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影華さんは彰人の作る焼飯が好き

 

「はぁはぁはぁ」


 息を切らしながら便箋に書かれていた目的地に到着するがそこには誰もいない代わりに古めかしい公衆電話があった。


 そしていきなり公衆電話が鳴り響く小さい頃映画かドラマで観たことあるがまさか自分が体験する事になるとは鳴り響いていた公衆電話の受話器を取り耳に当てる。


「もしもし?」


 数秒間相手から何の反応もなかったので俺から話し始めた。


「そこの公衆電話にいるって事は便箋の内容は把握しているな」


「ああ、それで一つだけ聞くが本当に久遠を誘拐したのか」


 声を変えているのか男か女かも分からない声が受話器から聞こえてくる。そうホテルが俺が受け取った便箋には久遠を誘拐した時間までにこの公衆電話まで来るようにと書かれていたそしてホテルを飛び出してこの公衆電話まで来たのだ。


「公衆電話の下に写真があるそれを見れば分かる。」


 言われて公衆電話の下を確認する確かに写真があった確認すると身体にロープを巻かれて眠る久遠の姿が写っていた。


「久遠を誘拐するなんて何が目的だ俺の家には身代金を用意する程の金なんかないぞ」


「金はなんか要らない私の目的は一つだけだそれさえ果たしてくれればこの子は解放する」


「その目的ってのは」


「それを果たすのは今日ではないまたすぐに連絡する」


「おい待て」


 相手は俺の話も聞かずに通話を切った、受話器を公衆電話に戻す。久遠を誘拐したのは分かったが何の目的で久遠を誘拐したまでは分からなかった、俺は一旦ホテルまで戻る。


「え……まだ戻ってきてないんですか」


 ホテルのロビーまで戻ってきた俺はまだ御嬢瑞希が戻って来てないことを偶然出会ったホテルの支配人に伝えられた。


「そうですか」


「一体どちらに?」


「少し家に戻ります」


「では御嬢様が戻ってきたらそう伝えておきます」


 ホテルのロビーから出て外に出る。家までは少し距離があるが別に歩いて帰れない程じゃないのでこのまま歩いて家まで向かう。


 家の前に着いたが電気は明かりはついていない、玄関の鍵は閉まっていなく開いていた。当然である父さんは今一ヶ月の主張で母さんも父さんが心配で付いていっている。そして先程久遠を誘拐したという犯人の電話が正しければ今この家には俺一人しかいないはず。


 だが電気の明かりはついていないのにリビングから少し光が見えた。急いでリビングの明かりをつけて先程光が見えた所に行くと見覚えのある長い黒髪ポニーテールの後ろ姿の女性が冷蔵庫を開けて漁っていた。


「影華さん……?」


 俺が声をかけるとびっくりして立ち上がりこちらに振り返ってきたと思ったら足蹴りを繰り出してきた。油断してその足蹴りをくらい俺はそのまま倒れ込む。


「あふぃとごふぇん」


 影華さんは食べ物でも口に含んでいるのかもぐもぐと口を動かしながら謝ってきた。


「それで影華さんがなんで家の冷蔵庫漁ってたんですか」


 影華さんをリビングの椅子に座らせ俺は影華さんの正面の椅子に座り影華さんに問う。


「いやぁ勝手に家に入ったんじゃないよ!? お腹が減ってこの辺歩いてたら彰人の家が近くだったから少し食べ物でも恵んでもらおうと来ただけで。その時は妹さんがいて家に招き入れてもらったんだよ……けど買い物に行くって言ったきり全然帰って来ないからさ、悪いとは思ったけど本当にお腹が空いたから冷蔵庫の中の食べ物少し味見してただけで」


 影華さんは早口で釈明する。


「少し味見ですか……」


 机には影華さんが食べていたゴミが乗せられていたそれは本当に味見程度なのか普通に人が食べる三食分の量であった。


「うっ……ごめんなさい」


 影華さんは頭を下げ謝ってくる。


「いや別に責めてる訳じゃないですけど、それで影華さん一つ聞きたいんですけど久遠が買い物に行った時間とか覚えてます……?」


「お昼前に行ったのは覚えてるけど正確な時間は」


 俺がホテルで便箋を受け取ったのは朝なので久遠を誘拐したのはその後という事になる。


「彰人大丈夫……?顔色悪いみたいだけど」


「あ……いやこんな時間まで帰って来ないことが少し心配ってだけで」


「確かにそうだよね幾ら買い物っていってもこんな遅くまで帰ってこないのは心配しちゃうよね」


 影華さんも久遠が帰って来ない事を心配してくれている。


「えっと影華さんまだお腹空いてますか?」


「え……う、うんまだ食べれるけど」


「それじゃあ冷蔵庫に残ってる食材でちょっと作るんで少し待っててください」


 俺は冷蔵庫の中身を見て料理を始める。


「お待たせしました」


「うわぁ……!!彰人の焼飯だ」


「影華さん俺が作る焼飯好きだって言ってくれたので久しぶりに作ってみました」


「うん彰人が作る焼飯好き、でもよく覚えてたね」


「そりゃ毎回師範と影華さんの母親が家にいない時は作っていけって言われましたからね」


 影華さんは机に置かれた山盛りに乗せられた焼飯の皿をレンゲで掬い食べる。


「ふぅぅお腹一杯」


 お腹をぽんぽんとゆっくりと叩く影華さんはそのまま机に顔を伏せる。俺は洗い物を済ませてから影華さんの方に戻ると影華さんはいつの間にか寝始めていた。起こすのも悪いので影華さんを抱いて俺の部屋まで運び俺のベッドに寝かせる。そして家の電話が鳴り響くのが聞こえてきた。

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