スーパーで昔の知り合いと再会する
騒ぎがあって演劇部の本日の活動は中止になる。
「申し訳ない、折角見学してくれていたのにこんな騒ぎになってしまって」
王子道先輩は櫻木姫華とアレックス先輩の妹さんに頭を下げて謝っていた。普段王子道先輩が人に頭を下げて謝ってる姿なんて見た事がなかった。
「いえ、そんな謝らないで下さい。騒ぎが起こる前に色々見て回れたので」
「私は衣装作りの人と話していたので、騒ぎが起こっていたのも知らなかったです」
「まぁアレックス君の妹はまだ入学する前だからいいとして君が彰人君が言ってた転入生の子だよね?」
「はい、櫻木姫華と申します」
「一応これ入部届を渡しておくね、それともしまた見学をしたいなら何時でも歓迎するから。それじゃあ今日はこのまま解散って事で」
王子道先輩は櫻木姫華に入部届を手渡して本日は解散となった。体育館から出ていく前に櫻木姫華と湊心愛が同じタイミングで話しかけてきた。
「城田さん」
「彰人さん」
「「一緒に帰りましょう」」
二人の会話は見事にハモった。そして二人は顔を合わせる。
「えっと……櫻木姫華さんでしたっけ? 城田さんと仲がよろしいのですか」
「まだ知り合って間もないですが……あなたはアイドルの方ですよね……? あまりアイドルには詳しくないですけど有名な方だったような」
「城田さん今日はありがとうございました。色々勉強になりました」
アレックス先輩の妹さんがアレックス先輩と体育館から出る前にお礼を言ってくる。
「そんなお礼を言われる程大した事を教えられてないんだけど。また機会があれば会えるといいね」
「はい、それでは城田さん失礼します」
先に出たアレックス先輩を追って、アレックス先輩の妹さんも体育館から出ていく。そして真後ろにいた櫻木姫華と湊心愛が突然腕を組んできた。
「城田さん、そろそろ決めてください。どっちと帰るんですか」
何故櫻木姫華が怒り気味で聞いてきたのか謎だが、今日は用事があるので二人の誘いは断るしかない。
「いや、どっちとも一緒に帰らないよ。悪いけど俺、今日は久遠に頼まれてこのまま夕飯の買い出しして帰らなきゃいけないから。それじゃあ」
二人が組んできて腕を無理やり離し、挨拶をしてそのまま体育館から校門を走り抜けてスーパーに着く。カゴを持って久遠から朝家を出る前に金と買い出し用のメモを受け取っていたので、それを見ながら必要な食材を入れていく。
買い出しも終わって帰ろうとスーパーを出る。するとスーパーの前で見た目がチャライ男がパーカーのフードで顔を隠した女性に言い寄っているのを目撃する。腕を掴んで女性を呼び止めるが女性の腕を掴んでいたチャライ男は突き飛ばされてガードレールに激突する。
「うーん……言い寄ってくるのは別に構わないだけどね、私ね自分より強い男じゃないと興味ないんだ。だからまた強くなってから出直してきなさい」
ガードレールに突き飛ばされたチャライ男に近付いて頭を撫でる。チャライ男は完全に気絶していた。
そして突然夕方の風によって顔を隠していた女性のフードが外れて長いポニーテールの黒髪に毛先がピンクの女性の顔が露になる。
「影華さん……?」
「ん……? もしかして彰人!? 久しぶり元気にしてた」
横顔を見て初めて見知った知り合いだった事に気付いて女性に声をかける。女性の方も振り返って気付くと名前を呼んで駆け寄ってくる。




