格闘ゲーム日本大会予選
放課後翔也と久しぶりに駅前のゲームセンターに遊びに来ていた、いつもより騒がしいと思ったゲームセンター内は格闘ゲームの大会が開かれていた。
「おーい彰人、お前の分のエントリーも終わらせといたぞ」
ちょうどよく大会が始まる前だった為、翔也の提案で腕試しという事で大会出場する事になった。
「それではこれより格闘ゲーム日本大会の予選を始めたいと思います」
ゲームセンター内のマイクを通して男性の甲高い声がアナウンスされる。まさか格闘ゲームの日本大会予選だったとは思わず俺と翔也は困惑する。
「今日この予選で勝ち上がった二人の参加者がGW期間中に開かれる格闘ゲーム日本大会ジャパンファイティングチャンピオンシップの参加資格を得ることができます」
ゲームセンター内はの熱気が高まり一層盛上がる。
「それではまずトーナメント表を抽選します」
そしてゲームセンターにある大画面のテレビに名前が表示される。
トーナメント表に俺と翔也の名前と共に三十二人の名が表示されると動き出してトーナメントの抽選が始まる。抽選が始まったトーナメント表の名前が十六人に分けられ二つのトーナメント表が完成する。
「では今から一回戦を始めます。トーナメント表に表示された番号にお座りになってお待ちください」
「どうやら俺達はこの予選では当たらないらしいな彰人」
「だな、そっちで負けるなよ翔也」
「お前といくら対戦したと思ってる。こんな予選なんかで負けるかよ」
大画面テレビに映された俺と翔也の名を見つけると二人とも別のトーナメントで戦わずに済んだ、そして翔也と握手を交わし別れる。
「続いて二回戦を行います。トーナメント表ご覧下さい」
大画面テレビに二回戦のトーナメントがランダムに抽選させられ表示される。俺の名前はすぐに見つかった、だが翔也の名前は大画面テレビに表示されていない。
「それでは先程と同じように書かれた番号に座りそのままお待ちください」
書かれている番号のアーケードゲーム機の席に座る。すると観覧席に翔也の姿を見つける。どうやら翔也は一回戦で負けてしまったらしい。
だが翔也がそんな簡単に負ける訳がない、俺と対戦している翔也だ多少腕のある格闘ゲーム経験者でも負ける程翔也は弱くはない。その翔也が一回戦で負ける程の相手とは一体どれだけ強者なんだ。
俺は二回戦も難なく勝利して、準決勝まで少し時間があるのでゲームセンター内の自販機で缶のオレンジジュースを購入する。
「彰人」
「翔也」
缶をプルタブを開けオレンジジュースを飲んでいる途中翔也が声をかけてくる。
「やったなまさか二回戦も勝つなんて」
翔也とハイタッチする。
「てか翔也お前一回戦で負けたのか?」
「ああ運が悪くてな俺よりも強い女の子が相手で……そこの大画面テレビで試合のリプレイ放送してるらしいんだ彰人も見れば強いのが分かるって」
翔也と共にトーナメント表が抽選大画面テレビの所に行くと先程の二回戦のリプレイ放送がされている。
「おい彰人見ろって俺はこの子にやられたんだ」
翔也が叫ぶと今はトーナメントの休憩中にも関わらず同じアーケード格闘ゲームをプレイする女子を発見する。
制服は着てないが見た目からして俺と翔也と同い年位だろうか、それにしても翔也の言う通り中々の腕前だ。これなら翔也が負けたのもしっくりくる。
だがなんでギャルが格闘ゲームなんてやってるんだ?
