知らない街
「俺の事覚えてない? ほら城田彰人。亜梨沙姉ちゃんの従弟で恋人の」
「誰か他の人と間違ってるんじゃないですか、すみませんけど失礼します」
亜梨沙姉ちゃんは無理矢理、掴んでいた腕を解いて行ってしまう。追いかけようにも急に人通りが多くなり人混みに巻き込まれてしまう。
亜梨沙姉ちゃんを見失ってしまい、昨日野宿した公園に戻ってきた。小さな子供が数人公園の遊具で遊びそれを母親達が会話しながら見守っている。
すると子供の一人が転んでしまい泣き出してしまったので駆け寄って起こしてあげた。
「大丈夫か……?」
子供の服に土の汚れがついていたので払って落とす。
「うんありがとうお兄ちゃん」
「いい子だ」
頭を撫でその子は子供達の所へ遊びに戻る。
「城田さん」
「君か、でもなんでここに」
現れたのは櫻木姫華だった、櫻木姫華の格好は制服姿で今まさに学校の帰り際だった事に気付く。
「城田さんの事が心配で探してたんです。それでここで一体何してるんですか」
「まぁちょっとね、それより街の事を調べてみたけどやっぱりこの街自体変わった所が幾つかあったよ」
「具体的にはどんな所が変わってたんですか」
「街に商店街と知らない建物が幾つか建てられていた、それとこれは俺の勘違いかもしれないけど俺が人に話しかけても無視されるだ。逆に手を掴んだり人と接触したりしたら気付いてもらえるんだけどどう思う……?」
「一応私の方でも調べてみたんですけど、これ見てくれますか」
手渡されたのは写真だ、そこには櫻木姫華と俺の知らない人物が数人写りこんでいる。
「これ大分前に私の家で誕生日会パーティが行われた時に撮った写真なんですけど……写ってない人物が一人いるんです」
「御嬢瑞希か」
「はい御嬢瑞希さんだけが跡形もなく消えてるんです」
確かにこの写真には見覚えがある、御嬢家本邸にいた時用事で御嬢瑞希の部屋に行った時にガラスケースに写真立てが飾られていた。その時にこの写真も飾られていた気がする。見た時は櫻木姫華の隣に御嬢瑞希は写っていただが写真に御嬢瑞希は写りこんでいない。
「これではっきりした、俺達が今いるのは知ってる街だが全然知らない街にいる訳だ」
「でも知らない街って言っても、私の学校や家は存在してますよ」
「逆に俺に関係ある人物や建物が存在してないんだよ通ってた学校には商店街ができてたし家は更地になってた家族に友人も誰一人として存在してない。それに……」
「それにの続きはなんですか……?」
「いやなんでもないよ、俺はもう少し街の事を調べてみるけど何か分かったら君の家に行ってもいいかな?」
「はい……!! いつでも歓迎致します。私もできる限りの事は城田さんに協力します」
「そうしてもらうと助かるよ」
櫻木姫華と別れて街に戻ってきてくる。目的は亜梨沙姉ちゃんを探す事だ、だが実際どうやって探すかまだ考えている途中だった。
けど手掛かりがないわけじゃない、亜梨沙姉ちゃんが人混みに消える前に名刺を落としていったのだ。そして今名刺に書かれた住所へと辿り着いた。
「本当にここで合ってるよな……?」
名刺に書かれた会社名をここに来る前に調べてきたが調べた結果ここは声優事務所で今亜梨沙姉ちゃんは声優の仕事をしているらしい。自動ドアの先に受付があり座っていた女性に話しかけるが
「あのここに城田亜梨沙って人は……?」
「……」
やはり話しかけても無視されるが横にボタンがあったので押すとピンポーンと音がなり受付嬢が立っていた俺に気付いた。
「何かご用でしょうか……?」
「ここに城田亜梨沙って人はいますか?」
「申し訳ありませんがお答えする事はできません」
きっと俺の事を亜梨沙姉ちゃんのファンだと思っているんだろう、ここで問題を起こしても面倒なので一度外へ出る。どうしたものかと空を見上げると自動ドアが開かれる音がする。
「あ…あなた……もしかして私の事を付けてきたの?」
「えっと俺はただ亜梨沙姉ちゃんと話したくて落とした名刺に書いてあったここに辿り着いたんだ」
「触らないで気持ち悪い!!」
亜梨沙姉ちゃんは街の方まで走り出す。亜梨沙姉ちゃんを追うため俺も走る。
結局亜梨沙姉ちゃんを途中まで追ってたが信号につかまって見失ってしまう。行き場もない俺は昨日同様公園に戻ってくるしかない、そしてそのまま公園のベンチに横になって呟く。
「一体ここはなんなんだよ……」




