僕は繰り返される過去にチェックメイト!
僕は今を、あと何度繰り返すのだろう。
あと少し、もう少し……。
今度こそ、ヤツの顔を見る!
黒尽くめの男のフードに手を伸ばしたが、僕は突き飛ばされ、再び満月の浮かぶプールへと吸い込まれていった……。
× × ×
「お前知ってた? あの事件、本当は他殺だって」
「後から聞いたよ。満月の夜に、幽霊が出るんだろ? プールの底にはおふだが貼られてるらしい」
同窓会。酒が回り、彼女の話が持ち上がる。
あれは高3の体育祭の翌日だった。
彼女はプールで、遺体で発見された。
当時、事故による溺死と説明されたが、その死は不可解だった。
僕は幼馴染みの彼女の、ひまわりのような笑顔が好きだった。
死を受け入れられず、卒アルは今でも屋根裏にある。
来るんじゃなかった……。
泥酔した僕は、帰り道、自販機で水と間違えて買った缶コーヒーを口に運ぶ。
どこかの天才よ、タイムマシンでも造ってくれよ。
「あの日に戻って、彼女を救いたいよ……」
気付けば、僕は事故現場に辿り着いていた。
あの日と同じ満月が、僕を照らしている。
上ばかり見ていて足を滑らせた僕は、満月の浮かぶプールに落ちた。
× × ×
僕は今を、あと何度繰り返すのだろう。
もう一回だ!
僕は、あの日の彼女を救いにプールに飛び込んだ。
フードを深く被った男が彼女を追い詰める。
「やめろぉ!」
男は金属の棒を振りかざし、僕を突き飛ばす。
「同じ手にはのらねぇーよ!」
攻撃をかわし、僕はついにフードをめくり上げた。
「チェックメイト!」
えっ……、なんで……。
男は、何も悟れないほどポーカーフェイスの僕だった。
これは夢?
彼女は、僕が殺した……!?
あの日を思い出せない!
僕は今、僕を殺そうとしてる?
「うわぁあ!!」
僕は僕に殴りかかった。
全身に稲妻のような痛みが走った。
× × ×
「お前知ってた? あの事件、本当は他殺だって」
「後から聞いたよ。満月の夜に、幽霊が出るんだろ? プールの底にはおふだが貼られてるらしい」
同窓会。酒が回り、彼の話が持ち上がる。
あれは高3の体育祭の翌日だった。
彼はプールで、遺体で発見された。
当時、事故による溺死と説明されたが、その死は不可解だった。
彼とは、ランドセルを背負っていた頃からの仲。
一緒に夏祭りに行って、出店の射的で彼がとってくれた星座のえんぴつは、今も使えずに大切に持っている。
頭が良くて、量子力学を教えてもらったっけ。
「あの日に戻って、彼を救いたいよ……」
わたしは満月を見つめて、そう口にした。