二人の握手会に行く事になる
「おい、翔也」
「ん、おー彰人。うぉ!? なんでいきなり殴りかかってきたんだよ」
教室の席に座っていた翔也に近づき一発殴りかかったが翔也は間一髪避ける。
「お前がずっと学校に来なかったからだろ、忘れたか?前姉さんの事で俺が中学に行かなくなって久しぶりに登校したら会ったお前に殴られたの」
「いや確かにそれは覚えてるが……一体なんの話してんだ? 俺が学校休ん出る訳ないだろ昨日だって彰人と会ってんだろ」
「いやお前の方こそ」
「城田さん」
翔也と話している途中教室の席に座ってクラスメイトと会話していた櫻木姫華が俺と翔也の話に割り込んでくる。
「えっと田澤さんの事ですけど、実は昨夜櫻木グループが経営しているゲームセンターで遊んでいる所を見つけたんです。けど最近の記憶を失ってるらしくて、ずっと毎日学校に来てたと思い込んでるみたいで」
「おかしいとは思ってたけど記憶を失うって……見つけたなら俺に連絡してくれてもよかったのに」
「何度か電話したんですよ、けど城田さんのスマミフォンに電話しても電源がついてないらしくて」
「あれ? 本当だ昨日電源消した覚えないんだけどな」
櫻木姫華に言われてスマミフォンを確認すると確かに電源が切れていた。だが俺は昨日寝る前に好きな配信者のゲーム配信を少し視聴していたからスマミフォンの電源を消した覚えはない。バッテリーが切れたのかとも思ったがスマミフォンの電源は普通に入って100%を表示している。
「おーい彰人、さっきからコソコソ内緒話して。てか今来たばっかなのに、もうその隣にいる可愛い子と知り合ってたのか?」
「とりあえず城田さん、私の事は今日転入してきたばかりの生徒って田澤さんには言ってるので」
「え……ああ、そうなのか」
「おーい彰人、聞いてんのか? おーい」
「うっさい……!!」
翔也は俺が殴りかかった時には簡単に避けた、だが篠崎雪泉から避ける事は不可能らしく翔也の横顔には篠崎雪泉から殴られたグーパンの跡がくっきりと残る。
お昼休み久遠の手作り弁当を食べている途中、いきなり愛刀天花が教室にやってきて俺の席に一直線に向かってくる。
「彰人君、さっき心愛から電話で聞いたよ」
俺の机にバンと両手を置くと愛刀天花は大声を出す。
「握手会心愛の所に行くんだって、なんで私に言ってくれないの」
「別に天花さんに言わなくてもいいじゃないですか」
別に黙っていたつもりではないが、まさか教室にまで来るなんて。愛刀天花が来たおかげで教室の視線は俺達に向き教室の外の廊下でも愛刀天花のファンらしき男子生徒達が俺を睨んでいるのを目撃してしまう。
「あ……天花さんに会ったら言おうと思ってた事あるんです」
「何かな? もしかして私の握手会にも来てくれるとかかな」
「いやそうじゃなくて、あの湊心愛に俺の住所言ったそうですね」
「その件ね……ごめんね本当は教える気なんて全然なかったんだけど、心愛がね教えるまで引く気ないみたいだったからさ」
愛刀天花はさっきの勢いが無くなり頭を下げ謝ってくる。
「いや俺も先に言っておけばよかったです。だから今度からアイセブンのメンバーに俺の住所を教えないようにしてもらっていいですか」
「うん、大丈夫。今度からはメンバーの誰にも彰人君の住所を教えないから安心して。心愛にも彰人君家には近付かないよう釘を刺しておくから」
「だから彰人君絶対私の握手会に来てね、もし来てくれなかったりしなかったら、私のファンに彰人君家の住所をうっかり喋っちゃうかもしれないから、こうしてる今だって。ほら彰人君と私の話を聞こうと廊下からファンの男子生徒達が盗み聞きしてるからね」
「もしかして脅してます……?」
「人聞きが悪いなぁ、お願いしてるの。はいこれ私の握手会のチケット」
愛刀天花は制服のポケットからチケットを取り出して手渡してくる。見たら湊心愛から受け取ったチケットと同じ日付だが時間帯は湊心愛より一時間早い。
「さっき私が言った事忘れないでね彰人君」
愛刀天花はそのまま背を向け教室の後方の扉から出ていく、愛刀天花のファンの男子生徒達もその後ろを付いていく。
「はぁ面倒くさい事になったな」
まさか同じ日に二人の握手会に行く事になるとは。




