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天神舞亜にキスされる

 

「ん……ここは?」


 目が覚めるとふかふかの布団で寝ていた見覚えなんて無いはずの天井だが部屋には嗅いだ事のある女性物の香水の匂いが漂っている。


 布団から起き上がり辺りを見回すが俺以外部屋には誰もいない。するといきなり部屋の襖が開く。


「起きたんだね彰人君」


「舞亜さん」


 襖を開けて入ってきたのは天神舞亜。舞亜さんはお盆を持って俺が寝ている布団に近づいてくる。


「ごめんねーこんな強引な手段とっちゃってこれお詫びと言ってはなんだけど海外から取り寄せた最高級の牛肉焼いてきたから一緒に食べよう」


 舞亜さんは俺が寝ていた布団を退かしてちゃぶ台を部屋にあったちゃぶ台を運んでくる。状況が飲み込めない俺だがひとまず舞亜さんと一緒に舞亜さんが持ってきた牛肉ステーキを食べる事になる。


「えっと舞亜さん」


「彰人君さぁ」


「はい……なんですか?」


 舞亜さんに事情を聞こうとしたが舞亜さんに名前を呼ばれ聞き返す。すると舞亜さんはプレートに乗って今もジュージュー言っている牛肉ステーキをテーブルナイフで上から突き刺す。


「最近彰人君の周りで気になった事とか起きてない?」


 舞亜さんの表情は相も変わらず微笑んでいた、だがその表情とは別の雰囲気を舞亜さんから感じる。


「いや別になんともないですよ」


「……そっかそっか。ほら彰人君も食べて冷めちゃったら美味しくなくなるからさ」


 舞亜さんに勧められるままテーブルナイフでステーキを切りテーブルフォークで切ったステーキに突き通し口に運ぶステーキは今までに食べた事がないくらいに柔らかかった。


「お粗末さま」


 舞亜さんはステーキを食べ終えると手を合わせる。すると部屋の襖が開き長身で黒髪サングラスのお兄さんが入ってきた


「お嬢お客さんが参りました」


「ん……はいはい、それじゃあ彰人君また来るから待っててね」


 舞亜さんはそのままお兄さんに付いていき部屋を出ていく襖を開けて出て行こうとするが、部屋の外にはあのお兄さんに似た人が三、四人待機している。


「お待ちくださいお嬢から外には出さないよう言われております」


 そのまま部屋に戻される。この部屋で起きる前までは翔也の部屋にいたがここは翔也の部屋所か翔也の家でさえない、部屋には窓があったのでそこから覗き込む池はあるし門は俺の家の二個分位あるしリムジンも複数台止まっていた。すると池付近に視線を送る舞亜さんが誰かと話している。見覚えがある顔だった。


「あれは確か櫻木奏多?」


 なんで櫻木奏多が舞亜さんと話しているか分からないが揉めているようだ。櫻木奏多は急に舞亜さんの胸ぐらを掴みにかかる舞亜さんは胸ぐらを掴まれているにも関わらず落ち着いている。


「親父!? どうしてここへ」


「娘がお客人を連れてきたと下の連中から聞いてなぁ」


「親父すみません、お嬢からは部屋には誰も入れないように言われてまして」


 部屋の前が少し騒がしくなっている。先程部屋の外で話した人の他に少し渋い声の男性が部屋の外で話しているみたいだ。襖が開くと白髪に黒スーツを着こなす男性が部屋へと入ってくる。


「おう兄ちゃんか、娘のお気に入りってのは」


「娘? お気に入り?」


「ガタイはそこそこいいねぇ、面もそこいらにいるチンピラとは違って死線をくぐり抜けてきたって感じるねぇ」


「あの……?」


「そんな畏まるなって」


 男性はバシバシと背中を叩いてくる。初対面にも関わらず人の体を触ってきたりしてこの人は一体何者だ?


