27 おれらメビウスさんを崇敬してるんだからさ
「ま、メビウスさんがどっちを選ぼうと、その選択は尊重してやらんとな」
警察署長が現れたのを見て、モアとジョンはメビウスが如何にして少女になってしまったのか説明するのだった。
*
「──ちゃん。お姉ちゃん。起きて」
「……ああ」
最近はウトウトと眠ってしまうことは減っていたものの、きょうは加齢によるそれが起きてしまった。捕まっておいて眠りこけるなんて何様のつもりだ、と言われても仕方ない。
そんなわけでメビウスは目を覚ます。目の前には金髪のぐるぐるメガネの孫娘モアと、最近やたら会う気がするジョンがいた。
「悪いな。気がついていたら眠っていた。歳はとりたくないものだ」
「ははッ。メビウスさん、その見た目で年齢のこと言ったら煽りにしか聞こえませんよ?」
「見た目の問題ではないのだよ。肉体と魂が同化するのであれば、すくなくともそれは数ヶ月程度の時間が必要だ」
「まあ予想がつかないのが未来じゃん? おじいちゃんがお姉ちゃんに収まる可能性だってあるわけで」
「どうだろうな。さて、釈放されたのか? わしは」
「だから“わし”なんてシワシワ一人称ダメだって言ってるじゃん! 時代に合わせていこうよ!」
「理不尽な話だ……。さあ、帰ろうか」
一連の話が終わり、メビウスはある種当然の摂理として帰宅しようとしたときであった。
一応押収されていて、いまジョンが持っている携帯電話が鳴った。メッセージのようだ。
「クール・レイノルズ……。メビウスさん、浮気っすか?」
「手合わせの打ち合わせをしていたのだよ」
「だったらおれと喧嘩しましょうよ。おれも喧嘩好きっすもん」
そうやってメビウスとジョンが談笑している中、モアは顔芸のごとく口を開けていた。
「どうした? モア」
「え、なんでおじいちゃんが大統領の連絡先持ってるの?」
「そりゃ、教え子だからかのう」
「……自然な感じが良いよね」スマートフォンでメビウスを捉え、「じゃなくて! おじいちゃんはジョンさんや大統領の師匠だってこと?」
「そうだよーん。魔術のイロハは全部叩き込んでもらったな。おれらメビウスさんを崇敬してるんだからさ」
「やば……。軍人としてすげえのは知ってたけど、そんなに強かったんだ」
なんというか、尊敬の眼差しというよりは恐怖の感覚のほうが強そうだ。最近までジョンの正体にも気がつけなかったほど鈍いモアではあるが、強者へは一定の敬意を払うのが流儀らしい。
「それで? このおれジョンを手合わせ要員に選ばなかったわけは?」
「ああ。やはりヤツの口からしっかり訊きたいのだ」
「なにを?」
「反社会的勢力『スターリング工業』とのつながりの全容だ。あの企業もどきのNo.2として、ヤツはたしかに在籍していたはずだからな」
「へえ……。クールの野郎をぶっ潰すつもりですか?」
「ヤツが説明義務をしっかり果たせば、その危険性はあるまい」
蒼龍のメビウスの碧い目が、眠っていた覇気を取り戻した、とジョン・プレイヤーは確信した。
2点先制して気分が良いので更新です
いつも閲覧・ブックマーク・評価・いいね・感想をしてくださりありがとうございます。この小説は皆様のご厚意によって続いております!!




