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御嬢瑞希の死

 

 御嬢瑞希は夜遅く病院へと足を運んでいた、とある病室の前で立ち止まり扉を開ける。ベッドには久遠が来るのが分かっていたかのように起きていて、窓から夜空を眺めていた。


「瑞希ちゃん約束通り来てくれたんだぁ」


 久遠は御嬢瑞希の存在に気付いて微笑みかけ答えた。


「やはり今回の件は久遠様の自作自演でしたか」


「うん、そうだね。瑞希ちゃんの言う通り全部私が企てた事だよ、でもね実は私一人だけじゃなくて」


「久遠様の他にもいるんですよね、しかもそれは私がよく知る人物」


「おぉそこまで理解してるんだ流石瑞希ちゃん」


 久遠は小さく手を叩いて褒める。すると病室の扉が開かれ新たな人物が入ってくると久遠の近くにまで行き御嬢瑞希が声を出す。


「天神舞亜」


「可愛い顔が台無しになるからそんな睨まないでよ」


 病室に入って天神舞亜は御嬢瑞希に言い放つ。そして天神舞亜の隣にはフードの人物が一緒に入ってくる。


「ああ、この子は別に無視してくれていいよ」


「瑞希ちゃんはなんで私が誘拐まがいの自作自演を起こしたか分かる」


 久遠に言われ御嬢瑞希はこの病室に来るまでずっとその事を考えていた。


「やはり彰人様に心配されたいですか」


「うん瑞希ちゃんの言う通りだよ、瑞希ちゃんはもう分かると思うけど私はねにいにの事を昔から好きだった家族の好きじゃなくてね男の子としてでもね最近のにいには私の事なんてほっておいて他の子ばっかりと知り合うようになって。瑞希ちゃんにも話しておくけど昔死んだお姉ちゃんがにいにと付き合い始めちゃったの。私はお姉ちゃんの事も家族として好きだったんだよ、でも私はお姉ちゃんがにいにと付き合う事だけは許せなかった。だってお姉ちゃんだけにいにの事を独り占めするなんてずるい、ずるい、ずるい、そう思って私がお姉ちゃんの事を事故と見せかけて殺したの」


 久遠が笑顔でいきなり衝撃の事を言葉にして冷静だった御嬢瑞希は少し久遠から距離を置く。


「瑞希ちゃんもにいにの事で色々と動き回っていたようだけど無駄だよ、私には全部分かってるんだから」


「それはどういう」


 御嬢瑞希が久遠に問いただそうとした時お腹に違和感を覚えた。いつの間にかお腹に果物ナイフが刺さっていた誰の仕業だと思い目の前の天神舞亜ではない事が分かる。


 先程まで天神舞亜の隣に立つフードの人物がいなくなっていた辺りを見回して後ろから私を抱きしめていた。


「瑞希ちゃん、ごめんね」


「その声はまさか」


 最後の力を振り絞って御嬢瑞希はフードの人物の被っていたフードを外す綺麗な長い銀髪は血で染まり、櫻木姫華のその目には涙を流していた。御嬢瑞希はそのまま倒れ込み


「結局、私は彰人様を守る事もできず死んでしまうのですね」


「ごめんね瑞希ちゃん、にいにを守る人間は私一人でいいんだよ」


 久遠の言葉と共に御嬢瑞希は微笑むと口を開いて話始める。


「久遠様は何か勘違いされてませんか」


「勘違い?」


「私が本当に一人でこの病室にのこのこやってきたと思っているんですか」


「だから二人にはずっと外と病院内を見張っててもらっていたの、けど瑞希ちゃん以外この病室に近付く者はいなかったみたいだけど」


 久遠は御嬢瑞希から目線を逸らして天神舞亜と櫻木姫華の二人を交互に見ると二人とも頷く。


「久遠」


 病室の扉が開かれ突然開かれ入ってきた人物にその場にいた久遠、天神舞亜、櫻木姫華が驚く。


「にいに!? なんでここにいるの? 電話があって急に家に帰らなくちゃいけなくなったんじゃなかった」


「それは私が電話で久遠様のいる前で嘘をついて帰る振りをしてもらっただけです。彰人様にはずっと隣の病室に隠れていただいていました」


「にいに、聞いてこれは違うの」


「さっきまで隣の病室にいたから久遠の話全部聞こえてきたよ。久遠本当に今回の誘拐の件お前の自作自演だったのか、それにお前が冬華姉さんを事故に見せかけて殺したのか」


「にいに、違うの、私はにいにの為を思って」


 久遠は彰人に近付こうとするが、彰人は久遠から距離を取る。


「にいに?」


 久遠は涙を流して微笑みながら彰人を見るが、彰人は久遠を見ようともせずに、御嬢瑞希を抱える。


「彰人様?」


 御嬢瑞希はもう瀕死の状態で助かりそうにない。


「悪かった、俺がもうちょっと早くこの病室に来てれば、君は助かったのに」


 彰人は涙を流して御嬢瑞希に言う。


「いえ、彰人様のせいではありません、ですから彰人様自分を責めないでください。私は死ぬことよりも彰人様が泣いて後悔しているのを見る方が辛いですから」


 御嬢瑞希は力尽きそうな手で彰人の頬に流れていた涙を拭って微笑んだ顔で言った瞬間に手が床につき動かなくなる。


「違う、違う、違う、違う、違うこんなのは違う、こんなの私が望んでいる世界じゃない」


「久遠?」


「ははは、そうだあの時みたいにまたあいつに頼ればいい。そして邪魔な奴を全員消したら正真正銘にいには私だけの物になる」


 久遠はいきなり笑い出すと立ち上がり病室の窓に近付き窓の扉を開けるとそこから飛び降りようとする。だが天神舞亜と櫻木姫華の二人が飛び降りようとした久遠を止めて病室の床に体を押さえる。


「離せ、離せ、離せぇ」


 久遠は大声を出して暴れるが二人から逃れる事も出来ず、騒ぎを聞いてやってきた数人の看護師と医者のおかげで暴れていた久遠を麻酔で眠らせる。


 そしてすぐに医者が呼んだ警察官も複数人来て天神舞亜、櫻木姫華の二人は久遠のように暴れるなんて事はなく久遠、天神舞亜、櫻木姫華の三人は連行される。御嬢瑞希の事があり俺は数日後に事情聴取を受けるよう言われ今回は見逃せてもらえた。

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