1 おじいちゃん!! ついに性別変換剤ができたよ!!
なんと、1人称視点から3人称多元視点に切り替えようと思います!! 理由は東山が書きやすいからです!!
といっても、地の文での「わし」が「メビウス」に変わるだけなのでそこまで違和感はないかもしれないです。
慢性的な体調不良も治りつつあるので、これからどんどん話を進めていければ良いなぁと思っております。
「おお!! メビウスさんじゃないっすか!! お疲れっす!!」
ジョン・プレイヤーは気さくに……気さくすぎるほどの挨拶をしてきた。
きょうは特別な日だ。メビウスの退役日だからだ。祖国『ロスト・エンジェルス連邦共和国』の軍人として国家に尽くし続けてきたが、70歳を過ぎてしまった老兵は消え去ったほうが良い。後進に母国の未来を託すべきだ。
「ああ、お疲れ様。もう知っているのだろう? わしが退役することは」
「えーッ!? メビウスさん軍人辞めちゃうの!? まだまだメビウスさん闘えるって!!」
「知らなかったのか……。まあそのほうがオマエらしいよ。ジョン」
「クールの野郎にも許可取ったんすか? アイツこそ、泣き落とししてでもメビウスさんのこと止めそうだけど」
「ああ。散々泣き落としされた。だが老兵がのさばっていたらこの国は前へは進めない」
「マジっすか……。残念です」
ジョンとクール。ふたりはいまやロスト・エンジェルス最強の魔術師として名高い。ジョンは軍人の道を進み、クールに至ってはこの国の最高指導者に成り上がった。
そのふたりを育てたのは、メビウスだ。彼らが高校生のとき、膨大な才能を持っていることを知ったメビウスがふたりを徹底的に育成したのだ。
それが故、ジョンはすこし落ち込んでいるようだった。そしてそれはクールも同様だった。
「なに。今生の別れというわけではない。だから落ち込むな、ジョン」
「でも職人気質のヒトが退職すると一気に老けるっていうし、アルツハイマーになった恩師を見たくないっすよ……」
「……。そうだな。それだけが気がかりだ」
「ボケないでくださいよ? メビウスさん」
「オマエたちの顔を見ていればボケもしない」
「どういう意味っすか!!」
ジョンは笑い、なんとか涙を堪えているようだった。
「ところで、引退後はどうするおつもりなんですか?」
「そうだな……。気ままにロスト・エンジェルス一周旅行でもしてみるよ。考えてみれば、まだまだ行ったことのない街ばかりだしな」
「良い老後の過ごし方っすね! おれなんて老後の楽しみ女の子と大運動会することくらいしかないんすよ。EDになったらなんにも楽しみがなくなっちゃう」
「オマエもクールも女遊びが好きだからな。ま、ほどほどにしておけ」
それから数十分間くらい話し込み、ようやくメビウスはジョンから解放された。退役届けを出しに来ただけなのにずいぶんと時間がかかってしまった。だがまあ、彼らもメビウスのことを慕っているのであろう。それだけは確かだ。
「……。ただいま」
一方、家内に先立たれたメビウスの自宅は空虚そのものだ。遠征に出て行き数年単位で帰ってこなかったこともあるメビウスをずっと支えてくれた素晴らしい妻であったが、死んでしまった者は蘇らない。
子どもは長男と長女がいたものの、ふたりともメビウスのように軍人になってしまい戦地で死んでいった。
いまのメビウスに残されたのは、奇妙な研究に勤しむ孫娘だけだ。
「モア。いるのか?」
孫娘モアの部屋の前まで来てみたが、まるで反応がない。
昼夜逆転を起こして寝ているのだろうと部屋の前から離れようとした瞬間だった。
「おじいちゃん!! ついに性別変換剤ができたよ!!」
どうかしてるね、この作者。
いつも閲覧・ブックマーク・評価・いいね・感想をしてくださりありがとうございます。この小説は皆様のご厚意によって続いております!!