23 私と友だちになってくれませんか?
白髪少女に成り果てたメビウスだが、射撃の腕前は相変わらずうまい。
銃がなくなったことを音と目で知った、最前立ち尽くしていた少女のボディーガードが男たちを取り押さえる。
「クソッ!! なんであんなガキがハンドガン持ってるんだよ!?」
疑問と憤怒が止まらないのであろう。だが気にする必要もない。メビウスは拳銃をコートの中にしまい、事情聴取のため警察を待とうとする。
だが、この姿のメビウスは自分が蒼龍のメビウスであることを証明する方法を持たない。身元不明の少女がいて、しかも拳銃を持っているとなれば、むしろ強盗よりも危険視される可能性すらある。どんな魔術を使うか分からない以上、警官の裁量で逮捕されてしまうかもしれないのだ。
「困ったなぁ……」
自分で蒔いた種とはいえ、困るものは困る。
そんな困り眉のメビウスの袖を掴む者が現れた。
「ぁ、あの……」
ずいぶん背丈が高いと感じた。たしかに自分自身の身長が縮んでいるということもあるが、それを加味しても170センチは越しているだろう。
髪色はくすんだ茶髪。ボブヘアのくせ毛。服こそ高級ブランドだが、同時に服に着られてしまっている。
「なんだ?」
「ぁ、やっぱりなんでもないです……」
「そうか」
「あ、いや、なんでもあるんです」
「なにがあるのだね?」
「お、お強いですねって」
「ああ、ありがとう」はにかんだ。
「あ、あとひとつお願いして良いですか?」
「なんだ?」
まずなにをお願いされたのか知りたいが、さほど気にせずメビウスは話を聞く。
「私と友だちになってくれませんか?」
断る理由も特段ないが、受ける理由もない。こういうとき、軍にいた若者たちならばどうしているだろうか、と考え、メビウスは返事した。
「もちろん。バンデージだ」
10センチ以上離れた少女に向けて手を差し出す。彼女はこの手の意味をすこし考えていたようだが、やがて両手でメビウスの右手を握った。彼女の手汗でメビウスの汗がべっとり付く頃、彼女は言う。
「ラッキーナ・ストライクです。よろしくお願いいたします」
ラッキーナは頭をペコリと下げた。
「ストライク……君、元王族か?」
「え、あ、そうです。私みたいな落ちこぼれが元王族なんて笑えますよね……」
「落ちこぼれだとは思わないなぁ」
「え、や、なんで?」
「ただすこし自信をなくしているだけに見える。子どもの頃からこうだったわけではないしなぁ」
メビウスは彼女を知っている。というか、いま思い出した。昔暮らしていた家の隣にストライク家があったのだ。あのときは陽気な少女だったと記憶しているが、なにかがあったらしい。
「ば、バンデージさん、わ、私のこと知ってるんですか?」
そう思われても仕方ない口振りなのは否めない。
しかしメビウスはうろたえることもなく、適当なことを言っておく。
「敬語はやめなさい。私だって敬語を使っていないだろう?」
「あ、え、あ、は……うん」
そうやって誤魔化したときだった。
ヒロイン格の登場で──ィ!!
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