長い煌びやかな金髪の髪に前髪を星のヘアピンで留めている。服装は黒いフリルのオフショルダーにピンクのミニスカートだ。指にはマニキュアを塗ってあって、俺は女子の見た目を見て思ってしまうザ・ギャルだと。
正直言って最初見た時ゲームセンターで格闘ゲームをするとは思えなかったのが訂正するこの子は強い。
「ザッコ……これじゃあ一回戦負けても納得だね」
女子と対戦していた小太りの男性が泣き喚きゲームセンターから出ていく、女子は腹を抱えて大笑いする。
「あはは、何あれいい大人が泣くなんて、バカみたい。あ~あ笑いすぎてお腹痛い」
手で流れてきた涙を拭く女子に周りにいた観客達は引いていた。
「えーそろそろ準決勝を始めたいと思うので休憩は終わりです」
ゲームセンター内からあの男性の甲高い声のアナウンスが届く。またあの大画面テレビの前に戻ると既にトーナメントの抽選が終わっている。
既に二回戦を勝ち上がった者達が席に座っていたので俺も書かれた番号に座る。準決勝はギリギリの勝負で最終戦で俺の方の必殺技が当たり勝利する。
やはりここまで勝ち上がってくるのは格闘ゲームの上級者レベルになってしまう、いくら翔也があの女子に勝っていたとしてもここで負けていただろう。
「さぁ残すは決勝戦です。決勝戦を勝ち上がったのはこちらの四人でございます。」
いきなりあの甲高い男性の声で舞台に立つトーナメントを勝ち上がった俺達が紹介される。
俺の左隣には先程の女子が立ち右隣には俺と同じトーナメントを勝ち上がったメガネでスーツ姿の男性が立つ。
「それでは決勝戦に移る前にこの格闘ゲーム日本大会ジャパンファイティングチャンピオンシップの特別ゲストbytuberの胡夢に登場してもらいましょう」
甲高い声で紹介すると俺達が立っていた舞台にある大画面テレビが切り替わり俺が好きな配信者bytuberの胡夢の映像が大画面テレビに映される。
「はーい皆さんご紹介に預かりましたbytuberの胡夢でーすどうぞよろしくー」
ゲームセンターにいる客全員に飛びっきりの笑顔を向ける。
「今回の日本大会で特別ゲストとして私もエントリーさせていただいてます。今日はその予選が行われるって聞いて各地のゲームセンターの大画面テレビに私の映像を映してもらってまーす。もしこの予選を勝ち上がって日本大会に進出した人は私と当たったりしても手加減してくださいね」
うるうると小芝居臭い台詞を言う胡夢にゲームセンターの男性陣は夢中である。
「ではでは皆さん、また日本大会でお会いしましょーバイくるみ」
最後はお決まりの挨拶を決めて映像は終了する。
「さぁこれが本当にラストバトル最後の一勝負です」
一足早くあの女子が相手に攻撃させる間も与えず勝利して俺とメガネスーツ姿の男性との決勝戦が始まる。お互いに一勝一敗この勝負に勝った方が勝者だ。
「そこだー!!」
俺がガードする間際必殺技のコンボを決めて叫ぶ。正直負けたと思ったが必殺技を食らっても体力ゲージがわずかに残っていた。俺が最後に連続攻撃のコンボを決めてYouWinという画面が表示される。
「……決まりました!! 決勝戦を制したのは城田彰人選手です」
「すげぇな彰人、本当に日本大会に進出か」
翔也が記念に貰った金メダルを眺めながら呟く。
俺はGW最終日に東京で開催される格闘ゲーム日本大会ジャパンファイティングチャンピオンシップに参加する事になってしまった。しかも東京までの交通費も全て大会運営が出してくれるらしい。
「どうしたんだ彰人? 嬉しくないのか」
「いや嬉しいちゃ嬉しいが、今父さんが一ヶ月出張に行ってて母さんも父さんが心配で付いて行ったんだよ。だから今家には俺と妹の久遠しかいなくてさ、この日本大会朝から夜まで続くらしいから、その日のうちに帰るのは無理だろう。だから流石に久遠一人残しておくのも心配でさ」
「だったら俺が面倒見ておこうか」
「いや翔也に任せるぐらいなら辞退するさ、日本大会で勝ち残れる程甘くはないしな」
「お前言い方ってもんがあるだろ」
翔也はムキになって反抗するが、俺は既にスマミフォンで駅前のゲームセンターに電話している。
「ちょっとあなた」
翔也と俺が振り返る。予選を勝ち上がったあのギャルの女子が俺と翔也の後ろにいた。
「さっきの決勝戦見てたよ。あなたtokiaよね?」
「なんだもしかして彰人の知り合いだったのか……?」
tokiaそれは俺がゲームセンターの格闘ゲームでよく愛用している名前である。
「半年前まで今日予選をしてた格闘ゲームのネットランキングで私と上位を争っていたtokia。対戦したことはなかったけど、ネットで逐一リプレイを見返してた。さっきの決勝戦のあなたの動きtokiaに酷似してた」
「大会でtokiaは全然見かけないから格闘ゲームオタクの中じゃtokiaは有名人。まさかこんな近所のゲームセンターで見つけるなんて思ってもなかったけど」
「それで俺に何の用?」
「さっきの話は聞いていたから日本大会に出ないなんて絶対無し、絶対に出なさい」
「いや、だから無理だって久遠だっているし」
指を差されながら俺は答える。
「そんなの知らないわよ。いい絶対に出なさい、そうじゃなきゃ今度会った時にあなたがtokiaだって事バラすからね。tokiaは雑誌やテレビでも謎の格闘ゲーマーって特集される位凄いんだから」
最後に文句だけ言い残し、来た道を戻っていく。
「おい彰人どうすんだよ」
「しゃあない、久遠に一回相談してみるか」
翔也と別れて家に着く、玄関の扉を開けて下を見る久遠とは別の女性物のハイヒールが置かれていた。
母さんと久遠はこんな高そうなハイヒールは持っていない、リビングに入ると御嬢瑞希がパーティドレスを着て椅子に座っていた。




