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天神舞亜は御嬢瑞希の頼みを聞く

 

「それでまんまと逃げられた訳ですか?」


 天神組の客間の座布団に正座で座る櫻木姫華は同じく正座で向かい合わせに座っていた天神舞亜に目線を合わせる。


「お嬢さん、櫻木グループのご令嬢だからって」


 櫻木姫華に物申そうとしていた組の人間を天神舞亜が止めに入る。


「ここはいいから、早く彰人君達を見つけて?」


 少し戸惑いながらも客間から出て天神舞亜に言われた通り動く。


「しかも私に黙っていきなり城田さんを拉致するなんて何を考えていたんですか」


 天神舞亜は櫻木姫華に責められるがずっと押し黙ったままだ。


「まぁいいです。取り敢えず今は城田さんを行方を追うのが先決ですからね」


 櫻木姫華は座布団から立ち上がり客間の襖を開けて出ていく。


「……クソがぁぁぁぁ!!」


 天神舞亜は櫻木姫華が出ていってから数分後机の上を何度も蹴る。


「クソ、クソ、クソ、クソ、クソがぁぁぁぁ。何も知らないくせに知った風な口利きやがって」


「お嬢……」


「はぁ……はぁ……はぁ……何?」


 先程出ていった組人間が戻ってきた、客間の机がボロボロになっているのを見て驚く。


「えっと……逃げた兄ちゃんの行方が分かりやした」


「そう、何処?」


「御嬢財閥が所持している別荘に入って行くのを追っていた組の若けぇのが目撃したそうです」


 天神舞亜は急ぎクローゼットからレーシングジャケットを取り出し着るとヘルメットを頭に被って外に停めてある自分の大型自動二輪車に乗って組の外の門を開け大型自動二輪車を運転して組の門を通り抜け車道を飛ばす。


 大型自動二輪車を停めて海の近くに建つ御嬢財閥が所持していた別荘の近くに黒塗りの車が停めてある。


「お嬢お疲れ様です」


 黒塗りの車の運転手席から組の人間が降りて天神舞亜に頭を下げる。


「それで本当に二人はこの別荘に入って行ったの」


「へい、間違いないです」


「そう、それじゃあもう組に戻っていいから」


「お嬢一人で平気ですかい?」


「平気、平気、あとその銃貸して?」


 天神舞亜は銃を受け取り別荘の扉に近付いていく、別荘の電気は全て消されており、人が居る形跡が全くと言っていい程ない。天神舞亜は扉をノックする。


「まぁ出る訳はないよね」


 天神舞亜は脚に力を込めて思いっきり扉を蹴破る。別荘に入って辺りを見回して人の気配が無い事に気付く。組の人間が自分に嘘を吐く訳がないので別荘を歩き回るが本当に誰もいない。


 別荘を歩き回って見つかったのは置き手紙が一枚のみだ、しかもそれは天神舞亜へと書き綴られている。天神舞亜は置き手紙を手に取り中身を確認する。手紙の内容を読み、自分がこの別荘におびき寄せられた事に気付いた天神舞亜は手紙をビリビリに破いた。そしてずっとポケットに入れていたスマミフォンが揺れる。通話相手は非通知だった。


「もしもし」


「どうも御嬢瑞希と申す者ですが」


「まさかそっちから連絡を貰えるとは彰人君は?」


「サラに頼んで私でも探せない場所に連れて行ってもらいました」


 まさかあちら本人から電話がかかってくるとは思わず天神舞亜も少し驚いた。


「そう、それで私をここにおびき寄せて一体どういうつもり?」


「あなたに頼みたい事があります」


「自分が何を言ってるのか分かってるの」


「ええ分かっております」


「因みに私があなたの頼みを聞いた後のメリットは?」


 彰人に姉を事故に見せかけ殺した事を暴露した天神舞亜は既に彰人には嫌われていると自分自身で分かっていた。なので彰人を拉致して監禁するのが天神舞亜に残された最後の希望だったが御嬢瑞希におびき寄せられてしまった。


「メリットは……」


 御嬢瑞希は一瞬押し黙る。天神舞亜にとっては御嬢瑞希と手を組むなどデメリットしかない、しかし内容次第で天神舞亜は御嬢瑞希の頼みを聞くつもりであった。


「あなたが過去に彰人様の姉を事故死して殺した罪を帳消しにしてあげます」


「そんなので私が頷くと思ってる……? それにあれを実行したのは私じゃないし、犯人はもう捕まってる実刑を食らってるから意味がないよ」


「彰人様に会わせます」


「組の力を使って一生かかってでも見つけるからそんなのもね。私からの提案は彰人君から手を引いて会わないのが条件」


 御嬢瑞希が黙る事数秒。


「あなたの条件をのみます」


 御嬢瑞希から返事が返ってきた。正直天神舞亜も御嬢瑞希がこの条件をのむか怪しいと感じていたが電話をかけて頼みたい事があるなんて言ってくる時点で天神舞亜の方が立場が上だった。


「それで私と頼みたい事って?」


「櫻木姫華に会わせていただきたいのと櫻木グループと御嬢財閥が合併するのを阻止してほしいだけです」


「いいよ、それじゃあ時間と場所を教えてそこに櫻木姫華を連れていく。それと合併を阻止するんだから何してもいい訳よね」


「はい手段は問わなくていいです。時間は明日の正午に私と櫻木姫華が初めて会った場所でと彼女にそう伝えてください」


 そして御嬢瑞希は先に電話を切る。別荘から出て停めていた大型自動二輪車に乗ると天神舞亜はスマミフォンに登録していた櫻木姫華の連絡先をスライドする。数回のコール音の後に声が聞こえてくる。


「もしもし城田さんを見つけましたか?」


「いや御嬢瑞希に別荘におびき寄せられて彰人君は見つかってない。今さっき御嬢瑞希から連絡があって彰人君は御嬢瑞希と一緒にいるみたい、それで彰人君と解放する為の条件があなたが御嬢瑞希と会うことだって」


「私が? 会うって言っても場所は?」


「明日の正午にあなたと櫻木姫華が初めて会った場所に彰人君を連れて来るって」


「私と御嬢瑞希が初めて会った場所……」


 知っているか分からないが櫻木姫華はすぐに電話を切った。これで御嬢瑞希の頼み事を一つ聞いた事になる残るは御嬢財閥と櫻木グループの合併を阻止するのみだ。


「もしもし私だけど、誘拐して欲しい人間がいるの」


 天神舞亜は昔の知り合いに電話をかける最近会っていなかったがやんちゃを共にしていた。やけに周りが騒がしいが引き受けてくれると言ってくれた。


「明日は私もそこに行って手伝うから、うんお金は弾むそれじゃあよろしく」


 天神舞亜は電話を切りヘルメットを被って大型自動二輪車を運転して組へと帰宅する。

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