計画
パーティが終わって少し、止まった車から降りてそばに居たタキシードを着た男に話す。
「翔也、あの子を呼んでちょうだい」
暗い部屋へと入り、明かりも点けずに翔也が連れてくるのをチェス盤の席に座って待つ。
「お嬢様連れて参りました」
翔也の声が聞こえ、扉が開かれる。
「二回とも失敗したみたいだけど言い訳は……?」
「別に私はあなたの為には動かないって言ったはず。あっくんと会えればそれだけでいい」
「警察や御嬢財閥から追われてたあなたを助けたのは誰か覚えてないようですね、それにあなたの部品にデータも全て櫻木グループ独自の物だって事も忘れずに、仏の顔も三度までです。もし次失敗したらお父さんに一生会えないと思った方がよろしいですよ」
「……だったらあのあっくんの近くにいるメイドを何とかして」
「サラですか、それは私じゃどうにもできません、何せ彼女は主人に忠実なメイドですからね、けど時間稼ぎぐらいならできます」
近くにいるメイドと聞いて、このアンドロイドを簡単に追い払えるのは御嬢家本邸でもあの女しかいないと考えて口にする。
「時間稼ぎしてくれるならそれでいい」
「決行は明日の昼三時覚えておいてください。それからさっきも言いましたけど失敗したり前みたいに城田さんを監禁なんてしたら解ってますよね」
「無言は了承って事でいいですね、それじゃあ明日の三時」
「お嬢様、もっと人に優しくできないんですか」
翔也が扉を閉めると私に話しかけてきた。
「翔也、あなたもあの子と一緒よ城田さんの大切な友人だから足を治してあげたんでしょ、それにあの子は人間じゃなくてアンドロイドよ」
「だったらそろそろ家に帰してくれないか、俺にもう用はないだろ」
「それは無理な相談ね、あなたは城田さんとの交渉材料として役に立つんだから、それが終わったら解放してあげるわよ」
チェス盤にあるボタンを押してカーテンが開かれる。暗かった部屋に月の光が暗かった部屋を明るくする。席から立ちベッドに近付いて人形を手にして抱く。
「城田さんが明日には私の物。ふふ…ふふふ…ふふふふ」
やっとだやっと念願が叶う。今日会って私の事を忘れていたのは少し悲しいが、また初めからやり直せばいい。そう計画は始まったばかりなんだから。




