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愛刀天花は腕を組む、御嬢瑞希は嫉妬深い

 

 山の山頂付近まで来ると、休憩スペースがあるが、人数的にも、このまますぐに降りる感じである。


「携帯で景色を撮っておけ、今度美術の授業で使うからな」


 上手くは撮れなかったが、素材としては使える写真を撮れた。


「やあ、彰人君」


 写真を撮り終わると、愛刀天花が側まで近寄ってきて体を密着させてくる。


「朝起きたらテントの中にいないから心配したんだよ」


「起こすのも悪いので」


「そんな事ないよ、起こしてくれればよかったのに」


 愛刀天花は人目も気にせず腕を組んでくるが、今は皆写真を撮るのに夢中でこちらに気付いて無い様子だ。


「今日は彰人君暇? 暇だったら夜に少し付き合ってほしい事があるんだけどな」


 今日の夜は、山を降りてバスに乗り次の目的地である宿舎に泊まる、そこでは夜に行うキャンプファイヤーの準備を一、二年でする予定だ。


「夜ってキャンプファイヤーしている途中にですか」


「いや、キャンプファイヤー中だよ、実は私はまだフォークダンスの相手も見つかっていなくてね」


 それはあなたがアイドルで皆誘いたくても誘えないだけじゃ。


「まあ実際彰人君に相手がいなかったらの話だけどね」


「あーすみません……実は俺もフォークダンスの相手がいなかったんで、キャンプファイヤーの火の管理任されてるんですよね。」


「そう、でももし暇になったら私と踊ってくれるかな?」


「それは正直どちらとも言えません。」


 アイドルと踊れるなんて嬉しいに決まってるが、朝の出来事もある、ここは大人しくしていた方がいいだろう、腕を組んでいた愛刀天花は急にしゅんとなってしまう。


「あーやっぱ愛刀さんと踊れるなら嬉しいですね」


「うん、私も彰人君と踊れると嬉しい」


 さっきまでしゅんとしてたのが嘘のように明るい笑顔で答える、愛刀天花。


「ねぇ彰人様、その女は何者ですか……?」


 山頂付近の休憩スペースの陰に隠れ、彰人と愛刀天花を御嬢瑞希が覗き込んでいるのだ、もちろん二人とも気付いていない。


「お嬢様……そろそろ山を降りるお時間が」


「仕方ありません、体調が優れないのでこのまま家に帰ると先生方に連絡して、念の為に家のメイドにも連絡を入れておいて」


「ですが林間学校中は久遠殿を見張る予定では?」


「久遠様なら問題ありません、ここに彰人様がいらっしゃるのですから、でももし現れたら面倒ですね、誰か他に見張れる人間はいますか?」


「では、私が隠れて久遠殿を見張りましょう」


「それじゃあお願いね、久遠様の行動は逐一私に報告して」


「了解しました」


 黒服の大男は一人走り去っていき、残されたのはもう一人の黒服大男だけだ。


「彰人様、私は意外に嫉妬深い女ですよ、彰人様に近づく女が、いくら妹でも、もし彰人様に手出ししそうなら、私殺してしまいそうになっちゃいますから」


「どうしたの彰人君?」


「いや、誰かに見られてるような視線が」


 休憩スペースの方から視線を感じて見るが、誰もいない。


「ふーん……それで隠れてるんだ」


 愛刀天花の腕の組み方は、さっきよりも体が密着するようになる、あの胸が当たってるんですけど。


「あのそれ以上体を密着されると、ちょっと恥ずかしいっていうか」


 俺は顔が少し赤くなるのを、隠して愛刀天花に伝えるが、愛刀天花は休憩スペースの方に視線をやっていた、すると休憩スペースの奥の茂みが少し揺れた。


「ごめんね、それじゃあ夜彰人君と踊れるの楽しみにしておくから」


 愛刀天花は組んでいた腕を放して、伝えて移動しだした二年の列に戻っていく、山を降りると、担任の指示でバスに乗ると、俺の隣には愛刀天花が座ってきた。


「今回は一、二年の親睦を深めようと乗るバスを一緒にしてみた、できるだけ会話はするように」


 俺のクラスの奴の半分位が二年の先輩に変わっていた、ぞろぞろと男士生徒、女子生徒がバスに乗ってくる。


「彰人君、よろしくね」


「はい、よろしくお願いします」


 俺は心配していた、この中に俺を監視している奴がいるかどうか、多分今の状況を見れば、また俺はあの先輩達の所に連れていかれるだろう。


「安心して、このバスの中には私のファンの生徒はいないから」


「えっ!?」


 俺に耳打ちしてくる愛刀天花、それが嘘か本当か分からない、バスが走り出して、愛刀天花は俺に沢山質問してきた、俺はできるだけ答えたが、たまに変な質問をしてくるのだった。


俺がやってるエ〇ゲのタイトルを教えろってどんな質問だよ、てかなんで愛刀天花が俺がエ〇ゲやってる事知ってるんだ!?


この質問は一応答えなかった、バスが走り出して一時間が経過した頃、宿舎に着いた。

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