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『第4回 下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞』

僕は繰り返される過去にチェックメイト!

作者: 佐藤そら

 僕は今を、あと何度繰り返すのだろう。

 

 あと少し、もう少し……。

 今度こそ、ヤツの顔を見る!

 

 黒尽くめの男のフードに手を伸ばしたが、僕は突き飛ばされ、再び満月の浮かぶプールへと吸い込まれていった……。

 

 

 ×  ×  ×

 

 

「お前知ってた? あの事件、本当は他殺だって」

 

「後から聞いたよ。満月の夜に、幽霊が出るんだろ? プールの底にはおふだが貼られてるらしい」

 

 同窓会。酒が回り、彼女の話が持ち上がる。

 

 

 あれは高3の体育祭の翌日だった。

 彼女はプールで、遺体で発見された。

 当時、事故による溺死と説明されたが、その死は不可解だった。

 

 僕は幼馴染みの彼女の、ひまわりのような笑顔が好きだった。

 死を受け入れられず、卒アルは今でも屋根裏にある。

 

 

 来るんじゃなかった……。

 泥酔した僕は、帰り道、自販機で水と間違えて買った缶コーヒーを口に運ぶ。

 どこかの天才よ、タイムマシンでも造ってくれよ。

 

「あの日に戻って、彼女を救いたいよ……」

 

 

 気付けば、僕は事故現場に辿り着いていた。

 あの日と同じ満月が、僕を照らしている。

 上ばかり見ていて足を滑らせた僕は、満月の浮かぶプールに落ちた。

 

 

 ×  ×  ×

 

 

 僕は今を、あと何度繰り返すのだろう。

 

 もう一回だ!

 

 僕は、あの日の彼女を救いにプールに飛び込んだ。

 

 

 フードを深く被った男が彼女を追い詰める。

 

「やめろぉ!」

 

 男は金属の棒を振りかざし、僕を突き飛ばす。

 

「同じ手にはのらねぇーよ!」

 

 攻撃をかわし、僕はついにフードをめくり上げた。

 

「チェックメイト!」

 

 

 えっ……、なんで……。

 

 

 男は、何も悟れないほどポーカーフェイスの僕だった。

 

 

 これは夢?

 

 彼女は、僕が殺した……!?

 

 あの日を思い出せない!

 

 僕は今、僕を殺そうとしてる?

 

「うわぁあ!!」

 

 僕は僕に殴りかかった。

 全身に稲妻のような痛みが走った。

 

 

 ×  ×  ×  

 

 

「お前知ってた? あの事件、本当は他殺だって」

 

「後から聞いたよ。満月の夜に、幽霊が出るんだろ? プールの底にはおふだが貼られてるらしい」

 

 同窓会。酒が回り、彼の話が持ち上がる。

 

 

 あれは高3の体育祭の翌日だった。

 彼はプールで、遺体で発見された。

 当時、事故による溺死と説明されたが、その死は不可解だった。

 

 彼とは、ランドセルを背負っていた頃からの仲。

 一緒に夏祭りに行って、出店の射的で彼がとってくれた星座のえんぴつは、今も使えずに大切に持っている。

 頭が良くて、量子力学を教えてもらったっけ。

 

「あの日に戻って、彼を救いたいよ……」

 

 わたしは満月を見つめて、そう口にした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] タイムリープに注目していたら、タイトル全部乗せにまったく気づきませんでした。 最後の「量子力学」が出てきたところで、もしやと読み返して気づいた次第です。 タイムリープも二重の仕掛けがあって…
[良い点] おお、全部盛りですね! 全部盛りが自然で凄いなあと思いながら読ませていただきました。 読ませていただき、ありがとうございました!
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