亜梨沙姉ちゃん
「へー櫻木グループのご令嬢が来ることになったんだ」
休日の朝御嬢瑞希が部屋に訪ねてきて、パーティの時にいた櫻木グループのご令嬢。櫻木姫華が遊びに来ると言ってきた。
「はい、なので彰人様は彼女が帰るまではこの部屋から出ないで頂きたいのです」
「俺が見つかったら迷惑なのか」
「いえ迷惑とかそんなのじゃなくて……この前のパーティの事もありますし。もし彰人様が本邸に滞在してるなんて知ったら彼女の事ですし色々質問してくると思うので逆に彰人様に迷惑をかけてしまいます」
「そこまで言うなら部屋にいるよ」
「はい、あとサラを少しお借りします。その間は部屋の前に執事を二人置いていくので何かあれば伝えてください」
「うん、そうするよ」
御嬢瑞希が部屋から出て行って二時間経つ。少し飲み物を飲みたいと思い部屋の扉を開けるが、御嬢瑞希が言っていた執事は一人もいない。
「昼にしてはもう遅いよな」
部屋の時計が三時頃を指していた、もしかしたらどこかで少し休憩しているかもと思い部屋の扉を閉める。
「ごめんねあっくん」
さっきまで後ろには誰もいなかった、けど今後ろから声をかけられ振り返る。
「ん……? ここは」
どこかの路地裏で目が覚めた。立ち上がった時に少し立ちくらみがする。路地裏の奥から人の声が聞こえ近づくと人とぶつかる。
「ごめんなさい……あなたは昨日パーティで会った」
「君は櫻木姫華さんだったけ……?」
「おいおい、兄ちゃん。急にししゃり出てきて俺の獲物を横取りか」
その後すぐにチンピラみたいな金髪の男が櫻木姫華を追ってきた。
「よく分からないけどこの子困ってるみたいなんで」
櫻木姫華を後ろに隠して守る体勢を取る。金髪の男は諦めたのか何もせず通り過ぎる。
「ありがとうございました」
「お礼を言われる筋合いはないよ。てか俺さっきまで部屋にいた気がするんだけど」
俺はずっと部屋にいたのに目が覚めたら路地裏にいた事を説明してみる。
「私もさっきまで御嬢瑞希さんと部屋にいたはずなのに気が付いたらさっきの男に追いかけられていて」
どうやら櫻木姫華も俺と同じで気が付いたら、いた場所とは全然違う場所に移動しているようだ。
「考えても無駄だし、一旦移動しようか」
「はい……」
櫻木姫華と共に路地裏から出る。一応知っている場所だった為一安心する。まず向かうとしたら御嬢家本邸しかないと考えて歩き出す。
「何もないですね」
御嬢家本邸があった場所には存在してなかったように更地になっていた。
「これからどうしますか……?」
「どうしますかって言われてもな」
頭を掻いて少し考える。
「一応俺の家に行ってもいいかな? もしかしたら家族の誰かがいるかもしれない」
「構いませんよ」
櫻木姫華は断る気配もなく、俺の後を付いてくる。
御嬢家本邸と違い俺の家はあった。だが表札は城田じゃなく知らない苗字の表札に立て替えられていた。チャイムを鳴らすと知らない子供が出てきた。
「兄ちゃんと姉ちゃん誰……?」
聞いた話によるとこの家に城田は住んでいないらしいそれ所か十年以上子供と両親がずっとこの家に住んでいるようだ。その後喫茶店に移動して櫻木姫華とお茶を飲みながら話す
「何かおかしいな」
「おかしいとはやはり街の事ですか?」
「ああ、俺の家も別の人が住んでいたし、ここに喫茶店なんか元々なかったはずなんだ」
「少し不安になってきました。一度私の家に行ってみてもよろしいですか」
「俺も一緒に付き合うよ」
お茶を飲み喫茶店から出る。櫻木姫華に付いていき彼女の家は俺とは違って存在していたようだ。御嬢家本邸と比べると小さいが、それでも豪邸と言うほどの大きさを誇る。櫻木姫華は門を開ける。
「それじゃあ俺とはここまでだね」
「あの城田さん帰る家とかは……?」
「まぁ一日くらい野宿は平気さ。明日になったら図書館とかに行って街の事を少し調べてみるよ」
「だったら私も付き合いますよ、それに帰る家がないならここに泊まっていってもらっていいです。今日のお礼だってまだできてないですし」
「誘ってもらっておいて悪いけど、これは俺一人で調べたいんだ」
櫻木姫華の誘いを断り一度街の中心街に戻ってくる。辺りは暗くなってきたが、街の夜はまだまだ始まったばかりだった。
街全体を歩いたが見たことない建物や商店街などが建てられている。さらにもう一つ分かったのだが俺が人に話しかけても無視されてしまう。
取り敢えず公園を見つけたのでベンチに横になる。空を見上げ綺麗な満月が目に映る。そのまま寝ずに朝を迎えた、朝早くから図書館に来て情報が欲しくて新聞を探すが見当たらない、幸いPCがあったので色々調べる事が出来た。だが調べていて信じられない事実が分かる。
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ」
図書館から走ってPCに表示された場所へと向かう、息切れするが走り続ける。そして目的地に着く。舞台には一人で歌う女性の姿がその姿を数人の見物人が見ていた。
俺は女性の歌う姿を見て涙が流れる。二度と会えないと思っていた女性が今目の前で歌っているからだ。
「亜梨沙姉ちゃん……」
歌い終わった亜梨沙姉ちゃんは舞台から降りて帰ろうとする見物人もいなくなり、帰ろとする亜梨沙姉ちゃんを呼び止める。亜梨沙姉ちゃんは呼び止める俺の声を無視してそのまま帰ろうとしたので手を掴んだ。
「あなた誰……?」
「ふぅ……ただいま」
「お帰りなさいませお嬢様」
頭の機械を取り外し、移動する。
「それで、私があっちにいる間何か問題は起きた……?」
「いえ特には、ただ御嬢瑞希様がお嬢様に用があると言って訪ねてきました」
「それで」
「お嬢様は外出中と言ってお帰りいただきました」
「ありがとう、それじゃあ学校に行ってくるから城田さんの事お願いね」
「お任せくださいお嬢様」
制服に着替えて、家を出る前に一度城田さんの様子を確かめに行く。そこには座ってPCを触る複数人にモニターを監視する人間が一人立っていた。
「お嬢様、戻られたようですね」
「学校に行く前に城田さんの様子を見たくて」
「彼なら女性と接触した所ですよ」
「女性……?」
モニターを見る。城田さんと女性が映っていた城田さんが手を掴んでいる女性には見覚えがある。
「なんで彼女があの世界にいるんですか!?」
「お嬢様落ち着いてください」
「いいから早くあの人を城田さんの前から消してください!!」
「それは無茶です。いきなり目の前で人が消えたらいくらなんでも不審に思いますよ」
「だったら私が帰ってくるまでにあの人を消しておいてください。あの世界に城田さんを知っているのは私だけいればいいんです」
そのまま出ていき車に乗り込む、学校から帰ったら城田さんに会いにあの世界に行こうと走っている車の中で考える。