「おっと自己紹介してなかったなぁ、俺ぁ天神組十三代目の組長やってる天神龍神(てんしりゅうしん)ってもんだ。以後よろしく」


「お父さんなにやってんの!?」


「おお……!! まーじゃねぇか、いやぁちょっと挨拶に」


「いいから出てってほら早く」


「おいおいそんな急かすなって、そんじゃ兄ちゃんまたなぁ」


 舞亜さんに背中を押されるまま白髪の男性は部屋から出ていく。


「全く……彰人君何もされなかった?」


「まぁ体を触られた程度で他には何も」


「あんなでも私のお父さんだから許してやってね」


「それはいいんですけど、舞亜さんずっと聞きたかったんですがここって」


「ここは私の家彰人君は来るの初めてだったかな?」


 やはりというか舞亜さんの家だった、まぁあんな堂々と門の横に天神組の看板が立てかけられいるので気づかない方が鈍いか。


「もしかして私の家がヤクザって知って彰人君引いてる?」


「まさか引いたりしませんよ」


「彰人君は優しいね」


 舞亜さんに頭を撫でられる。けど俺はもう一つ舞亜さんから聞かなければいけない事がある。


「あの舞亜さん」


「んー? 何かな」


 舞亜さんはそのまま俺に抱きついて二人一緒に倒れてしまう。


「その俺はなんで舞亜さんの家にいるんですか?」


「彰人君……その質問は禁止だよ」


「な……なんでですか……んむぅ!?」


 次の瞬間舞亜さんに無理矢理キスされる。舞亜さんは油断していた俺の口に舌を絡ませてくる。


「ま……まぃあひゃん」


 キスは数分か数十分なのか時間を忘れる程続いて舞亜さんの方から離れる。


「舞亜さんなんで急にキスなんか」


「あはは彰人君まだ気付かないの? 鈍いにも程があるよ……」


「えっと……」


「私はね彰人君の事がずっと好きだったんだよ。……なのに彰人君は私の事なんて気にも留めずに他の女の子と楽しそうにしてるよね」


「いやそれは」


 舞亜さんに否定しようとしたが舞亜さんは聞き入れずに再度強引にキスしてくる。


「彰人君に一つだけ教えてあげる。冬華を殺したのは私だよ」


 キスの途中舞亜さんから衝撃の一言が呟かれた。


「は……? 一体どういう」


「冬華が邪魔だったから殺したの、まぁ正確に言ったら組の一人に命じて事故に見せかけて殺したんだけどね。冬華からは彰人君の話ばっかり聞いてたから私ね冬華の事羨ましいと思ったの、だって私は一人っ子なのに冬華には弟と妹もいるんだよ。まぁそれだけなら私も冬華を殺したりしないけど……冬華は一番私が許せない行動を取ったのそれが」


「彰人君と付き合い出した事だった」


 舞亜さんが言い終えると同時に突然背後から雷が鳴り響く。さっきまでは普通の夜空だったのに完全に曇り空になり強い雨まで降り始めた。


「そんな理由で姉さんを」


「彰人君には悪いけど冬華を殺した事に私は悔いなんてないよ」


 舞亜さんは俺の体に馬乗りになり俺の腹をなぞる。


「最近ね彰人君の周りでうろちょろしてる御嬢瑞希が邪魔になってね冬華と同じ末路を辿らせようかなって考えてるんだけど彰人君はどうかな」


「止めてください」


「大丈夫、大丈夫。流石の私でも御嬢財閥に喧嘩を売るほどバカじゃないから。だからね共闘してくれる子を探してたんだけど、まさかあっちから声をかけてくるとは思ってなかったな」


「まさかそれって櫻木奏多とか」


「どうだろうね」


「お嬢!! お嬢ー!!」


 襖が開き目に傷がある強面のお兄さんが慌てて部屋に駆け込んでくる。


「何? 見たら分かるでしょ今いい所だったのに」


「お嬢それ所じゃねぇです。今金髪の軍服女が門を蹴破って組の敷居を跨いで組の連中を蹴散らしてこっちに向かってきてます」


「金髪の軍服女? ああそう言う事ね」


 舞亜さんは俺の体から離れるとクローゼットから黒の革ジャンを取り出し羽織る。


「彰人君はこのまま待ってればいいからね」


 舞亜さんは俺の頭を撫でると襖を閉め部屋から出ていく。


「おっと兄ちゃん逃げるなよ、お嬢に言われただろ待ってろって」


 部屋に残っていた強面のお兄さんに逃げようとした所を止められる。舞亜さんが出てって数十分部屋の襖が飛んできた俺と強面のお兄さんはギリギリで避けるが襖は部屋の奥の壁にしかもそこには人も一緒に倒れていた。あの人は確か。


「ふぅぅ私も前回までとは違うよ」


 そして舞亜さんが息を吐いて襖が無くなった部屋へと入ってくる。襖の方に倒れていた金髪の軍服女は何事も無かったように起き上がり軍服を叩く。


「よくもまぁここまで派手に家を壊せるなぁ……あん?お前、そうだお前だお前。やっと見つけたぞお嬢様が探してんださっさとここから出てくぞ」


「は……?うわっと!?」


 俺の腕を引っ張って部屋の窓を破ってそこから真っ逆さまに落ちるが金髪の軍服女にお姫様抱っこされて近くの庭にあった大木の枝に飛び乗る。舞亜さんは破った窓から俺達の方を凝視している。


「お嬢危険です無茶しないでくだせぇ」


 舞亜さんは窓から大木の枝に飛び乗って来ようとしたが強面のお兄さんに引き止められる。


「そんじゃまたな」


 俺はそのまま金髪の軍服女にお姫様抱っこをされたまま舞亜さんから逃げる事ができた。


「あの女……潰す」


「お嬢、すげぇおっかない形相ですぜぇ」


「お嬢? うわぁぁぁぁぁぁ!!」


「お嬢今若けぇ奴の悲鳴が聞こえたような」


「そんな事気にしなくていい、それよりも今すぐ櫻木姫華に電話して組に来るよう伝えて」


 今まさに天神舞亜は人を一人窓から突き落としたが下は天神組が飼ってる錦鯉の池だった為命に関わる程ではなかった。

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