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御嬢瑞希と逃げる

 

「にいにおかえり」


「ただいま久遠……ってそうじゃなくて」


 リビングから久遠を遠ざけキッチンの奥に行く。


「なんで御嬢瑞希がいるんだよ!?」


「さぁ? にいにが帰ってくる三十分位前に急に来たんだよ話しても瑞希ちゃん私には全然訳を話してくれないから、にいにが帰ってきたら話すって言うから待ってたんだよ」


「そうかまぁじゃあ一応話してみるか」


 久遠と共に御嬢瑞希の所に戻り隣同士で椅子に座る。


「久遠から聞いたけど急に来るなんて何かあったの」


 御嬢瑞希に急に来た訳を聞く。


「えっと実はですね彰人様にお願いがありまして」


 御嬢瑞希はいつもより元気がなく小声で呟いている。


「俺にお願い? まぁできる範囲なら叶えてあげられると思うよ」


「それを聞けて安心しました」


 御嬢瑞希は急に椅子から立ち上がる。その時家の呼び鈴の音が響いてきた。


「私出て来るよ」


 久遠がリビングから出ていくと御嬢瑞希もその後に続いてリビングから出る。


「ちょっ急に何!?」


 久遠が玄関で黒服の男に手首を掴まれている。見覚えがある黒服の男、確か御嬢瑞希のボディーガードの一人だった気がする。


「お嬢様はどこだ」


 いきなり久遠の手首を掴んでいる黒服の男を押しのけ軍服姿の女性がブーツを履いたまま土足で玄関に上がってくる。階段の隙間から御嬢瑞希が覗き込んできている。


「お嬢様なんて人は知らないですね。どこかの家と間違っているんじゃないですか」


「しらばっくれるな、この家に入っていくのを見たと情報をリークした者がいるんだ」


 軍服姿の女性がブーツで蹴り技を繰り出すので避ける。


「だからにいにと私も知らないって言ってるでしょ。これ以上暴れるって言うなら警察に連絡しますけど」


 俺じゃなく久遠が黒服の男に掴まれていた手首を引いて力ずくで抜け出し軍服の女性の前に出ると言い返す。軍服の女性は久遠を前にしてあの強気な態度は無くなる。


「我々はお嬢様のお父上から連れ戻すよう仰せつかっている。だから匿っている可能性も捨てきれないので家をくまなく探させてもらう」


「それで信じてもらえるならいいですよ、ねっにいにもそれでいいよね」


「それではお前は上を私はリビングと風呂場を調べる」


 軍服の女性の指示で黒服の男は階段を上って二階に行く。


「にいに私があの人を見張っておくから瑞希ちゃん連れて逃げて」


 久遠が耳打ちしてくると二階に行った黒服の男を追いかける。俺も軍服の女性に気付かれないよう二階に上がり俺の部屋で久遠が黒服の男を見張っている間に御嬢瑞希を探す。


「彰人様」


 久遠の部屋の扉を少し開けて御嬢瑞希が顔を出して声をかけてくる。久遠の部屋に入る


「今久遠が俺の部屋で黒服の男を見張ってくれてる」


「先程サラの声がしました彼女も来ていますね」


 サラとはさっきの軍服の女性の事だろうか。


「その人なら今リビングや風呂場を探してるから、だから見つからない今のうちにこの家から逃げよう」


 御嬢瑞希の腕を掴んで久遠の部屋から出る。二階から一階に降りる一応あの軍服の女性がいないのを確認して靴を履く。


「そのハイヒールじゃ歩きにくいですよお嬢様」


「サラ」


 どうやら俺と久遠の見込みが甘かった玄関から外に出たが軍服の女性が待ち構えていた。


「見逃してくれるつもりはないのね」


「すみませんお嬢様、お父上からのお達しです。お父上からお嬢様を連れ戻すよう指示されています。櫻木グループのご子息がリムジンの中でお待ちです」


 リムジンが止まっている。


「離してサラ、私はあんな所に戻るつもりなんてないからお父様にもそう伝えて」


 軍服の女性が御嬢瑞希の腕を掴み待たせてあったリムジンに連れ込もうとする。


「やぁ瑞希さん、急にパーティを抜け出すから心配したんだよ」


「あなたが私の心配? 冗談言わないでください。お父様とお母様に信用を得て婚約に発展させたのは褒めてあげます。ですがあなたの本当の狙いは御嬢財閥の権力でしょ。なら私はあなたと結婚するなんて考えたくありません」


 リムジンから出てきたのはあの時家に押しかけてきた男性櫻木奏多だった。御嬢瑞希は櫻木奏多が差し出した腕を払いのける。


「うん、瑞希さんの言った事は正しいよ僕は御嬢財閥の権力が欲しい。それともう一つ君自身を絶望という名の窮地に陥れ永遠に僕の物にする」


「遂に本性を表しましたね」


 先程まで優しい笑みを浮かべていた櫻木奏多の雰囲気が突然変わる。今も優しい笑みを浮かべたままだが


「瑞希さん君は覚えてないかもだけど、僕は昔君に傷つけられたんだよ」


「急に何の話ですか。あなたとは昔からの付き合いですが傷つけた事などありませんが?」


「はぁ……やっぱり覚えてないか。小学生の頃に僕は妹の姫華と一緒に御嬢財閥が主催するパーティに行かせて貰った事があってね、君に初めて会った時僕は君に一目惚れしたんだよ。そして君に告白した僕はいとも簡単に君に振られてしまった。瑞希さん君が初めてだったよ僕の告白を断る女子は、僕はその日君に振られて決めたんだ君を永遠に僕の物にすると……って、あれ瑞希さん!?」


「あのまま放置してよかったのかな……?」


「あんな人放って置いて正解です。サラの方もお父様達に言い訳してくれるでしょうし」


 櫻木奏多が過去を語っている間に俺と御嬢瑞希はその場から逃走する事に成功する。しかも逃走する前あの軍服の女性が自身の財布と履いていたブーツを御嬢瑞希に差し出してきたのだ。


「てか本当に追ってきてないよな」


 後ろを振り返るが追ってきてる様子はない。


「サラが本気で追うならもう既に捕まっていますよ、きっとあの子が私を思ってとった行動でしょうね。ここで止まっていてはまた追っ手が迫ってきます。彰人様これからどこへ向かいましょう」


「そうだな一応一人心当たりがあるが……匿ってくれるかどうか」


 持ってきたスマミフォンのメッセージアプリを起動してプロフィール画面をタッチして通話を繋げる。

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