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櫻木奏多と櫻木姫華

 

 家に帰ってきたが、どうやら母さんは夕飯の買い物に出たらしい。


「そうだ彰人、父さんな明日から一ヶ月出張に行く事なったんだ」


「また急だねそれに一ヶ月って前は一週間とか数日だけだったのに」


「父さんも昇進してからは初めての出張だからな、それに今回は父さんが企画したプロジェクトが通ったんだ。それでやっぱり企画した父さんが仕事を任されたんだよ。だから彰人、明日から母さんと久遠の事をよろしく頼むぞ」


 父さんに母さんと久遠の事を任された、そして夕飯は父さんが出張に行く前にと母さんが豪勢にすき焼きの食材を買ってきてくれた。


「行ってらっしゃい父さん」


 朝早くから新幹線で出張先に向かう父さんを見送る為に母さんと久遠と一緒に玄関に集まる。


「うぅぅ……」


 父さんは駅に向かうタクシーに乗る前から泣き出していた、やはり単身で出張となると寂しいらしい、しかも出張先の社宅では家事全般全て自分でやらないといけないようだ、前は数日や一週間などだったから耐えれたようだが今回は一ヶ月の長期の出張だからと朝早くから泣いている。


「やっぱりお母さんも一緒に付いて行ったら……?」


「それも考えたんだけどね、二人を残していくのもね」


「俺は別に久遠と二人でもいいけど、今の父さん見たら正直不安だし」


「母さん……」


 父さんは母さんに抱きついて、呟いた。


「はい、はい、あなたならできるわよ」


 母さんが父さんの頭を撫でて安心させる。そして父さんはタクシーに乗ってタクシーは駅に向かう為走り出して行く。


 父さんを見送った後学校に行く支度を始める。玄関から出たら赤いフェラーリが止まっていた、そしたら銀髪の男性がフェラーリから降りてきた。


「君が城田彰人君かな?」


「はい、でもあなたは?」


「僕は櫻木奏多(さくらぎかなた)、櫻木グループの跡取りで御嬢財閥のお嬢さんの婚約者だ。ちょっと君の事が気になって立ち寄ったんだけど……」

「どうやら僕が思っていた人とは大分違うらしいね」


 いきなり名乗ったと思ったら、俺を見定めているように見てきた。


「そうだ君妹さんがいるみたいだね、しかも花菜葛女子の中等部に。僕の妹も実は花菜葛女子の高等部にいたんだけど今日から君が通っている学校に編入する事になってるんだよね。もしよかったら仲良くしてあげてほしいな」


「もしかして今日はそれを言う為に来たんですか」


「いや君の妹さんをこの車で花菜葛女子まで連れて行ってあげようと思って寄らせていただいたんだよ。それで妹さんはまだ家にいるかな?」


 ニッコリと微笑む男性、すると玄関の扉が開かれた。


「にいに、これ体操服。今日体育でしょ忘れていく所だったよ」


「君が城田久遠さんだね」


「誰……?」


「僕はね櫻木奏多、御嬢瑞希さんに頼まれて君を迎えに来たんだよ」


「瑞希ちゃんから何も聞かされてないですけど」


「あれ……そうなの? まぁまぁいいから、ほらこんな車に乗るなんて滅多にないでしょ」


 久遠の腕を無理矢理掴んで赤いフェラーリに乗せようとするので、男性の肩を掴む。


「何かな……?」


「俺の妹を強引に連れていこうとしないでもらえますか。久遠も何も聞かされてないみたいですし、今日の所はお引き取り願えますか」


 強気な口調で男性に言う、男性は未だに微笑んでいる。


「いやー悪いね、じゃあ今日は挨拶だけにするよ。それに彰人君、そんな怖い顔しなくても僕は別に妹さんを狙ってる訳じゃないから」


 久遠の腕を離すと、久遠は早足で俺の後ろに隠れる。そして男性は耳打ちをして赤いフェラーリに乗ってアクセル全開で走り去っていくのを見る。


「久遠もうあの人行ったから大丈夫だぞ」


 後ろに隠れていた久遠に振り返る。久遠はひょっこりと横から顔を出していない事を確かめる。


「もし一人でいけなかったら送って行くけどどうする」


「ううん大丈夫だよにいに、一人で行けるよ」


「そうか? まぁ久遠が言うならいいけどさ。もしあの人にまた声をかけられたらすぐに俺に電話しろよ、すぐに駆けつけるから」


「うん分かった。行ってきますにいに」


 久遠がそのまま走っていくのを見送って俺も急いで学校に向かう。学校に着くと校門前に教師と生徒会のバッジを付けた生徒が集まっていた、何事かと思ったが無視して校門を通り過ぎて教室に向かう。教室に入るとクラスメイトの半数が窓から校門を見ていた。


