのが嫌です──だけど!」
むっつりスケベなヒロイン大好き
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