「おはよう彰人君」


「えっとおはよう、てか皆は何してんの?」


 席に座ると篠崎雪泉が席に近付いてきたので事情を聞く。


「詳しくは知らないけど、なんか今日私達の学年に転入生が来るみたいでその子が有名な人の娘なんだって」


「ああ、それで」


 そういえば行く前にあの男性が言ってたな妹が行くから仲良くしてやってほしいって、櫻木グループっていえば俺が通っていた駅前のゲームセンターやゲーム機も櫻木グループが経営していたはずだ。


「翔也は今日も休みか……」


 翔也の席を見るが座っていないし窓に集まっているクラスメイトの中にもいない、ここ最近翔也とは連絡も取り合っていないし学校も休んでいる。そろそろ連絡するべきだろうか。


「おい、白いリムジンで来たぞ」


 いきなりクラスメイトの男子が叫ぶ、どうやら転入生が校門にリムジンできたらしい。半数だったクラスメイト達が俺と篠崎雪泉以外の全員が窓から校門を覗き込んでいる。


「めっちゃ可愛いじゃん」


「本当お姫様みたい」


「ああ、あんな子がうちのクラスに来たらいいのになぁー」


 数分後クラスメイト達は席に着いて教室は落ち着いたのだが教室に担任が来る気配が全くない。


「おーい喜べ、うちのクラスに転入生が来たぞ」


 教室の前の扉から担任が入って来ると、いきなり転入生のワードが飛び込んできた、そしてうちの学校とは全く違う制服を着ている銀髪の女子が担任の後に続いて教室に入ってくる。


「ごきげんよう、私は櫻木姫華です。以後お見知りおきください」


 制服のスカートを摘んでお上品に頭を下げて挨拶する櫻木姫華に教室の席に座る男子生徒達が歓喜をあげる。


「お前ら一旦落ち着け、それじゃあ櫻木さんは空いてる田澤の席にでも……」


 担任の言葉を無視して翔也の席に近付いてくると隣の席に座る俺の席で立ち止まった。


「どうも城田さんですよね……?」


「そうだけど……なんで俺の名前知って!?」


「ようやく会えました……!!」


 いきなり抱き着かれて焦ってしまう。


「ちょっと待って、待って!? いきなり何するんだ!?」


「私の事を忘れてしまったのですか? 半年前暴漢から助けていただいて以来、私はあなたの事をずっと探していたんです」


 全然見覚えはないが、半年前なら話は別だろう、姉さんの事で俺がヤケになっていて喧嘩三昧だったし、たまに襲われそうになっている女子も助けていたので俺が忘れているに違いない。


「おほん……そろそろホームルームを始めたいんだが」


 担任の咳払いで教室中から俺達に視線が集まっている事に気付く。


「えっとその話の続きはまた今度って事で」


 抱き着かれていた体を半ば強引に離す、櫻木姫華は残念そうな顔になって担任を強く睨んだ後に席に着いた。


「それでは転入生の話も終わった事で、もうすぐGW(ゴールデンウィーク)に入るが、一ヶ月後には期末テストがあってその後すぐに夏休みだが気を抜かないように」


 担任は今後ある行事の事を話す。ホームルームが終わって一限目の授業が終わっての休み時間、クラスメイト達が櫻木姫華の周りに集まって色々質問し始める。


「ねぇねぇ、櫻木さんってあの櫻木グループのご令嬢なんだって」


「それもだけど俺が気になるのは城田とどうやって知り合ったのかだよ。暴漢に助けてもらったって言ってたけどその時は城田が助けたのか」


 クラスメイトの一人に話を振られる。


「いや俺も記憶が曖昧で、その時助けたのが櫻木さんだったかどうか知らないから」


「櫻木さんどこか部活に入る予定ない? もしよかったらサッカー部のマネージャーでも」


「おいずるいぞ……!! 櫻木さんは俺達野球部のマネージャーにと思ってたのに」


 そして話は大きく逸れて、いつの間にか櫻木さんの運動部マネージャー争奪戦が始まっていた。

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